報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 第4章 「記憶」 8

2016-07-22 21:12:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月28日03:00.天候:不明 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター]

 私は警備室をあとにすると、4階の女子トイレへと向かうことにした。
 あのマニュアルを見る限りでは、私はリサ・トレヴァーこと、“トイレの花子さん”には勝てないだろう。
 高橋も高野氏もいなくなってしまった。
 ここから脱出することは、もう無理なのかもしれない。
 私も、この研究所内を徘徊する魔物達の糧にならなくてはならないのかもしれない。
 ここまで来ておいて、それは無いよと思う。
 だが、状況は状況だ。
 はっきり言って、私は追い詰められている。
 だが、このまま座して死を待つよりは、せめて彼らに一太刀浴びせてやりたい気がした。
 彼らが、どれだけの時を生きるのかは分からない。
 だが長い年月を掛けて尚、私という人間が目の前に現れたという記憶を刻みつけてやろうではないか。
 それが高橋と高野氏への、せめてもの追善供養ともなる。

 私はエレベーターを1階に呼び戻した。
 するとまた、モニタにクイズが表示された。
 これに答えないと、エレベーターには乗れない。
 ハズレてもエレベーターには乗れるが、化け物襲撃の罰ゲームが待っている。

『東京駅八重洲南口〜富士宮・大石寺間を運行するバス会社は次のうち、どれ?』
『1:富士急平和観光 2:富士急静岡バス 3:富士急シティバス 4:富士急山梨バス 5:富士急湘南バス 6:フジエクスプレス』

「は!?えーと……富士宮市って静岡県だよなぁ……。いや、1は貸切観光バス専門だろ?えー……ってことは、山梨とか湘南は無いだろ。えー……」
 私は2を押した。
 静岡県だから、それだという直感だ。

 ピンポーン♪
 ガラガラガラガラ………。

「あ、当たった……」
 私はエレベーターに乗り込み、4階のボタンを押した。
 そして、荷物兼用の大きなエレベーターの大きなドアが閉まる。
 が、何故か動かない。
「あれ!?」
 私はちゃんとボタンを押した。
 ドアもちゃんと閉まった。
 なのに、何故か動かない。
「あ、あれ!?おーい!」
 私は開けるボタンを押したが、ドアが開かなかった。
「う、ウソだろ……!?」
 私がエレベーター閉じ込めによるゲームオーバーを覚悟した時だった。
 ガクン!と大きく揺れて、エレベーターが動き出した。
 良かった。やっと動いた。
 だが、何かおかしい。
 昇っている感じがしない。
 階数表示が何故か、無いはずの地下階を表示している。
 どういうことなんだ!?
 所内の見取り図では、地下1階から下なんて無いはずなのに!
 当然、エレベーターのボタンにも地下1階から下は無い。
 それなのに、エレベーターはまるで最初からそれがあるかのように、地下へ下りて行った。

 そして、到着する。
「!?」
 エレベーターを降りると、そこは素掘りの空間があった。
 たまにコンクリートが吹き付けてあるくらい。
 まるで、トンネル工事の現場かと思うような雰囲気だった。
 照明は薄暗く、工事現場にあるような仮設の照明器具が素掘りの壁に掛けてあるだけ。
 ここは一体……?
 私はマシンガンを構え、ゆっくりと警戒しながら進んだ。
 私は明らかに、ここに呼ばれている。
 もちろん、それが誰なのかは容易に想像が付く。
 “トイレの花子さん”が動き出したのだ。
「はっ!?」
 角を曲がると、人影を見つけた。
 それは、あのタイラントだった。
 タイラントが私に背を向けてしゃがんでいる。
 そしてその傍らには……。
「高橋君!?」
 高橋が仰向けに倒れていた。
 当然ながらタイラントが私に気づいて立ち上がり、土気色の顔からニィッと歯を見せてニヤついた。
「た、高橋を返せ!!」
 私はマシンガンを構えた。
 だが、タイラントは全く怯むことなく、私にゆっくりと向かって来た。
「くそっ!」
 タイラントに向けて発砲する。
 まるで昔の足踏み式ミシンのような、タタタタッという音が銃口から発せられる。
 これが通常の人間なら蜂の巣間違い無しだろう。
 美味しい蜂蜜は取れないが。
 しかしタイラントは、まるで子供から小粒の砂利を投げられているだけかのように平然としていた。
 効いていない!?
 そして、ついに私は弾を撃ち尽くしてしまった。
 それを確認するとタイラントは、また私に背を向けて、今度は少し速めに高橋の所へ向かった。
 そして彼を抱え起こすと、ヒョイと持ち上げ、目の前の鉄扉を開けた。
 ただの鉄扉ではない。
「お、おい!まさか、それは!?」
 焼却炉であった!
 タイラントは焼却炉の中に高橋を放り込むと、一気に扉を閉め、焼却炉のスイッチをONにした。
「わあああああああああっ!!」
 私は急いで高橋を助ける為に、焼却炉へ走った。
 だが、
「!!!」
 タイラントが左手で、そんな私を弾いた。
「わああっ!」
 凄い衝撃だ。
 私は軽く飛ばされ、地面に叩き付けられた。

 もう……これまでか………。
 タイラントが………ゆっくりと近づいて来る音が聞こえて来る……。
 私もまた、ヤツに捕まって、焼却炉に投げ込まれてしまうのだろうか……?
 それともまた違う、別の処刑をされるのか………。
「ん!?」
 その時、仰向けになり、焦点の合わない目をしている私の視界が上半分ほど遮られた。
「くすくすくす……」
 そして、頭上から聞こえて来る女の子の声……。
 私の視界の上半分は、彼女のスカートの中だった。
 僅かに白いショーツが見えている。
 彼女が少し下がって、私の顔を覗き込んできた。
 彼女の顔には、白い仮面が着けられていた。
 目の部分に2つの細長い穴が付いているだけの仮面。
 何てこった……。
 私はタイラントとリサ・トレヴァーに、捕まってしまった。
 もう、死ぬしかないのか……。
 薄れ行く意識の中、私の頭の中にこんな会話が聞こえて来た。

「どうしますか、お嬢様?私がこのまま始末しましょうか?」
「………から。あなたは…………して……………それから、……………して」
「かしこまりました………」
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“私立探偵 愛原学” 第4章 「記憶」 7

2016-07-21 19:45:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月28日02:00.天候:不明 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター 警備室]

 私は再び警備室に戻ってみた。
 あの2人がどこに行ったのか、もしかしたら、どこかのカメラに映っているかもしれなかったからだ。
「ん?」
 警備室の前に着くと、中から何やらアラームが鳴っているのが聞こえた。
 何だろう?侵入警報か?それとも火災?……何だろう?
 とにかく、入ってみた。

〔「脱走事故発生!脱走事故発生!至急、現場係員はマニュアルEを実行せよ!室内係員は非戦闘員の避難に当たれ。繰り返す。……」〕

 何だって?脱走事故?
 今さら、ハンターが脱走したところで……。
 私はそのアラームが鳴っている機械の所へ走った。
 火災受信盤と同じく、アラーム停止のボタンがあったので、私はそのボタンを押した。
 途端に、室内に静寂が戻る。
 音を止めても良いのかって?うん、大丈夫。
 以前、探偵としての知識を深める一環として、防火管理者の資格を受けに行ったことがある。
 その時、火災受信盤にある主音響停止ボタンは、あくまでそれが設置されている部屋にいる人に、火災感知器が作動したことを知らせる為のものだから、押して止めても問題は無いということだった。
 押して止めるということは、少なくともその盤が伝えていることを了解したという意味だからと。
 恐らく、この警報装置も同じことだろう。
 そう思ったのだった。
 その盤にもモニタは付いていて、ある者が所内を歩いていることが分かった。
「タイラント……?」
 その機械には、タイラントという名の者が脱走したことを伝えていた。
 モニタに映っているのは、明らかに私の身長よりも高い大男。
 土気色をしたスキンヘッドにサングラスを掛け、ロングコートを羽織っている。
「あっ!?」
 そのタイラントと呼ばれた大男を、所内のカメラが自動で追っているようだ。
 そのカメラから映らない所に移動すると、今度は別のカメラに自動で切り替わる。
 だから、その男を映す角度が変わった。
 そこで分かった。
「高橋!」
 タイラントは左脇に、ぐったりした高橋を抱えていた。
 既に意識が無いのか、全く抵抗する素振りを見せない。
 タイラントはどこにいるのか分からないが、どうやらシャッターの降りた階段室に入り込んだようだ。
 タイラントにはクイズは出されないらしく、すんなりドアを開けた。
 そこで、カメラの映像は終わってしまった。
 階段にカメラは無いからである。
「……高野さんは?高野さんはどこに行ったんだ?」
 私は警備室内の個別モニタを見たが、全く高野氏は映っていない。
 あのトイレから彼女はどこに?

 1:あのトイレの中だ!
 2:タイラントに連れ去られてしまった?
 3:トイレの花子さんの仕業だ!
 4:もう1度、警備室内を探索してみよう。

 私は警備室内に何かヒントは無いかと探してみることにした。
 何しろ、電子ロック解除にクイズを出題するような研究所だ。
 で、ハズレるとハンターやリッカーの罰ゲーム付きだろ?
 もしかしたら、敵の仕業というよりは、この研究所の変な仕掛けに引っ掛かっただけなのかもしれない。
 まず、私は今の監視盤を確認してみた。
 今はタイラントが脱走したことを伝えていたが、実は他にもあるんじゃないのかと思った。
 タッチパネル式のモニタを操作すると、それまでの履歴を見ることができた。
 すると確かに、脱走したのはタイラントだけではないことが分かった。
 ハンターやリッカーなどは想定内だ。
 そいつらが電鉄のトンネルを通って、大山寺や霞台、そして市街地までやってきたんだから。
 タイラント脱走の前に、別の化け物が脱走していたことが分かった。

『6月23日 23:54:23.リサ・トレヴァー』

「リサ・トレヴァー?何だこれ?人の名前だよなぁ?」
 この研究所では、ちょこちょこ実験用の化け物が脱走したりしていたらしい。
 何て危ない研究所だ。
 しかし履歴をずっと見ても、明らかに人間の名前……外国人女性だと思われる名前をした化け物はそれだけだった。
 化け物に人間の名前を付けるとは一体、どういうことだ?
 もしかして、名前は人間っぽくても、実はあのタイラントよりとんでもない化け物だったりして。
 あいにくと、警備室内を探しても、それに関する資料は……あった!
 警備室の机の上に警備マニュアルがあって、その中に化け物の写真とその脱走した時の対処法が書いてあった。
 タイラントは確かにさっき、カメラで見た大男そのものの姿をしていた。
 ゾンビやハンターなどと比べると、何だか人間そっくりだ。
 特徴の所に、身長が216cmと書かれているところ以外は!
 対処法としては……マグナムによる集中砲火でもって弱らせた後、ロケットランチャーを撃ち込まないといけない!?
 ロケットランチャーなんてあるのかよ、都合良く!?
 マグナムといったら、高橋が持っているLホークとかコルトパイソンのことだ。
 ……あ、そうか!
 それでタイラントは唯一マグナム弾を放てる高橋を狙ったのか!
 クソッタレが!先手を打たれてしまった!
 マグナム弾を放つ銃を持っているのは高橋だけだ!
 こうなったら、ロケットランチャーを探すしかない!……って、あるのか!?
 私は警備室内のロッカーを開けてみたが、ロケランどころか、銃火器すら見つからなかった。
 この非常事態で、全て持ち出されてしまったのだろうか。
 だが、収穫はあった。
 それは車のキー。
 何の車だかは分からないが、5階の搬入口に止まっているトラックやバンの鍵であることを願う。
 そして、再び件のマニュアルのページを捲ると手が止まった。
 そこに、『リサ・トレヴァー』が写っていた。
 彼女もまた、見た目は人間とよく似た姿をしていた。
 それも、セーラー服のような服を着ており、まるで女子中高生のようだ。
 身長を見ても153cmとしか書いてない為、小柄な体型であることが分かる。
 但し、顔は分からなかった。
 何故なら、白い仮面を着けていたからだ。
 唯一両目の部分に、横に細長い穴が開いているだけであった。
 そしてその対処法は……。

『彼女を処分するのは非常に困難である。銃撃よる集中砲火を浴びせても、ものの数秒間だけ失神する程度である。まるで、アメリカ本国の研究所に存在したリサ・トレヴァー本人を彷彿とさせる』

 って、あれ?リサ・トレヴァーって、他にいたのか!?じゃあ、ここにいる彼女は一体……?

『アメリカ本国では研究所の自爆による崩壊で、ようやく死亡した。当所における“リサ・トレヴァー”もまた、動きをとにかく封じた上で、爆弾による爆死しか方法が無いのだろう。従って、彼女こそ絶対に脱走させてはならない』

 あ、あのー、どうやら脱走してるみたいなんスけど……?
 ん?その時、ファイルの隙間に何やらメモ書きが入っていた。
 それを見ると、こんなことが書いてあった。
 恐らくここの警備員が書いたと思われるメモだろう。

『リサのヤツ、脱走したはいいけど、4階の女子トイレに籠もり切りなんだ。それも奥から2番目の個室がお気に入りらしく、いつもそこに籠もっている。まるで、“トイレの花子さん”だ』
 と。
 アメリカ本国にいたという本物のリサ・トレヴァーとやらは、研究所を脱走してもずっと所内を徘徊して、突入してきた警察隊を翻弄させたらしい。
 こっちのリサ・トレヴァーは、“トイレの花子さん”なのか。
 すると、高野氏は“トイレの花子さん”に捕まってしまったことになるなぁ……。
 さて、どうしたものか?

 1:更に警備室内を探索する
 2:今度は研究室に行ってみる。
 3:4階の女子トイレに向かってみる。
 4:タイラントを探す為、階段に向かう。
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“私立探偵 愛原学” 第4章 「記憶」 6

2016-07-21 11:09:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月28日01:30.天候:不明 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター]

 私達は不審な物音がした4階の女子トイレに向かった。
 私達も感染したであろうゾンビウィルス(Tウィルス)を完全に死滅させ、しかも抗体まで作ってくれるというワクチンを投与したおかげか、何だか勇気が湧いて来た気がした。
 そんな気持ちを抱き、件の女子トイレに向かった私は……。

「じゃあ、高野さん、お願いします」
「分かったよ。でも、ちゃんと後ろからついて来てよ?」
「分かってるって。じゃ、高橋君はトイレの前で張っててくれ」
「分かりました」
 私と高野氏とで女子トイレの中に入る。
 男子トイレの個室は3つだけだったが、女子トイレはさすがに4つある。
 但し、こちらは全部が全部引き戸になっているわけではなかった。
「こうしてみると、全部埋まってるように見えるね」
 高野氏はライフルではなく、ショットガンを持っていた。
 敵が出て来たとしたら近場である為、狙撃用ライフルは却って不利だということを知っているのだろう。
「じゃ、手前から開けてみましょう」
 因みに生存者がいるかどうかの確認だが、私達がこうして入ってきているのにも関わらず、また、高野氏のように女性がいるにも関わらず、何の反応も無いところを見ると、どうも望み薄と思われた。
 私がドアを開け、高野氏が突入するというもの。
 もし実は生存者が隠れていたということになっていても、高野氏ならば警戒されずに済むだろう。
 手前のドアは男子トイレには無い開け方だった。
 グライドスライドドアといって、よくノンステップバスの前扉にあるような大きな2枚扉があるだろう?
 そのうちの片側がこのトイレの個室のドアに使われていた。
 もちろん、ガラス張りなんかではない。
 そんなドアを開けてみた。
「……いないね」
「そうか。まあ、いきなりいたらアレだな。次に行こう」
 すぐ隣のドアを開けてみる。
「……いないね」
「ここもか。すると、後は残り2つだな」
「……何か、アレを思い出した」
 と、高野氏。
「あれって?」
「“トイレの花子”さん」
「は?」
「私の母校に、そういう噂があったんだよ。私の高校、木造の旧校舎が残っていてね、私がいた頃はもう使用禁止の立ち入り禁止だったんだけど、今はもう取り壊されている」
「それで?」
「そこの女子トイレも個室が4つあって、3階の女子トイレの奥から2番目の個室には“トイレの花子さん”がいるんだってさ」
「まあ、ベタな学校の怪談の法則だな」
「愛原さんの所にもあったの?」
「俺んところは男子トイレでね、3階の男子トイレの奥から2番目はハッテン場になるという別に意味で怖い怪談だ。……いや、もはや猥談かな」
「なに?ハッテン場って?」
「ANPさんに聞けば分かるんじゃない?」
「……まず、1番奥を開けてみるね」
「はいはい」
 1番奥と2番目は引き戸になっている。
 私は1番奥のドアを開けた。
「……誰もいないな」
「そうみたいだね」
「そうなると、やっぱりここか?」
 しかし、相変わらず中から何の物音もしないし、気配も感じられない。
「きっと、愛原さん達が男子トイレを調べていた時は、誰かがいたんだろうね。で、研究室に行ってる間に出たのかもよ?」
「あー、なるほど」
 そう思ったら、何だか安心した。
 よく見ると奥から2番目の個室にも鍵は掛かっていない。
 この研究所に何かがいるという疑惑は拭えないが、それがいるのはここではないという安心感だ。
 私はドアの取っ手に手を掛けた。
「じゃ、開けるよ」
「お願い」
 高野氏は一応、銃を構えた。
 そして開けようとしたその時!

 ザザー!

「!!!」
「なに!?」
 その個室の中から、水の流れる音がした。
 もちろん、それは便器の水が流れる音。
 男子トイレも含めて、女子トイレもウォシュレット付きの洋式だ。
「誰かいるのか!?」
 私はつい大声を上げた。
 しかし、中から返事が無い。
 そして高野氏は思わず、トイレのドアを3回ノックした。
 すると、向こうからもドアが3回ノックされたのである。
「や、ヤバ……!は、“花子さん”がいる……!」
「はあ?……いや、待て。確かに、何かしらのクリーチャーがいるかもだな。ちょっと、高橋を呼んで来る。3人で対処しよう」
 私がトイレの外に出ようとした時だった。
「わああああああっ!!」
 トイレの外から高橋の叫び声が聞こえて来た。
「高橋!?」
 私がトイレの外に飛び出した時だった。
「きゃあああああああっ!!」
 トイレの中からも高野氏の叫び声が聞こえて来た。

 1:自分は別方向へ逃げる!
 2:高野を助けに戻る。
 3:高橋を助けに行く。

 ……別に高橋のことが心配ではないということではない。
 だがやはり、女性の叫び声がしたら、そっちが先ではないか。
 そう思ったのだ。
 再びトイレに戻ると、高野氏の姿は無かった。
 代わりにあの奥から3番目の個室のドアが開いていて、中を覗き込むと、
「こ、これは……!?」
 そこには便器が無かった。
 いや、あったというべきか。
 便器があった場所にはポッカリと黒い穴が開いており、高野氏が持っていたライフルやショットガンがその横に落ちていた。
「高野さん!高野さん!」
 私は穴に向かって叫んだ。
 ここは4階なのだから、その下は3階になってるはずなのだが、何故か奈落の底に向かって叫んでいるような気がした。
 そして、その穴からは何の反応もしなかったのである。
「……そうだ、高橋は!?」
 私はマシンガンを構えながら、そっとトイレの外に出た。
 やはりというべきか、そこにも高橋はいなかった。

 一体、どういうことなんだ?

 高橋と高野氏に、何が起きたんだ?

 ここにはゾンビやハンター、リッカー以外の別の何かがいるということなのか?

「ゥ……ウウウウウウウウウウウウッ!」

「!?」
 その時、研究所内のどこからか大きな呻き声……いや、唸り声が聞こえて来た。
 それは低い女性の声(アルト)にも聞こえたし、高い男性の声(テノール)にも聞こえた。
 今の声を出したヤツが、高橋や高野氏を連れ去ったというのか。
 私は……私は何をすればいい?

 1:警備室へ行く
 2:研究室へ行く
 3:他の部屋を探す
 4:他のトイレを探す
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“私立探偵 愛原学” 第4章 「記憶」 5

2016-07-20 21:11:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月28日01:00.天候:不明 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター]

 私達はモニタに人影が映った4階のトイレを確かめた。
 だが男子トイレには、誰もいなかった。
 そんな時、高野氏からゾンビウィルスを浄化し、しかも抗体まで作ってくれるというワクチンの製造法が分かったとの報告が入った。
 私達が3階の研究室に行こうとした時、誰もいないと思われた女子トイレから水の流れる音がした。
「先生、女子トイレに誰かいるようですが?」
「……後で行こう」
「いいんですか?」
「いずれにせよ、高野さんに来てもらわないと話にならん。もし元気な生存者だったら、この時点で俺達の存在に気づいて助けを呼ぶだろうからな」
「なるほど」
「俺達がゾンビ化したら元も子も無いから、早いとこ、ワクチンを打ちに行こう」
「はい」
 変なクイズを出してくるエレベーターには乗りたくなかったので、私達は階段から行こうとした。
 だが、いつの間にか4階にも防火シャッターが下ろされており、その脇のドアを通ろうとするには、またカードキーが必要だということが分かった。
 で、カードを当てると……。
「やっぱり……」
 モニタにクイズが表示された。
 何だ何だ?ここの研究所は、普段からクイズ大会でもやってたのか?

『“Gynoid Multitype Cindy”で、マルチタイプのオリジナルナンバーは何機存在した?但し、現在も稼働しているかどうかは不問とする』

「は!?」

『1:5機 2:6機 3:7機 4:8機 5:現在も尚、調査中』

「な、何だこれ!?」
「先生、確か8号機のアルエットというのがいるので、8機ですよ」
「そ、そうか!」
 私は4を押した。

 ブブーッ!(ハズレ音のブザー)

「ありゃ!?」

 バンッ!(すぐ近くのドアが破られた音)

「キィィィィィッ!」
「キィエエエエエッ!」
 ハンターが2体、私達に向かってきた。
「ハズレるとハンターの罰ゲームかよ!?何なんだ、ここはァ!?」
 私と高橋はすぐさま銃を構え、緑のジャイアン……もとい、ハンターに向かって発砲した。
 ダッダッダッと走る時は両手を前足のように使って、4足歩行で向かってくる。
 この場合、当然ながら手を使った攻撃を奴等はできないため、走って来る時も隙があるのである。
 が、たまに、
「うわっ、避けやがった!」
 発砲すると、持ち前の素早さから弾を避けることもある。
 それでも何とか倒すことができた。
「何だよ、もう!せめてブリキの金ダライが落ちて来る程度にしてくれよ!」
「……先生、いつの時代の話ですか?」
「とにかく、迂闊に間違ったら、ハンターの罰ゲームだということが分かった」
 だが、一応は本物のセキュリティカードを当てているからだろう。
 ハンターを倒すと、鍵が開くようである。
 で、ちゃんとモニタには解答と解説が書かれていた。

『正解は3。オリジナルタイプはキリスト教の“七つの大罪”をモチーフにされた為、7機製造された。8号機のアルエットはそんな彼らのモデルチェンジ版であり、オリジナルモデルではない』

 3階に下りると、研究室の入口で高野氏が手招きしていた。
「遅いじゃない。何してたの?」
「ハンターと格闘」
「うそ!?ハンターがいたの!?」
「……まあな。それで、ワクチンができたんだって?」
「うん。これだよ」
 それは3本の注射器に入った白い液体だった。
「この研究員の研究ノートを見ると、“デイライト”って言うんだって」
「デイライト?」
「要するに、『日の光(デイライト)があれば、雨傘(アンブレラ)は要らない』という意味なんだって」
「うまい!高橋君、研究員さんに座布団2枚!」
「はい、かしこまりました!……って、先生!?」
「冗談だよ。だけど、会社に盾突くようなネーミングだな。いいのか?」
「元々、町をこんな目に遭わせたウィルスというのは、アメリカの本社から隠蔽用に持ち込まれたものらしいね」
「隠蔽用?」
「昔、アメリカでも、この霧生市みたいな事件が起きたって話は知ってる?」
「いや、知らない」
「名前をラクーンシティって言うんだけどね。表向き、アメリカ軍が核実験に失敗して放射能汚染になったからという理由で封鎖された町ね。でも実際は、アンブレラがウィルスを漏洩させて汚染させたのが真実だよ」
「アメリカの本体は研究所における事故を何度も起こして、それが防げなかったから、企業としての信用が失墜して潰れたらしいな。日本法人は独立して、辛うじて生き残ったけれども……」
「きっと、アメリカと同じことが起きたと思うよ」
「その証拠がこの研究室にあるというのか?」
「あいにくと、証拠は持ち出されたみたい」
「マジか!……とにかく、ワクチンを打とう」
 私達はワクチンの入った注射器を装置にセットした。
 まるで自動血圧測定器のような穴に腕を入れると、自動的にセットした注射器が注射してくれるという仕組みだ。
「……大人になっても、注射は痛いものですね」
「それゃそうさ。これで、俺達はゾンビ化しないで済むのか?」
「このノートに書いてあることが本当ならね」
「嘘は書いていないだろうな」
「よし。そのノートは証拠だ。持って行こう」
「もちろんだよ」
「あとは脱出する手段だな。何とか、5階のシャッターを開ける方法が無いか……」
「もう1度、警備室に戻ってみる?もしかしたら、何か分かるかもよ」
「あ、そうだ。それより、高野さんに1つ見てもらいたいものがあるんだ」
「なに?」
 私は4階のトイレの状況を話した。
「何だか不気味な話だね」
「だけど、もし生存者がいるようだったら、助けたい。大丈夫。高野さんに先に入ってはもらうけども、後から俺が付いていくから」
「先生、俺は!?」
「高橋君はトイレの入口で待っててくれ」
「はあ……」

 私達は再び4階に戻った。
 が、
「またクイズ!いい加減にしてくれ!」
 階段側からフロアに入る際も、クイズに答えるパターンらしい。

『“大魔道師の弟子”の主人公、稲生勇太が所属している日蓮正宗寺院名は何?』
『1:正証寺 2:法道院 3:報恩坊 4:理境坊 5:特に名前は明かされていない』

 尚、ここではリッカーと勝負したことを告白しよう。
 果たして、トイレで待ち受けていたものとは……?
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“私立探偵 愛原学” 第4章 「記憶」 4

2016-07-19 19:05:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月28日00:00.天候:不明 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター]

 私と高橋は、何やら人影のようなものが映ったモニタを確認し、現場に向かってみた。
 それは4階の女子トイレ。
 エレベーターを起動させた私達は、それで4階へ上がった。
 因みにこのエレベーターで5階にも行けるが、あいにくとエレベーターは防火シャッターの内側(つまり、外に出られない方)にある為、結局はシャッターを開ける方法を探さないといけない。
「ん?」
 エレベーターのボタンを押したが、ボタンのランプが点かなかった。
 そんなバカな。
 さっき、警備室で起動したのに……。
「先生、ここにカードを当てないと動かないのでは?」
「おっ、そうか」
 やけに厳重なエレベーターだ。
 私は警備室で手に入れたカードキーを読取機に当てた。
 すると、モニタに何かが表示された。

『日蓮正宗の教義として、欠かせないものは何?』

「はあ!?それ何!?さっきの新日蓮宗と違うの!?」

『1:三大秘法 2:進化の秘宝 3:インカの秘法 4:ヨルレリホー』

「常識的に考えれば、1だろう」
 大丈夫か、作者?
 後で武闘派に怒られても知らんぞ。
 正解だったようで、エレベーターのドアが開いた。
「急げ!4階だ!」
「はい!」
 私達はエレベーターに乗り込むと、4階のボタンを押した。
 荷物運搬の用途も兼ねているらしく、少し大きめのエレベーターだ。
 そして4階に着いた。
 だが、ドアが開かない。
「先生、またですよ?」
「ええっ?」
 エレベーターの中にもモニタがあって、そこにまたクイズが表示される。

『日蓮正宗の三大秘法。本門の本尊、本門の戒壇と、あと1つは?』

「ここは何なんだ!?」
「日蓮正宗の研究所……じゃないですよね?」

『1:本門の僧侶 2:本門の革命 3:本門の経文 4:本門の題目 5:実は2つしかない』

 エレベーターのボタンが全部点灯した。
 要はエレベーターのボタンを押して、答えろということらしい。

「だーっ!どれだ!?」
「大抵のゲームでは、5はハズレですね。どうします?」
「俺達は4階に来たんだから4!」
「大丈夫ですかね?」
 私は4を押した。

 ピンポーン♪
 ガラガラガラガラ……。(←ドアが開く音)

「あ、当たった……みたい、ですね?」
「ここは“クイズマジックアカデミー”か!」
 私は憤慨した様子でエレベーターを降りた。
 全く。
 緊張感が無くなってしまった。
 4階にもゾンビやハンターなどの姿は無い。
「ここがトイレですね」
「モニタに映ったのはこの辺だな?」
「はい」
 しかし、ここにはトイレ以外に隠れる場所が無かった。
「トイレの中か?」
「先生。敵かもしれませんから、油断しないでくださいよ」
「分かってるって」
 私は男子トイレのドアをそっと開け、中に入った。
 さすがにトイレの中にまでカメラは無いから、ここに化け物が潜んでいても何ら不思議は無い。
「……パッと見、誰もいないな?」
 もちろん、天井も見る。
 しかし、リッカーが天井を張っているということもなかった。
 男子トイレには小便器が4つ、個室が3つある。
 パッと見、個室が4つあるように見えるが、1番手前は掃除用具入れになっていた。
 近代的な造りの研究所。
 もちろんトイレも、どこかのオフィスビルのトイレであるかのようにメタリックな内装になっている。
「個室を探してみよう」
「はい」
 このトイレの個室のドアは変わっている。
 普通、使用していない時はドアを開けている状態であろう?
 それで入った時に、パッと見て使用状況が分かるというものだ。
 ここのトイレは、使用していなくてもドアが閉まっている状態だった。
 しかも、珍しいのは全て横引き戸であること。
 どうしてこんな構造になっているのか?
 私は高橋に銃を構えさせ、ドアを開けた。
 もし中に化け物がいたり、飛び出してくるようなら、すぐに高橋のマグナムの餌食になることだろう。
 ガラガラガラと引き戸を開けたが、中にはウォシュレットの便器があるだけで、他には何も無かった。
 引き戸になっている理由は、それだけ個室が広めに作られていたからだった。
 つまり、全ての個室が車椅子対応ということである。
「次、行くぞ」
「はい」
 私は真ん中の個室を開けた。
「……何もありません」
「そうか」
 と、その時だった!

 バシューッ!

「!!!」
「!?」
 びっくりした!
 一瞬、何の音かと思ったが、小便器から水が出て来る音だった。
 最新のセンサー式の小便器は、配管の汚れや臭いを防止する為と称して、長時間利用が無い場合、勝手に水が流れる仕組みになっているのである。
 便器にも脇の方とかに、その旨が小さく書かれていることがある。
 それがまた何の予告も無く、しかもそれというのが勢い良く水が出て来る為に、分かっていてもびっくりさせられることがある。
 今回はまあ、完全に不意打ちだったが。
「驚かせやがって……。さあ、あとは最後の個室だ」
「先生。今思ったんですが……」
「何だ?」
「もし中に誰かいれば、この時点で勝手に中から出て来そうなものですが……」
「……あ。それもそうだな」
 こんな状況だ。
 暢気に便器で踏ん張っているとは思えない。
 もし仮に化け物だったら、ドアをブチ破って襲って来るだろう。
「じゃ、開けるぞ」
「はい」
 今度はだいぶ軽い気持ちでドアを開けた。
 B級ホラー映画だったら、こういう時こそ実は化け物が潜んでいて、飛び出してきた化け物に高橋が食われるような展開なのだろうが、そんなことは無かった。
 やっぱり、中には誰もいなかった。
「んん?」
 で、持っていたマスターキーで掃除用具入れの中を開けてみたが、もちろん鍵が掛かっていた時点で隠れられるわけが無く、当然やっぱり誰もいなかった。
「先生?」
「えー?じゃあ、女子トイレかぁ?」
「生存者は女性なのでしょうか?」
「化け物だったとしたら、トイレの男女なんて関係無いだろうしな。たまたま飛び込んだのが女子トイレというだけだろうし」
「じゃあ、行きますか」
「待て待て。もし生存者だったら、男2人が行ったら、余計警戒されるぞ。せっかく高野さんという女性がいるんだから、彼女に頼んでみよう」
「……先生がそう仰るのでしたら」
 私は無線機を取って、彼女に呼び掛けた。
「あー、こちら愛原です。高野さん、応答願います」
{「はい、高野です」}
 普通に応答してきたということは、研究室エリアにも何も無かったということか。
「こちらは何の収穫も無しです。そちらはどうですか?」
{「色々と面白いものを見つけたよ。……でね、どうやらこの研究所でワクチンが作れそうなの」}
「ワクチン?どんな?」
{「もちろん、あの抗ウィルス剤よりも強いワクチンだよ。抗ウィルス剤はゾンビ化の進行を抑えるだけの薬だったけど、ワクチンは文字通り、ウィルスを死滅させてくれる上、抗体も作ってくれるから、もうゾンビ化の心配は無くなる薬だよ」}
「その作り方が分かったと?」
{「そう。……ていうか、今製造中。もうすぐできるってよ」}
「マジか!さすがだな!よし、じゃあ俺達もすぐ行く!高橋君、女子トイレは後回しだ。急いで3階の研究室へ行こう!」
「はい!」
 私達は自分のゾンビ化を恐れながら進んでいる。
 それが完全に無くなるだけでも、大きな前進だ。
 私達は男子トイレを飛び出した。
 と、その時!

 ザザー!

「……えっ?」
 女子トイレの中から、水の流れる音がした。
「先生!」
 な、何だ?
 やっぱり、誰かがいるのは女子トイレだったのか!?
 気になるが、しかし、ワクチンを一刻も早く接種したい。
 私の頭の中に選択肢が現れた。
 さて、どうしよう?

 1:女子トイレを先に調べる。
 2:先に研究室に向かう。
 3:高橋に女子トイレを調べさせ、自分は研究室に向かう。
 4:自分が女子トイレを調べ、高橋は研究室に向かわせる。

 次回へ続く!
コメント (2)
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