報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道師の年末」 3

2019-01-05 19:14:00 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月30日16:30.天候:晴 東京都豊島区某所 日蓮正宗正証寺・集会室]

〔「全く。顕正会員を取り逃がして八つ当たりされても困るんですけどね!」〕

 藤谷:「えー、このように、顕正会員の卑劣さは日を追う毎に増しております。我が正証寺においても、御登山の際には十分に注意して頂きたく、このような動画を制作したものです。皆さんもこの動画の内容を心肝に染め、顕正会員の下らぬ揚げ足取りに引っ掛からぬよう、お願い致します。もちろん、私も特に気をつけます」

 シーンと静まり返る集会室内。
 その雰囲気は明らかに白けたものだった。

 藤谷:「動画撮影協力は大石寺塔中の報恩坊様とその御住職様以下、講頭さんや総代さん方であります。この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます」

 いや、だからうちはまだ支部認証受けてないから講頭職も総代職も無いって!(byトチロ〜さん)

 鈴木:「顕正会の体験発表のシーンは、自分が顕正会時代だったものを流用しています。あんなものパソコンで簡単に作り変えられますんで」
 稲生:(やっぱり鈴木君のせいか)

 稲生もすっかり呆れていた。

 藤谷:「それでは本日の『顕正会対策臨時集会』を終了致します。皆様のご参加、真にありがとうございました」

 疎らな拍手。
 明らかにこの集会はスベっていた。
 集会室から出て行く信徒達。

 稲生:「あの、藤谷班長……」
 藤谷:「おお、稲生君も参加してくれたか。ということは、マリアンナさんも御一緒かな?」
 稲生:「マリアさんは外で待たせてあります」
 藤谷:「外で!?こんな寒い中……」
 稲生:「あ、いや、もちろんカフェでですよ」
 藤谷:「何だ、そうか」

 取りあえず片付けだけは手伝う稲生。
 実は藤谷が行う臨時集会というのは、ジャイアンのリサイタル並みに不評であることが多い。
 それでいて憎まれないのは、会場設営と撤収は他人の手を借りないところである。
 従って今、片付けをしているのは藤谷と鈴木と稲生の3人だ。

 稲生:「班長、これ、イリーナ先生からです」

 稲生は二つ折りにしたメモ用紙を渡した。

 藤谷:「おおっ、ありがとう!」

 そこには藤谷が馬券を購入する中山金杯の予想が書いてあるはずだ。
 いや、予想ではなく予知である。

 藤谷:「ふむふむ……なるほど……。そういうことか」
 稲生:「報酬は賞金の半額とのことです」
 藤谷:「マジか!1000万円以上出すと大騒ぎになるからな……」
 稲生:「でも、御自分で予想するよりは先生の予知は確実ですよ?そんじょそこらの予想屋さんとはワケが違います。半分は良心的かと」
 藤谷:「そ、それもそうだな」
 稲生:「この内容に不満が無ければ、この契約書にサインして欲しいとのことです」
 藤谷:「了解だ。……って、もしかして稲生君、今日ここに来たのは集会ではなく、これかい?」
 稲生:「ま、そう思われても仕方が無いですねぇ……」
 藤谷:「キミというヤツは……。分かったよ。契約書にサインするよ」

 藤谷はボールペンを用意した。

 稲生:「イリーナ先生はゆるふわな御方ですから、阿漕な内容にはなっていないと思いますが、一応よく読んだ方がいいと思いますよ?」
 藤谷:「少しくらいボられてもいいよ。イリーナ先生には世話になってるからな」

 魔道師も契約社会。
 中には明らかにおかしい内容の契約を盛り込んだ書類を差し出してくる者もいる。
 1番多いのが数字のマジックだ。
 まだ、言語によっては言い回しを曖昧にしてしまうパターンもある。
 曖昧な表現の多い日本語での契約書の場合は、但し書きが多い。
 魔道師の掟として、言語は相手の母国語または公用語に合わせることになっている。
 この場合は日本語で書かれているはずだ。
 弟子である稲生でさえ、イリーナの契約書を勝手に見ることは許されなかった。

 藤谷:「……よし、これでいいだろう」

 藤谷がサインすると、契約書が青白い光を帯びた。

 稲生:「ありがとうございます。これが控えです」
 藤谷:「ま、大騒ぎにならない程度にドカッと稼ぐさ。その半分をイリーナ先生に渡せばいいわけだな?」
 稲生:「そういうことです」

 稲生は大きく頷いた。

 藤谷:「よし。夕勤行に参加するだろ?その後で家まで送ってあげよう」
 稲生:「ああ、どうもすいません。ただ、今日は家族で外食することになっているんですよ」
 藤谷:「そうなのか?」
 稲生:「さいたま新都心のホテルメトロポリタンのレストランです」
 藤谷:「おお、あの高級ホテルの。さすがは稲生君の御両親だ。イリーナ先生への接待かい?」
 稲生:「そうですね」
 藤谷:「俺もやっといた方がいいかな」
 稲生:「契約が満了した時でいいんじゃないですか?どうせ、勝った馬券は現金で出て来るわけでしょう?」
 藤谷:「それもそうだな。その現金を先生の所に持って行くから、それでいいか」
 稲生:「そうですね。その方がいいでしょう」

[同日17:40.天候:晴 東京都豊島区某所 某カフェ]

 夕刻の勤行が終わった後で、稲生はマリアを迎えに行った。

 稲生:「お待たせしました」
 マリア:「ああ、お疲れ」
 藤谷:「よお、マリアンナさん。お久しぶり」
 マリア:「Ah...ミスター藤谷」
 稲生:「班長が送ってくれるそうですので、一緒に行きましょう」
 マリア:「それは助かる」

 マリアは席を立った。

 藤谷:「そこのコインパーキングに車止めてるから、会計済ませたら来てくれや。先に行ってるから」
 稲生:「分かりました」

 といっても、会計などすぐに終わるものだ。

 稲生:「Suicaで払います」
 店員:「はい、お願いします」

 ピピッ♪

 店員:「ありがとうございました」
 稲生:「どうも」
 マリア:「いいのか?」
 稲生:「連れて来たのは僕ですから」
 マリア:「ありがとう。紅茶だけでなく、ケーキまで食べた後だったのに」
 稲生:「別にいいですって」

 カフェの外に出ると、駐車場から藤谷のベンツが出て来るところだった。
 前は型落ちのEクラスだったが、今は現行車種のGクラスになっている。

 藤谷:「じゃ、乗ってくれい」
 稲生:「お願いします」

 稲生とマリアはリアシートに乗り込んだ。

 藤谷:「さいたま新都心なら、首都高をひたすら走れば着けるな」
 稲生:「そうですね」

 既に日も暮れて暗くなった池袋の街を、大きなSUV車が突き進んで行った。
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雲羽百三の初夢 2019

2019-01-05 10:13:13 | 日記
[年月日不明 時刻不明(多分、午前中) 天候:晴 日蓮正宗大石寺・登山事務所]

 私の名前は雲羽百三。
 趣味で小説を書いているものだ。
 日蓮正宗報恩坊にはトチロ〜さんの紹介で、11月11日に御勧誡した。
 ゾロ目で覚えやすいからとか、ゾロ目で縁起がいいからとか、そんな理由だ。
 それはさておき、今日は添書登山をさせて頂くべく、添書を持って登山事務所にやってきた。

 添書って……誰もその画像をアップしてないけど、ダメなんだろうな、きっと。
 アップしようものなら、それを元に偽造するアホが出てくるからかな?
 まあ、いいや。
 早速、受付に向かう。
 受付には係の御僧侶がいた。

 御僧侶:「それでは2000円の御開扉御供養をお願いします」
 雲羽:「了解です」

 私は財布を取り出した。
 創価学会在りし頃、こういった手続きはATMのような機械で行われ、御開扉料も今よりは安かったという。
 ようつべの動画で見たことがあるが、何ともまあ味気の無い光景だった。
 その時に使用されていたと思しき機械が旧・常来坊に放置されていて、トマソンのようになっていたのを覚えている。
 今は常来坊も建て替えがなされ、旧坊舎は取り壊されてしまった。
 恐らくあの機械もさすがに廃棄処分となったと思われるが、1台くらいはどこかに静態保存しておいてもらいたかったものだ。
 宝物殿なんかいいんじゃないかな。
 あそこは日蓮正宗の歴史を今に伝える展示方法を取っているし、『創価学会がもたらした日蓮正宗の黒歴史展』なんかで使ってみては如何かな?
 何しろ、宝物殿自体が【お察しください】。
 私がそんなことを考えている時だった。

 雲羽:「あっ、すいません!大きいのしか無いんですが……」
 御僧侶:「大丈夫です。お釣り出します」
 雲羽:「じゃあ、1万円で……」

 私が諭吉先生1人分を差し出した時だった。

 ガラガラッ!……バーンッ!!(←登山事務所入口の引き戸が乱暴に開けられた音)

 あ?うっせーな。
 もっと静かに入って来い!
 私が訝し気に大きな音のした方を見た時だった。

 カシャカシャカシャカシャ!(カメラのシャッターの音)

 雲羽:「な?な?な!?」
 御僧侶:「!!!」

 突然乱入してきた男に、いきなりカメラを向けられた。

 顕正会員:「撮ったどー!宗門の堕落している決定的瞬間!!」

 はあ?何言ってんだ、コイツ?

 妙観講員A:「いたぞー!顕正会のスパイ!!」

 な、何だってー!!

 妙観講員B:「待てっ!待てーっ!!」
 顕正会員:「うひょひょひょひょ!これも無二の師匠、浅井先生の為!!」
 妙観講員C:「浅井教の信者め!!」
 顕正会員:「黙れ!堕落した宗門が!!」
 妙観講員D:「そっちに逃げたぞーっ!!」
 妙観講員E:「捕まえろ!カメラを没収するんだ!!」

 バタバタと登山事務所からバスターミナルの方へ逃げて行く顕正会員と妙観講員達。
 事務所内にいた私達は、ただ呆気に取られているしか無かったのである。
 いつもなら、『流血の惨を見る事、必至であります』対応を取らせて頂くのだが、こう想定外のことがいきなり発生させられちゃなぁ……。
 私もまだまだ全然修行が足らんなぁ……。
 それにしても、『無二の御本仏、日蓮大聖人』ではなく、『無二の師匠、浅井先生』が先に出て来るとは……。

[年月日不明 時刻不明(多分、夕方ないし夜) 天候:不明 大宮ソニックシティ]

 司会者:「男子部●隊、鈴木組長!」
 鈴木:「はい!」

 今の司会者はさすがにアデランスではないみたいだね。

 鈴木:「私は平成○×年4月、ポテンヒット班長の折伏により、素直に入信させて頂きました。入信前の私は【中略】。そして私は、宗門の堕落ぶりを目の当たりにすることとなったのです。と、言いますのは【また中略。要は(本当は故意にスパイに行っただけなのだが)たまたま大石寺に行って境内を見学していたところ……】法華講員が不敬の御開扉に率先して与し、しかも坊主に1万円もの大金を支払っている姿でした(雲羽はお釣りをもらうところだったんだが……)。私はその模様を夢中でカメラのフィルムに収めましたところ、凶悪な妙観講員がたった1人でいる私を多人数で取り囲み!悪口雑言を垂れ流す、正にその姿は悪鬼そのものでありました!私は浅井先生並びに顕正会の同士達にこの実態を何としてでもお伝えしたく、(本当は無傷で逃げ切ったんだけど)満身創痍の中、何とかカメラを死守することができました!さればかのような堕落ぶりを目の当たりにした時、細井管長の悪臨終ぶりが如何なるものであったかは想像に難くなく、正しく広宣流布を実現できるのは顕正会ただ1つであることを実感し、【あとはほぼテンプレートなので以下略】」

[年月日不明 正午前後? 天候:晴 大石寺報恩坊]

 雲羽:「あ、ヤベ。やっぱり顕正新聞に載っちゃいましたよ、俺。一応、目線は入ってますけど……」

 『不敬の御開扉に加担する法華講員。坊主が御開扉料と称して1万円もの大金を徴収している所だとすぐに分かる』

 御住職:「今、上層部が動いてますから」
 トチロ〜:「顕正新聞はいつからスクープ記事重視になったんだ……!?」
 いおなずん:「一応、こちらから大白法と慧妙送ってやりますか?」
 御住職:「それはもうやっておきました。顕正会員が登山事務所のドアを壊したので、それで警察に被害届を出しましたので」
 雲羽:「あ、やっぱあれブッ壊してたんスね!」
 総代:「雲羽さん、さっき妙観講から電話が掛かってきて、『雲羽にも顕正会のスパイ疑惑が掛かっている。事情聴取をするから、荻窪の本部に来い』ということなんですが……」
 雲羽:「何で私がスパイなんですか!私も被害者ですよ!?」
 総代:「いや、だから『何かの間違いだ。それでも事情を聴きたいのなら、そっちが報恩坊まで来い』と言っておきましたから」
 雲羽:「全く。顕正会員を取り逃がした八つ当たりされても困るんですよね!」

 2019年は、勇躍前進の年。
 勇躍と書いて、『ハードボイルド』と読む……かどうかは【お察しください】。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師の年末」 2

2019-01-03 20:00:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月29日19:16.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 稲生達を乗せた埼京線快速電車が与野本町駅を発車した。
 この駅はさいたま市中央区役所の最寄り駅であり、それで快速停車駅に指定されている。
 ……のだが、実際に乗降客数が多いのは隣駅の南与野であるという。
 こちらは各駅停車しか停車しない上、副線上にホームがある(本線は優等列車の通過線)。
 尚、平日限定の通勤快速は中央区内の駅には一切停車しない。
 埼京線でも屈指の小さな駅とされる北与野駅を軽やかに通過する。
 確かに静かな駅ではあるが、そこまで寂しい所でもないというのが作者の主観。
 右手にはさいたまスーパーアリーナが見えてくる。

 マリア:「凄い人……」
 稲生:「年末に何かイベントがあるんですよ。まあ、そういう施設ですから」
 マリア:「私はあまり人の多い所は好きじゃない」
 稲生:「分かります」

 この2人が未だに遊園地デートをしないのはその理由。
 それでも新宿駅や大宮駅構内を移動しているのだから、まんざらではないと思うのだが。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく大宮、大宮です。地下ホームの21番線に到着致します。お出口は、左側に変わります。大宮から新幹線、高崎線、宇都宮線、京浜東北線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。埼京線内快速運転をして参りましたが、大宮から先の川越線内は各駅に停車致します」〕

 りんかい線の車両には自動放送が無い為、最初から車掌が肉声で放送する。

 稲生:「そろそろ先生を起こした方がいいですね」
 マリア:「うん。師匠、そろそろ起きてください」
 イリーナ:「……んにゃ?……おお、もうウラジーミルスカヤ?」
 マリア:「Huh?」
 稲生:「サンクトペテルブルグの地下鉄じゃありません!」

 奇しくも地下に潜っていく電車。

 イリーナ:「ゴメンゴメン。日本の鉄道だったね」
 マリア:「そうですよ」
 稲生:「ちょっと乗ってみたい気がしますけどね」
 イリーナ:「しばらくの間は、やめた方がいいよ」
 稲生:「どうしてですか?」
 イリーナ:「爆弾テロされる夢見た」
 稲生:「ええっ!?マジですか!?」
 マリア:(嫌な予知夢しか見ないんだから、この大魔道師は……)

 安全な日本の電車は、無事に大宮駅に到着する。

〔おおみや、大宮。ご乗車、ありがとうございます〕
〔「21番線の電車は、各駅停車、川越行きです」〕

 ぞろぞろと降りて行く乗客達。
 もちろん稲生達もそれに続く。

 稲生:「あ、そうそう。藤谷班長から依頼がありましたよ」
 イリーナ:「また競馬の予想かい?」
 稲生:「はい。来年1月5日の中山金杯の予知をお願いしますと」
 イリーナ:「あいよ。もちろん、報酬はちゃんと頂くよ」
 稲生:「それについて、じっくりとお話ししたいそうです」
 イリーナ:「了解。明日はヒマそうだから、明日でいいかい?」
 稲生:「分かりました。藤谷班長に連絡しておきます」

 そんなやり取りを聞きながら、マリアは改札口までの階段を先に上がった。

 マリア:(私も占いが完璧にできるようになったら、ああいうので稼げるんだろうな)

 稲生にはマリアが短いスカートを穿きつつ、黒いストッキングに包まれた足が気になってしょうがなかったが。
 前方はそれ、後方は稲生の下をイリーナが上っている。
 占い師が着るようなエキゾチックな衣装をイリーナは着ているのだが、胸元が大きく開いたものである為、上から覗くと谷間が見える。
 これはこれで……。

 ゴッ!

 稲生:「ぶっ……!」

 マリアの足が稲生の顔に痛烈ヒットした。

 マリア:「Oh,sorry!足が当たっちゃった

 絶対わざと蹴ったとしか思えない。
 顔は笑っているが、明らかに怒筋を浮かばせていた。

 マリア:(どこ見てんだ、このスケベ!)
 イリーナ:「まあまあ、いいじゃない、マリア。減るもんじゃないんだしw」
 マリア:「本来は師匠が注意するんですよ、そこは!」
 イリーナ:「マリア、今年が終わるまであと2日ちょっとあるわ」
 マリア:「だから何ですか?」
 イリーナ:「今年のダンテ一門のスローガンを言ってみて」
 マリア:「『先輩は後輩を大事にしよう』です」
 イリーナ:「はい、正解。分かったら、もう少し優しくしてあげなさい」
 マリア:「だからって甘やかしていいものでもないと思います!」
 イリーナ:「マリア、最近厳しくなったわねぇ……」
 マリア:「これが普通ですよ、きっと」
 イリーナ:「分かったから、早いとこ行きましょう。勇太君の御家族を待たせているわ」
 稲生:「あ、そうです。夕食の用意ができているらしいので、早くタクシーで向かいましょう」

 稲生達は駅前のタクシー乗り場に移動すると、それで稲生家へと向かった。

[同日19:35.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 タクシーが稲生家の前に到着する。

 運転手:「ありがとうございます。ちょうど1000円です」
 イリーナ:「じゃあ、これで」

 イリーナがリアシートからアメリカンエキスプレスのプラチナカードを運転手に渡した。
 たった1000円のタクシー代にプラチナカードは何とも勿体無いような気がするが、あまりイリーナは気にしていないようだ。
 イリーナがタクシー代を払っている間、稲生はトランクを開けてもらってそこから荷物を降ろした。

 イリーナ:「支払い、かんりょ〜!」
 稲生:「ありがとうございました」
 マリア:「いつになったら、ブラックカードを渡されるんですか?」
 イリーナ:「いや、勧誘は来てるのよ」
 稲生:「ええっ!?」
 イリーナ:「だけど断ってる」
 稲生:「勿体無い。ブラックカードって、プラチナカードを持っている人でも必ず招待されるわけじゃないんでしょう?」

 大相撲で言えば大関止まりであるようなものか。

 イリーナ:「別に、これだけでも十分に買い物はできるしね。知ってる?あのビル・ゲイツさんでも、ブラックカードは持っていないのよ?」
 稲生:「へえ、そうなんですか」

 因みに都市伝説でブラックカードには利用限度額が無いと言われるが、実はそうではないらしい。
 アメリカンエキスプレス側の匙加減で、フレキシブルに決められているという。
 だから例えばAさんは2000万円までなのに、Bさんは2億円までOKとかそんな感じである。
 そんな話をしながら、イリーナ組の面々は稲生家の中に入っていった。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師の年末」 1

2019-01-02 19:19:12 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月29日18:34.天候:晴 東京都新宿区新宿三丁目 JR新宿駅]

 稲生達を乗せた特急“あずさ”26号は松本駅で前に2両を増結し、11両編成で新宿へ向かった。
 東京へ向かう度に雪は無くなり、オレンジや黄色の電車と並走する頃にはカラッとした冬晴れの景色が続いた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、新宿、新宿です。……〕

 自動化された車内放送が流れる頃、稲生はグリーン車に乗っているイリーナを起こしに行ったが……。

 イリーナ:「あいよ。アタシゃ起きてるよ」

 とのこと。
 マリアの心配は杞憂に終わったわけだ。

 稲生:「マリアさん、先生は起きてらっしゃいましたよ?」
 マリア:「そのようだな。ちょうど師匠の話し相手になってくれた人がいたんだろう」
 稲生:「話し相手?」
 マリア:「日本では『仕事納め』とやらなのに、日本人は休まないなー」
 稲生:「いや、うちの父さんは今日から休みですよ?」

 ホワイトカラーはそうかもしれないが、作者を含むブルーカラーは【お察しください】。

 イリーナ:「ぬーん」
 マリア:「エレーナのアホみたいな登場の仕方やめてください」
 イリーナ:「まあまあ。魔道師も基本、不規則勤務なのさね」
 稲生:「え?でもこうして休みなのは……?」
 イリーナ:「勇太君も長年魔道師をやれば分かると思うけど、いい加減4ケタも生きると、世間様の流れに疎くなるのさ。それを取り戻そうとするなら、勇太君みたいなホヤホヤの新弟子を入れて、その生活スタイルに沿ってみるというのも1つの手なわけだね」
 稲生:「そういうもんですか」

 電車は速度を落とし、新宿駅構内の複雑なポイントを通過して新宿駅9番線ホームに入線した。
 このホームは中央本線特急列車が専用で使っているホームである。
 その為か喫煙所もあるし、駅弁売り場もある。

〔しんじゅく〜、新宿〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 電車を降りると寒風が吹いて来た。
 それでも……。

 稲生:「長野と比べれば暖かいですね」
 マリア:「雪が無いからかな?」
 イリーナ:「じゃあ、雪の無いロシアに行ってみる?」
 稲生:「雪が無い?」
 イリーナ:「ロシア全体が雪国ってわけじゃないからね。日本人は勘違いしてるけど」

 クソ寒いだけで雪の無い地域もあるそうだ。

 稲生:「取りあえず、次は埼京線に乗り換えです」
 イリーナ:「了解」

 帰省ラッシュで賑わう新宿駅。
 途中で……。

 稲生:「お、成田エクスプレスだ」
 イリーナ:「あれに同士が乗ってるね」
 稲生:「分かるんですか?」
 イリーナ:「おおかたアナスタシア組。日本でのエンジョイに飽きて、ロシアにでも行くつもりかねー」

 アナスタシアはロシアのモスクワ出身。
 イリーナもまたロシアの大都市近郊出身ではあるが、モスクワとはかなり離れているらしい。

 イリーナ:「あんまり魔道師が日本に固まってちゃ、ちょっと困ることが起こるんだけど」
 稲生:「困ることですか?」
 イリーナ:「出入国の隙を突いて、魔の者が侵入して来たりしなか心配でね」

 魔の者の正体は未だに分からない。
 しかしそれに打ち勝ったエレーナでさえ、戦いの傷痕が体に刻み込まれたままである。
 しかも、日本には日本海に阻まれて侵入できないという不思議な話がイリーナからされている。

 稲生:「そんなことが……」
 イリーナ:「ナスっちはそんなヘマしないとは思うけどね」

[12月29日18:42.天候:晴 JR新宿駅→埼京線1889F電車10号車内]

 埼京線ホームに移動すると、既に当駅始発の電車が入線していた。
 平日ならもう満席上等だが、今日から年末休みに入っているということもあって空いていた。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、18時42分発、快速、川越行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、池袋に止まります〕

 停車していたのは東京臨海高速鉄道の車両。
 古巣のりんかい線には戻らず、埼京線内折り返しで再び埼玉へ向かう運用だろう。
 これの逆現象がりんかい線でも行われている(JRの車両が埼京線には戻らず、りんかい線内を行ったり来たりする)ので、お互い様か。
 JRの車両がモスグリーンなら、こちらはブルー。

〔「お待たせ致しました。18時42分発、埼京線快速、川越行き、まもなく発車致します」〕

 JRの車両よりは硬めの座席に腰掛けると、すぐに発車の時間になった。
 ホームに発車メロディが響き渡る。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 何度か再開閉を繰り返しながら、やっとドアが閉まる。
 明らかにこの最後尾よりも混んでいる前の車両で、駆け込み乗車や荷物挟まりがあったと思われる。
 そしてようやく発車した。

〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は埼京線快速、川越行きです。停車駅は池袋、板橋、十条、赤羽、戸田公園、武蔵浦和、与野本町、大宮と大宮からの川越線内は各駅に停車致します。……」〕

 りんかい線の車両では自動放送が導入されていないので、車掌が肉声で全て放送する。
 ほとんど自動放送が導入されている中では珍しい。

 稲生:「魔の者って結局何なんですか?」
 イリーナ:「一言で説明するのは難しいね。でも見方を変えれば、勇太君が1番近い所にいるかな」
 稲生:「僕がですか!?」
 イリーナ:「そう」
 マリア:「私の次に狙っているのは勇太ですか?」
 イリーナ:「それは分からないよ。ただ、勇太君も勇太君でそれと戦っているということ」
 稲生:「北海道のあれは違うんですよね?」
 イリーナ:「うん、違うね」
 稲生:「え、何だろう?」
 イリーナ:「謎が解けたら、すぐにでもマスターになれるよ」
 稲生:「魔の者。魔。魔と言えば障魔。第六天魔王……」
 イリーナ:「ま、勇太君はまだ若いんだから、ゆっくり答えを探すことだね」
 マリア:「私の場合は、契約すら持ち掛けてこない悪魔でしたが……」
 イリーナ:「悪魔の全員が契約を持ちかけて来るとは限らないからね。中には魔道師が嫌いで殺しに来るヤツもいるんだから」

 差し当たり、キリスト教系やゴエティア系の悪魔は魔道師と契約したい者ばかりであるようだ。
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新年の御挨拶を“アンドロイドマスター”シリーズのガイノイド達に依頼してみた件

2019-01-02 10:26:58 | アンドロイドマスターシリーズ
[12月31日23:45.天候:晴 静岡県富士宮市上条2057 日蓮正宗総本山・大日蓮華山 大石寺]

 AD:「それでは本番いきまーす!5、4、3、2……」
 エミリー:「こんばんは。今回は大石寺にお邪魔しています」
 シンディ:「今回は雲羽監督が自ら御登山されていますので、私達が代わりに御挨拶をさせて頂きたいと思います。よろしくお願い致します」
 エミリー:「現在の気温は3度。私達には平気な気温ですが、人間の方々はさぞかし寒いと思われます。どうか体調にはお気をつけください」
 シンディ:「それでは境内にお邪魔しましょう。私達は人間ではありませんので、そもそも謗法とは関係ございませんので」

 

 エミリー:「ここが監督が再び所属した報恩坊様の入口になります」
 シンディ:「監督が眠い目を擦りながら撮影したので、画像の悪さは御容赦ください」
 エミリー:「それでは中に入ってみましょう」
 シンディ:「監督は今、元朝勤行に備えて寝ているはずですので、昔のバラエティ番組にありました、小声で『おはようございまーす』と言って寝顔を撮影するアレで行きたいと思います」

 エミリー、玄関の引き戸を開けようとする。

 エミリー:「ちょっと立て付けの悪いドアですね。なかなか開きません」
 シンディ:「お寺は開かれた所だから、鍵が掛かってるはずがないわね。もう少し強く引いて……」

 バキッ!(鍵の壊れる音)

 エミリー:「…………」
 シンディ:「…………」

 しばらく立ちすくむ2人。

 エミリー:「……え、何で壊れたの?」
 シンディ:「分かりません」
 エミリー:「鍵掛かってたじゃない」
 シンディ:「姉さんが先にこじ開けたんでしょ?」
 エミリー:「私より強く引いたのは、明らかにオマエだ」
 シンディ:「また人のせいにする!」
 エミリー:「どうするんだ!?」
 シンディ:「と、取りあえず……」

 シンディ、ドアだけ直す。

 バージョン4.0:「明ケマシテ、オメデトウゴザイマス!新年明ケテ早々、エミリー様とシンディ様ニお会イデキルナンテ、功徳〜〜〜〜〜〜!!」

 ズドン!(シンディ、右手をライフルに変形させて発砲する)
 ドゴン!(エミリー、右手をマグナムに変形させて発砲する)

 バージョン4.0:(@_@;)〜☆

 いきなりの攻撃にピヨるバージョン4.0。

 エミリー:「こいつを犯人にしておく!玄関の横に置いとけ!」
 シンディ:「いいアイディアですね。うん、いいアイディアだ」
 エミリー:「取りあえずペンキでカラフルに塗って、ダルマが置いてある風にしておけばいいだろ」
 シンディ:「ダルマ!?……いや、確かにこいつらダルマみたいな体付きですけど!」

 今やAIも人間にウソを付き、誤魔化す時代になりつつある。

[1月1日00:05.天候:晴 大石寺境内]

 シンディ:「あ、新年明けましたよ」
 エミリー:「読者の皆様、明けましておめでとうございます!寝ている監督に代わって御挨拶申し上げます。それでは他の作品と中継が繋がっていますので、呼び出してみましょう」
 シンディ:「それではここ最近、連載数が伸びている“私立探偵 愛原学”から行ってみましょう」

 愛原:「あー、クソ寒っ!」
 高橋:「先生、中継繋がってますよ!」
 愛原:「えっ、うそマジ!?……えー、私達は今、大宮の氷川神社に来ています。私らはカントクと違って、信仰者じゃないんで。フツーに神社に参拝します」

 シンディ:「リサさんの着物がよく似合いますね、愛原さん?」

 愛原:「本人も喜んでいましてですねー、何でも斉藤絵恋さんから借りたお揃いの着物らしいんです」

 エミリー:「よほど仲が良いんですね」

 愛原:「ちょっと友達の域を越えて、百合っぽくなっているのが気になるところです」

 シンディ:「1番新しい作品ですから、まだまだ今後のストーリー展開が気になりますねー」

 愛原:「いつまたハードボイルド路線を行かされるか、気が気でないです」

 エミリー:「ありがとうございました。実は私達も着物を着ています」
 シンディ:「さすがにお揃いではないですね」
 エミリー:「いつもの衣装だと胸が窮屈なのですが、着物だと胸の所も上手く調整できて素晴らしいです」
 シンディ:「それでは次は、“アンドロイドマスター”に負けず劣らずのストーリーの長さで有名な“ユタと愉快な仲間たち”の御紹介です」

 ガタンゴトン!……ガタンゴトン!……ガタンガタン!……ガタンガタン!ガタガタガタガタガタ!

 エミリー:「これは……?」
 シンディ:「電車の中みたいですね。“ユタと愉快な仲間たち”の稲生さーん?」

 稲生:「あ、はい、稲生です!こっちの世界、まだ新年明けてないんですよ!」

 シンディ:「ええっ!?」

 稲生:「作者の遅筆のせいで、こっちはまだ12月29日です!」

 エミリー:「これは失礼致しました。今、電車の中みたいですが、どちらに向かっているところですか?」

 稲生:「中央本線の特急“あずさ”26号の中です。さっき甲府駅を出たところですね。取りあえずこの電車が新宿駅に到着した辺りから、再開するそうです」

 シンディ:「作者の代わりに長旅させられるのも大変ですね。あの、できればマリアンナさんとイリーナさんにも出て頂きたいんですけど」

 稲生:「すいません、先生は爆睡中です、予想通り。マリアさんはトイレに行っちゃって……」
 エレーナ:「ぬーん」
 稲生:「って、何でキミがここにいるんだよ!?いつの間に乗ったんだ!?」
 エレーナ:「ああ?私の魔法を使えば、電車のドアを開けるなんてお茶の子さいさいだぜ」
 稲生:「何で外から開けるんだよ!?走行中だぞ!」

 バタバタとやってくるマリアンナ。

 マリア:「こらっ!オマエが出るな!」
 エレーナ:「稲生氏1人で寂しそうだったから、私が呼ばれて飛び出て何とやらだぜ」
 マリア:「常識で考えろ、この!」
 エレーナ:「ああ?オマエの口から常識なんて言葉が出て来るなんて、きっと明日は雪が降るぜ」
 マリア:「黙れ!この黄色いゴリラ!」
 エレーナ:「な……黄色いゴリラだと!?このペチャパイ!」
 稲生:「ぼ、僕達は元気にやってますので、今年もよろしくお願いしまーす!」

 シンディ:「仲がよろしいですわね」
 エミリー:「さすがは『仲良き事は美しき哉』が綱領に入っている魔法門ですね」
 シンディ:「尚、『黄色いゴリラ』とはエレーナさんの髪が私と同じ、黄色が濃い金髪だからだそうです。マリアンナさんは、それよりは白に近い金髪なんですね」
 エミリー:「あとはミズ・エレーナの方が体付きが良いという意味もあるそうだ」
 シンディ:「ペチャパイは【お察しください】」
 エミリー:「登山レポについては監督にお任せします。そろそろ私達は退散するとしましょうか」
 シンディ:「元朝勤行の後、広布の広場で甘酒が振る舞われるそうですが、私達はロイドである為、レポートができませんので悪しからず」
 エミリー:「元朝勤行は正座椅子を使っても足がやられると作者が言ってました」
 シンディ:「その後も何度も正座する場面があった為、足がギブアップした作者は報恩坊さんの初勤行では椅子に座ってた根性無しです」
 エミリー:「それでは今年もよろしくお願い致します」
 シンディ:「今年は私達のストーリーも再開してくれるといいですね」
 エミリー:「それでは私達から大石寺へ御供養です」

 エミリーとシンディ、右手をバズーカ砲に変形させる。
 そして、上空に向かって手を挙げる。
 2人とも1発ずつ発砲。

 エミリー:「玉屋です!」
 シンディ:「私達から花火の御供養です」
 妙観講員A:「こらーっ!誰がそこまで許可した!?」
 妙観講員B:「ちょっとこっちへ来い!」
 シンディ:「ヤベッ、アドリブ駄目だった!」
 エミリー:「それでは大石寺からお送りしました!」

 鋼鉄姉妹、超小型ジェットエンジンを起動させて緊急離脱!

[1月1日01:15.天候:晴 大石寺報恩坊]

 いおなずん:「おはようございます」
 雲羽百三:「ん……もう起きる時間ですか?」
 いおなずん:「そうです。トチロ〜さん、おはようございます」
 トチロ〜:「おう……」

 外でのことなど不知の作者達。
 尚、玄関の外に放置されたダルマバージョン4.0は御住職が謗法払いをして下さったかもしれない今日この頃です。
コメント (2)
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