報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「一触即発」

2022-09-22 20:12:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日11:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター]

 地上部は国家公務員用の研修施設となっているが、地下は厚生労働省やBSAA極東支部日本地区本部が運営している研究施設である。
 日本国内で捕えられたBOWやクリーチャーも、ここで飼育・研究されている。
 上野姉妹の母であり、人間だった頃のリサの妹かもしれない上野利恵もここに収容されている。
 上野利恵も日本アンブレラにより、Gウィルスと特異菌の混合薬を投与されたことで、リサとはまた違う鬼女となった。
 リサよりも更に人に近くなり、人間との交配も可能で、娘を2人生んでいる。
 但し、満月の夜に理性を失って人の血肉を求める鬼と化すという点もリサと違う(リサはどちらかというと、生理の周期や空腹感の強弱によって変わる)。

 上野利恵:「この度は、大変申し訳ございませんでした。あのような事が2度と無いよう、固く固く自制致します」
 リサ:「ウゥウ……!キサマ、どのツラ下げて……!!」
 愛原:「リサ、やめろと言ってるだろ?」

 仮釈放が行われるに当たり、人間同様、釈放式が行われる。
 ここの施設の所長やBSAAの日本地区本部長、そしてデイライトからは善場主任と東京事務所の副所長が参加していた。
 リサは私と高橋に挟まれ、抑え込まれている。
 第1形態に変化して、両手の爪を鋭く長く伸ばしていた。
 マスクを着けているから分からないが、口元からも牙が覗いているだろう。
 額からは一本角が生え、両耳も長く尖っている。
 怒りで紅潮している為か、まるで赤鬼のようである。

 研究施設所長:「……己の体質・性質をよく理解し、猛省に猛省を重ね……」

 所長が訓示を行う。

 高橋:「ムショの釈放式と似てますね」
 愛原:「シッ!」

 それにしても、どうしてリサを参加させるのだろう?
 こうして私達が抑えていないと、リサは今にも利恵に飛び掛かりそうだ。
 一応、腰縄と口枷も用意しているが、これではどちらが収容者か分からない。
 しばらくして、釈放式が終了した。

 リサ:「わたしは許さないからな!待て!逃げるな!!」
 愛原:「リサ、やめろ!!」
 高橋:「先生、このバカにマグナム撃ち込んでいいっスか!?」
 善場:「発砲は許可しません。もしも発砲したら、高橋助手を現行犯で拘束します」
 高橋:「姉ちゃん!?俺のマグナムは、こういうバカな化け物に撃ち込む為に許可されてるんだろ!?」
 善場:「所持は許可しますが、現段階においての発砲は許可しません」

 上野利恵は退室時に、もう一度深々と私達に向かって御辞儀をした。
 そして、娘達や守衛、BSAA隊員に護衛されるかのように退室して行った。

 リサ:「あんなヤツ、死刑にすればいいんだ!!」
 高橋:「俺もそう思う。被害者が先生だから、禁固刑からの仮釈放ってのはさすがに甘すぎるんじゃないか?」

 高橋は案外冷静だが、リサがいるから却って冷静になれているのだろう。
 もしもリサがいなかったら、高橋が暴れていたかもしれない。

 高橋:「どうなんだ、姉ちゃん?」
 善場:「……私も同意見ではあります。ただ、彼女にはまだ利用価値があると、上は思っているのです。Gウィルスと特異菌の混合薬を投与されたBOWは、あの上野利恵ただ1人だけです。彼女が今後辿る変質のデータを取りたい、というのが上の本音のようです。もちろん、彼女に反省の態度が無かったり、既に理性の無い化け物と化してしまった場合はこの限りではありませんが」
 愛原:「でしたら、尚更この施設にいた方が良いのでは?」
 善場:「彼女が独り身であれば、そうしたでしょう。しかし、彼女には娘達がいます。ついでに、娘達のデータも取りたいのでしょうね。しかし、何の罪も無い娘達もここに収容するわけには参りません。彼女達はリサと違って、人間の戸籍を最初から持っています。つまり、日本国憲法に定められた基本的人権の所有者達です。日本政府が、それを率先して破るような真似はできません」

 リサにはそれが無かったので、扱いがまた違ったのだ。
 因みに今は、仮の戸籍を与えられている。
 人間の仮釈放者は保護司との面談を定期的に義務付けられているが、そうではない利恵は違う。
 BSAAが定期的に向かうので、変質のデータを取らせろというものだ。
 見た感じ、特に変質しているようには見えないのだが……。

 愛原:「政治的な理由も絡んでいるようですな。これ以上は、私達が口出しできることではなさそうだぞ、高橋?」
 高橋:「は、はい。そのようっスね……」
 善場:「御理解が早く、助かります。愛原所長方さえ良ければ、途中までお送りしますよ?」
 愛原:「そうですか。では、藤野駅までお願いできますか?」
 善場:「藤野駅ですか?分かりました」

[同日11:50.天候:晴 同市同区内 JR藤野駅→中央本線538M列車6号車内]

 私達はあのBSAAの護送車に便乗して、藤野駅まで送ってもらった。
 やはり、上野利恵は護送車の後部に乗車しているらしい。
 窓も無いような荷物スペースだと思っていたが、馬運車のそれのような小窓が付いているのが分かった。
 しかし、人間の護送車よりも家畜扱いである。
 リサは壁をブチ破らんばかりであったが、リサのような上級BOWでも壊れない構造になっているという。
 それも去ることながら、そんなことし次第、BSAAがリサを攻撃するだろうがな。
 一応、先に利恵が乗っていて、リサからは見えないようになっていた。
 上野姉妹も藤野駅で降りる。

 善場:「それでは私達は、彼女を送って行きます。所長方は、娘2人の方を頼みます」
 愛原:「分かりました」

 1本前なら直通の中央特快があったのだが、残念だ。
 その次の高尾止まりの電車に乗る事にする。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、11時50分発、普通、高尾行きです。この列車は、3つドア、6両です。……〕
〔まもなく2番線に、普通、高尾行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、3つドア、6両です。……〕

 リサ:「先生、お腹空いた」
 愛原:「あー、ちょっと待ってくれな。高尾駅で、特快に乗り換えできる。それで神田駅まで行って、そこで昼食にしよう。それでいいか?」

 神田駅なら、この姉妹達も銀座線で帰れる。
 また、私達も近くに岩本町駅があるから、それで帰れるというわけだ。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、相模湖に停車致します〕

 やってきた電車は往路と同じ、211系の6両編成だったが、ボックスシートの無いオールロングシート車であった。
 取りあえず最後尾に乗り込み、それぞれ空いている席に座った。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 大きなエアー音がして、ドアが閉まる。
 そして、電車はガクンと大きく揺れて発車した。
 このアナログな揺れ方も、昭和末期或いは平成初期に製造された車両だと分かる。

〔「次は相模湖、相模湖です」〕

 上野凛:「あの……先輩。今日は、ありがとうございました」
 リサ:「フン……。わたしは許していない」

 リサは既に第0形態に戻っていたが、明らかに不機嫌だった。
 それでも私の隣に座りたがり、私にくっつくようにして座っていたのだが。
 神田駅まで、昼食がお預けになったというのも不機嫌の理由か。
 本当は高尾山にでも行きたいところだったが、リサの精神状態からして、そんな余裕は無いと分かった。
 ので、都心まで真っ直ぐ帰ることにした由。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「仮釈放?護送?」

2022-09-21 20:22:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日09:51.天候:晴 東京都八王子市高尾町 JR高尾駅→中央本線437M列車6号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の4番線の列車は、9時57分発、普通、松本行きです。この列車は、3つドア、6両です。……〕

 私が先頭車が来る辺りで電車を待っていると、リサ達がやってきて、高橋も合流した。

〔まもなく4番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、3つドア、6両です。折り返し、9時57分発、普通、松本行きとなります。……〕

 普通列車にしては、随分と遠くへ行く列車だ。
 JR東日本の列車というのは、中途半端に走行距離が短かったり、或いは中途半端に長かったりする。
 もちろん、18きっぱーとしては後者の方が良いのだろうが……。

〔「4番線、ご注意ください。普通列車の松本行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください」〕

 私が予想した通り、211系と呼ばれる中距離用の車両が入線してきた。
 ロングシートオンリーの車両かなと思ったが、ボックスシート付きの車両が来た。
 これなら、長野県まで乗って行っても……疲れるか。
 私達は先頭車に乗ったが、私はあえてドア横の2人席に腰かけた。
 高橋も、ホイホイと隣に座って来る。
 リサ達はボックスシートに座った。

〔「ご案内致します。この電車は9時57分発、中央本線下り、普通列車の松本行きです。大月、甲府、小淵沢方面、松本行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 リサ達はまるでこれから遠くまで行くかのように、窓の桟にジュースを置いたり、駅で売っていたであろうお菓子を食べて寛いでいた。
 上野姉妹にとっては、やっとの思いで母親が仮釈放になるのだから、はしゃぐのはしょうがないと思う。
 だが、リサにとってはどうなのかと思うが、あの様子だと大丈夫かな?

[同日09:57.天候:晴 JR中央本線437M列車6号車内]

 発車の時刻になり、ホームから発車メロディが聞こえてくる。
 どうやら、定刻通りに発車できそうだ。
 私はスマホを取り出して、定時連絡を入れることにした。

〔4番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 旧国鉄時代からJR化初期に掛けて製造された車両。
 だいぶ旧型化してきているが、あまり鉄ヲタからの注目度は高くない。
 初期型は旧国鉄時代から製造されているが、その時期があまりにも末期過ぎて、あまり国鉄っぽい所が少ないからだろう。
 また、まだJR東日本やJR東海を始め、亜種の213系という車両等まで含めれば、JR西日本やJR四国にまで残っている為、レア感が無いというのもある。
 とはいえ、何のドアチャイムも無く、大きなエアー音を響かせて開閉する乗降ドアや、その後、発車の際に響いて来るモーター音を聞けば、昔の電車という感じがする。
 尚、JR東海の車両だと、後付けでドアチャイムが付けられている物もある。

〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。9時57分発、中央本線、普通列車の松本行きです。これから先、相模湖、藤野、上野原、四方津、梁川、鳥沢、猿橋、大月の順に、終点の松本まで各駅に停車致します。【中略】次は相模湖、相模湖です」〕

 自動放送が無いのも、今ではレアな感じがする。
 高尾までは、それなりに賑わってていた車窓だったが、高尾駅を出ると、一気に景色は一変する。
 それまでは郊外であっても、まだ大都市近郊区間って感じの雰囲気だったが、高尾から西は一気にローカル線の雰囲気と化す。
 また、トンネルが全く無かった中央快速線だったのに対し、ここからは断続的にトンネルが続く。

 愛原:「よし、送信完了」

 LINEの送信が完了すると、また善場主任から返信があった。
 車で藤野駅まで、迎えに来てくれるらしい。
 それに乗って、研究施設に向かうとのことだ。

[同日10:15.天候:晴 神奈川県相模原市緑区小渕 JR藤野駅]

〔「まもなく藤野、藤野です。お出口は、右側です」〕

 高尾駅から次の相模湖駅までは駅間距離が長く、10分近くも走行する。
 また、相模湖駅で後続の特急の通過待ちで5分停車した。
 たった2駅の距離なのにも関わらず、20分弱も掛かったのは、それが理由だ。
 トンネルが断続的に続くような所では、駅も造れないのだろう。
 で、ようやく下車駅に着いたというわけだ。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野原に止まります〕

 高尾以西は、本当は乗降ドアは半自動となる。
 乗客はドア横のボタンを押して、ドアを開閉させるのだ。
 しかし、昨今のコロナ禍で、車内保温よりも車内換気が優先されたことで、その機能は止められている。
 つまり、高尾以東のように自動ドアというわけである。
 さすがにワンマン列車においては、不正乗車防止の方が更に優先され、半自動ドアは引き続き行われている。

 愛原:「こっちの方が涼しい……という程でも無いか?」
 高橋:「まあ……若干涼しいって感じっスかね。若干」
 愛原:「そうだな」

 まあ、多少は標高のある場所で、しかも近くに相模湖があることから、風が吹けば少しは涼しいのかもしれない。
 平地の少ない場所に造った駅ということもあり、ホームの幅は狭い。
 島式ホームだが、少しでも幅を確保する為、上下線ホームは、やや互い違いになるような構造になっている。
 普通列車しか止まらない駅であり、特急列車はもちろん通過で、この辺りは貨物列車も通過する。
 小さな駅ではあるが、それでも駅員が配置されているし、まだSuicaやPasmoが使える自動改札機が設置されている。
 またまだ都内への通勤圏なのだと分かる。
 正直、私はここから通勤したいとは思わないが。

 善場:「お疲れ様です。愛原所長」

 自動改札機を通って、駅の外に出ると、スーツ姿の善場主任が待っていた。

 愛原:「あっ、善場主任、お疲れさまです」
 善場:「無事に彼女達を連れて来てくれたようですね。では、早速向かいましょう。車に乗ってください」
 愛原:「ありがとうございます」

 駅前の広場に行くと……。

 愛原:「こ、これは……!」

 中型の観光バスに、赤色灯が付いた車が止まっていた。

 高橋:「護送車じゃないっスか!」
 善場:「その通りです」

 しかも、警察の護送車ではなかった。
 バスの車体はくすんだ緑色に塗られており、後ろ半分には窓が無い。
 まるで、荷物を載せるスペースのようである。
 バスに乗り込むと、前半分は普通の内装だった。
 しかし、後ろ半分の所へ行こうとすると、頑丈なドアがある。
 BSAAの護送車であった。
 なので、運転席にはBSAAの軍服を着た職員が座っている。

 愛原:「善場主任、もしかして、この奥にあの人を……?」
 善場:「はい。現地に着くまでは、油断できませんから」
 愛原:「はは……」

 バスは研究施設に向かって走り出した。
 仮釈放といっても、人間のそれとはだいぶ違うのだなと改めて思い知らされる。

 リサ:「わたしも暴れたりしたら、後ろに乗せられる?」
 善場:「場合によっては、そうなるかもね」
 リサ:「わー……」

 リサはヒくような反応をした。
 仮釈放というよりは、ただの護送のような気がする。
 聞いた話では、仮釈放の後は栃木のホテル天長園に戻るようだが……。
 そこまで、このバスで向かうのだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「夏休み前の3連休」

2022-09-21 16:06:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日08:15.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅日本橋口→東京駅構内]

 私達は自宅からタクシーで、東京駅に向かった。
 都営バスの東20系統が廃止されて以降、タクシーに乗る機会が増えたような気がする。
 もっとも、今回は車で行けたところを、高橋が免停食らったせいというのもあるんだがな。
 また、今日はデイライトさんからの仕事の依頼ということもあり、タクシー代は後日請求できる。
 忘れてはいけないのが、リサの存在。
 欧米なら、車で送迎されるほどの存在なのである(VIP待遇ではなく、監視の為)。

 愛原:「すいません、タクシーチケットで……」
 運転手:「はい、どうぞ」

 タクチケで料金を払っている間、リサは先に降りる。

 リサ:「リンとリコ」

 日本橋口、丸の内中央ビル正面エントランス前で上野姉妹が待っていた。
 2人とも、制服姿である。
 それに対して、リサは私服。
 リサとこの姉妹の、これからの動きに違いがあるからである。

 愛原:「よし、お待たせ」
 上野凛:「おはようございます!今日はよろしくお願いします!」
 愛原:「ああ、よろしく」
 上野理子:「よろしくお願いします」
 愛原:「よろしく。一緒に行くだけだから、大したことないよ」

 今回の私の任務は、ただの引率者だ。
 何しろ、本物のBOW1人と半BOWが2人いるんだからな。
 多くの人で賑わう駅構内に入って行く。

 愛原:「SuicaやPasmo、ちゃんとチャージされてるか?」
 凛:「はい、大丈夫です」
 高橋:「オケッす!」
 リサ:「片道だけOK」
 理子:「片道ィ?」
 高橋:「リサだけ帰りは歩いて帰るんだとよ」
 理子:「ほーほー」
 愛原:「……後でチャージしてやるよ」
 リサ:「おー!」

[同日08:39.天候:晴 JR東京駅・中央線ホーム→中央快速線893T電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、8時39分発、中央特快、高尾行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、神田に停車致します〕
〔この電車は中央線、中央特快、高尾行きです。停車駅は神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿、中野、三鷹、国分寺、立川と立川から先の各駅です〕
〔「お待たせ致しました。信号が変わりましたので、発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 まずは中央特快に乗り、高尾駅に向かう。
 そこから、中央本線の普通列車に乗り換えて、藤野を目指すという大したことの無い計画だ。
 で、藤野駅には善場主任達が迎えに来ている。
 ホームから、賑やかな発車メロディが響いて来た。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車は1~2分遅れで東京駅を発車した。
 どうも、私達が乗る前に、どこかの駅で安全確認を行った影響らしい。
 まあ、この程度の遅れなら大勢に影響は無い。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は中央線、中央特快、高尾行きです。次は神田、神田。お出口は、右側です。地下鉄銀座線は、お乗り換えです〕

 電車が発車すると、私は揺れる車内で善場主任にLINEを送った。
 これが定時連絡。
 東京駅を1~2分遅れで発車した旨も伝えておく。
 この程度では、高尾駅での乗り換えには影響が無いことも添えておいた。
 すぐに返信が来て、特に何か指摘されるようなことはなかった。
 強いて言うなら……。

 善場:「承知しました。安全最優先で宜しくお願いします。今回は現地において、リサの暴走が想定されます。十分、ご注意ください」

 とのこと。
 リサが暴走するかも、というのはどういうことか。
 今回の旅の目的は、藤野の国家機関直営研究施設に収容されている、上野姉妹の母親の仮釈放手続きである。
 リサが一番怒りを感じており、生きて収容すら許さない。
 処刑すべきという考えを辞していなかった。
 それが仮釈放とは、どういうことかという思いで一杯なのである。
 実際に襲われた私としては、この件に関してはデイライトさんに一任することにしている。
 そのデイライトさんが仮釈放だと決定したのだから、致し方無い。
 もっとも、彼女の刑期……というか、そもそもの収容期間自体、私は知らされていないのだ(強いて言うなら、『不定期的無期』。基本的には『無期』だが、場合によっては有期に切り替えるというもの)。
 BOWの扱いは人間の犯罪者とは、全く別である為。

 愛原:「いいか、リサ?今回はデイライトさんの決定によるものだ。オマエはもちろん、俺も口を挟むことは許されない。オマエの怒りはもっともだが、けして勝手なことをしないように。分かったか?」
 リサ:「……何度も聞いたよ」
 愛原:「高橋もだ」

 リサの次に怒りが強かったのは、高橋である。

 高橋:「分かってますって。先生に御迷惑は、お掛けしませんよ」

 そう言いつつ、昨夜は手持ちのマグナムに銃弾を一杯に詰めていたのを私は見ている。

[同日09:37.天候:晴 東京都八王子市高尾町 JR高尾駅]

〔まもなく終点、高尾、高尾。お出口は、左側です。中央本線、大月、甲府方面と京王線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 電車は途中で回復運転できたのか、高尾駅に着く頃には定時に戻っていた。

〔「今度の中央本線下り、普通列車の松本行き、4番線から9時57分の発車です。京王高尾線は、一旦改札口を出てからのお乗り換えとなります。……」〕

 リサ:「少し時間ある?」
 愛原:「そうだな。一服でもトイレ休憩でも、行ってきていいぞ」
 リサ:「分かった」

 電車は車止めのある1番線に到着した。
 つまり、東京方向からの折り返しなどに使われるホームということである。

〔たかお~、高尾~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 ここで電車を降りる。
 乗客の多くは、京王線方面に向かって行った。
 東京の観光地で有名な、高尾山に行くのだろう。
 今日は天気も良いので、絶好の登山日和と言えるかもしれない。

 高橋:「先生はどうされるんです?」
 愛原:「俺は4番線に行くよ。一服したいなら、行ってこいよ」
 高橋:「サーセン」
 凛:「先輩、私達、トイレに行きますけど、どうします?」
 リサ:「わたしは先生と一緒に行く。乗り換える電車には、トイレ付いてるでしょ?」
 愛原:「あるけど、211系のトイレじゃ、和式だろうな」
 リサ:「凛達と行ってきまーす」

 和式はなるべく使いたくないリサだった。
 アンブレラの研究所で、実験と称して公開排泄を和式トイレでやらされたからだろう。
 というわけで、高橋は喫煙所に、3人のBOW少女達はトイレに、私は乗り換え先の4番線に向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「夏休みを迎える前」

2022-09-19 20:16:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月27日16:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 リサ:「ただいま」

 リサが学校から帰って来た。

 愛原:「おっ、お帰り」
 リサ:「今日ね、学校で進路相談があったんだよ」
 愛原:「え?」
 高橋:「おい、まさか『先生と結婚するので、進学も就職もしません』とか言ったんじゃないだろうな?」
 リサ:「そう言いたかったんだけど、多分それはNGだと思うから、『進学』にしておいた」
 愛原:「善場主任も、それを気にしてるんだよ。じゃあ、善場主任には『進学』って言っておくからな?」
 リサ:「うん」
 愛原:「因みに進学するとして、どこの学校に行きたいとかあるのか?」
 リサ:「うーん……。なるべく近い所の方がいいなぁ……」

 管理の都合上、リサは独り暮らしができない。
 なので遠方の大学に進学して、独り暮らしができないのだ。

 リサ:「やっぱり附属の東京中央学園大学、かなぁ……」
 愛原:「東中大か……。どこにあるんだっけ?」
 リサ:「池袋。高校の池袋校舎のすぐ近くにあるんだよ」
 愛原:「そうかぁ」

 東京中央学園の高等部はいくつかある。
 リサの通っている上野高校は、主に普通科と英語科。
 池袋高校は工業科と商業科がある。

 愛原:「まあ、ブクロならここから通えるな」
 リサ:「そうだね」

 都営新宿線と東京メトロ丸ノ内線だな。
 小川町駅で乗り換えできるはずだ。

 高橋:「附属だと受験しなくていいんじゃねーのか?」
 リサ:「推薦入試だけだって」
 愛原:「ということは、普段の成績と、先生からの評価が大事だな」

 リサはそんなに成績は悪くないから大丈夫だろう。
 未だに赤点を取ったことがないのだから。
 問題は、素行か……。
 いや、別に不良ってわけじゃないのだが、いじめっ子気質が問題視されたことがある。

 愛原:「リサ、イジメ、ダメ、絶対!いいな?」
 リサ:「……し、してないよ」
 高橋:「嘘つくな、コラァッ!」

 と、そこへ、事務所の電話が鳴った。

 愛原:「静かにしろよ。……はい、愛原学探偵事務所です」
 坂上:「あ、愛原さんの事務所ですか?私、東京中央学園上野高校の坂上修一と申します」
 愛原:「あっ、坂上先生!いつもリサがお世話になっております」
 坂上:「こちらこそ、どうも……。御自宅にお電話しましたら、こちらの番号に転送されましたもので……」

 今、自宅には誰もいないので、自宅に掛かって来た電話は、この事務所に自動転送されるように設定してあるのだ。

 愛原:「そうんですよ。今、自宅には誰もいないものですから……」
 坂上:「リサさんもいませんか?」
 愛原:「リサなら、もう帰って来てますよ?」
 リサ:「ヤバッ!」

 リサ、慌てて事務所から出ようとする。
 だが、それを高橋が羽交い締め。

 高橋:「待てや、コラ!脱走は銃殺だって、アンブレラの時から言われてたそうだなぁ!?」
 リサ:「ここ、アンブレラじゃないし!」
 愛原:「あー、すいません、賑やかで……。それで、うちのリサに何の御用でしょうか?」
 坂上:「他のクラスの生徒から、『リサさんにイジメられた』という被害報告がありましたので、後ほど3者面談をと思いまして……」
 愛原:「大変、申し訳ございません!」
 リサ:「ちょっと、老廃物をもらっただけだよぉ!?」
 高橋:「ダサくチクられてんじゃねーよ、バーカ!もっとチクらなさそうなヤツを選べよな、あぁッ!?」
 リサ:「ちょうどいい匂いの経血垂らしてたヤツがいたんだよ!」
 高橋:「知るか!」
 愛原:「……はい、それでは後日ということで……。はい、承知しました。……はい、失礼致します」

 私は電話を切った。

 愛原:「……リサ、オマエ後で説教な?」
 リサ:「ぴっ!?」
 高橋:「けっ、ざまぁみろwww」

 と、そこへまた電話が掛かって来た。

 愛原:「はい、愛原学探偵事務所です」
 警察官:「こちら、警視庁○×警察署交通課の者ですが……」
 愛原:「……すぐに出頭させます!申し訳ございません!」

 また、電話を切る。

 愛原:「高橋ィ!オマエはオマエで、また警察の停止命令を振り切って逃げたんだってなぁ!?」
 高橋:「ぴっ!?」
 愛原:「さっさと出頭しに行ってこーい!」
 高橋:「は、はいぃぃぃっ!」
 リサ:「ぷwww」

[7月15日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 それからしばらくは、何も起きなかった。

 愛原:「明日からの3連休だが、上野姉妹を藤野まで連れて行くという任務がある」
 高橋:「ただのボランティアっスよね?」
 愛原:「まあ、そう言うな。今回は善場主任も合流するから、ちゃんとした仕事も含まれてるぞ」
 高橋:「そうっスか……」

 藤野の研究施設に収容されている上野姉妹の母親を、仮釈放にするかどうかを決めるという。
 リサは猛反対している。
 私を食おうとしていたことは、絶対に許さないという。
 なので、上野姉妹は連れて行くが、リサは連れて行かないという選択肢もあった。
 だが、それはリサが許さないだろう。
 ハブられたという感が強いからだ。
 それと、もう1つ問題があった。

 愛原:「また免停食らいやがって、この野郎!」
 高橋:「ら、来週末には解除されますんで……」
 愛原:「そういう問題じゃねぇ!」

 というわけで、電車で行くことになりそうである。

 愛原:「リサの夏休みは、絵恋さんを連れて仙台に行こうと思ってる」
 高橋:「えっ、先生の帰省なのに?」
 愛原:「公一伯父さんを覚えてるだろう?」
 高橋:「ああ。結局、アンブレラと繋がってた人ですね」
 愛原:「その伯父さん、起訴猶予処分になったんだよ」
 高橋:「えっ、じゃあ無罪放免ですか?」
 愛原:「無罪ってわけじゃないな。逮捕歴と前歴は残るわけだし……」

 前科ではなく、前歴である。

 愛原:「元々伯父さんが開発した化学肥料は、本当に化学肥料のつもりで開発したものだ。それを日本アンブレラ、特に白井伝三郎が悪用する為に伯父さんから譲り受けただけに過ぎない。結果的に伯父さんは日本アンブレラに加担した罪で逮捕されたわけだけども、そういった所が考慮されて、起訴猶予になったんだ」

 年齢的なものもあるし、本当に化学肥料のつもりで作ったもので、最初から日本アンブレラに悪用されることを想定して作ったわけではないということで。
 ただ、あの時点で日本アンブレラの悪い噂は知っていたはずだし、悪用されるかもしれないということは想定できたのにも関わらず、譲り渡してしまったということで逮捕はされた。
 しかし、起訴とはならず、起訴猶予となったわけである。

 高橋:「今、どこに住んでるんです?あの……宮城の元公民館は無くなりましたよね?」
 愛原:「ああ。別の所に住んでるよ。ちょっとその伯父さんを訪ねてみようと思うんだ。もしかしたら、色々と知ってるかもしれないしね」
 高橋:「そうですか」
 愛原:「来週末には免停解除だろ?向こうに行ったら車は必須になるから、また運転頼むわ」
 高橋:「お任せください!」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「今後について」

2022-09-19 16:38:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月27日13:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は報告と打ち合わせで、大型クライアントであるNPO法人デイライトさんの東京事務所にやってきた。
 コロナ禍で軒並み探偵事務所が潰れて行く中、こうした大型クライアントが付いた私はとてもラッキーなことである。
 本当なら他にも斉藤元社長からの定期的な仕事の依頼(という名の雑用)があったのだが、これは無くなってしまった。
 だから、今はデイライトさんの仕事が本当にありがたいのである。
 もっとも、デイライトさんとしては、有名な大手事務所より弱小零細事務所の方が、何かあった時に切り捨てやすいという政治的な理由もあるようだが……。
 デイライトさんとて、NPO法人は隠れ蓑で、その実は日本政府の防諜機関であると思われる。
 そして善場主任は、バイオテロ対策に特化した業務を請け負っているようである。

 善場:「お疲れさまです、愛原所長」

 私と高橋は、事務所の応接会議室へと通されていた。

 愛原:「善場主任、お疲れさまです。こちら、昨日の事件の報告書になります」
 善場:「ありがとうございます。拝見します」

 主任は書類に目を通した。

 善場:「広域暴走族“極東戦線”の構成員が、件のBOWを連れて来たのですね?」
 愛原:「はい、間違いありません。そして、新潟支部長の金田某……恐らく、在日朝鮮人のキムというのが本名でしょうが、彼が変異間際、『騙された』と言っていました」
 善場:「新潟県警にも問い合わせました。確かに、“極東戦線”は在日コリアンの構成員が多いそうです。そして、それは今、とても重要なことです」
 愛原:「と、仰いますと?」
 善場:「極東戦線は北朝鮮にも通じていると見られ、あのBOWは北朝鮮から持ち込まれたものかもしれないのです」
 愛原:「何ですって!?」
 善場:「本来ならBSAAが介入する案件なのでしょうが、北朝鮮はBSAAの活動を一切承認していません。その為、BSAAの介入が非常に難しい状態なのです」
 愛原:「それは困りますね。実際、ああして日本に持ち込ませたのですから」
 善場:「もちろん日本国内に入った分にはBSAA極東支部日本地区本部もしくは、日韓合同部隊の介入があります。昨日もそうでしたよね?」

 尚、韓国地区本部隊が単独で日本国内で活動するのは、さすがに日本政府は承認していない。
 活動したい場合は、日本地区本部隊との合同という形を取らなくてはならないことになっているそうだ。

 善場:「北朝鮮から持ち込まれたものと判明した場合、日本政府として北朝鮮に強く抗議します」
 愛原:「それだけか……」
 高橋:「だったら、BSAAの活動を承認しない方がいいのかよ……」
 善場:「国際的な信用を得られるかどうかにも関わりますから、そういうことではないんですよ。例えば国連の常任理事国は、全てBSAAの活動を承認しなければならないことになっていますからね」
 愛原:「つまり、あのロシアもってことになりますね」
 善場:「そうです。2011年にロシア領の孤島でバイオハザード事件がありましたが、BSAAが介入しました。もちろん、ロシア政府が特にそれに対して妨害とか、そういうことはしていません」
 愛原:「なるほど」
 高橋:「それで姉ちゃん、どうするんだ?極東戦線は……」
 善場:「各県警に対して、極東戦線の構成員を拘束するように申し伝えます。叩けば埃が出て来る人達ばかりでしょうから、それで逮捕できるでしょう」
 愛原:「別件逮捕ですね」

 “はんごろし”に集まった極東戦線のメンバー達は全滅したが、全員があそこに集まったわけではない。
 新潟支部は壊滅状態になっただろうが、近県の支部はまだ残っているはずである。
 そこをデイライトのバックにいる政府機関が、各県警に対して圧力を掛け、メンバー全員を何でもいいから逮捕するようにさせるわけだ。
 それこそ、暴走族なら当たり前の交通違反でも逮捕ってことにするのかな。

 高橋:「極東も終わったな……」
 愛原:「しかし、どうして一暴走族の団体がBOWなんか掴まされたんですかね?」
 善場:「それはこれからの調査で明らかになると思います。あくまでも、私個人の見解で宜しければ……。極東戦線のメンバ―の多くは在日コリアンだということは分かっています。しかし、中には韓国ではなく、北朝鮮にルーツのあるメンバーもいるでしょう。特に、新潟はそういうのが多いですから。どういった方法かは不明ですが、恐らくはメンバーの中に朝鮮総連に直接通じている者がいて、そこからBOWを預かるように伝えられたのではないでしょうか。そして、実際に指示があったのかどうかも不明ですが、そのBOWを件の現場で使用した。そういう事ではないかと思います」
 愛原:「なるほどねぇ……。主任のその見解がピッタリ大正解だったとして、北朝鮮の意図は何でしょうか?」
 善場:「日本側の防衛体勢がどうなのか見る為とか、BSAAの介入方法とか、そういうのを見る為なのかもしれません」
 愛原:「じゃあ、どこかで北朝鮮関係者があの現場を見ていたというわけですか」
 善場:「その可能性は十分考えられます。所長の周りで、怪しい人物とかはいませんでしたか?」
 愛原:「いやあ、ちょっとそれは……気が付かなかったですねぇ……」
 高橋:「姉ちゃん、あの時は修羅場で、とてもそんなことに気づける状態じゃねーよ」
 善場:「そうですか……」

 一瞬マスターかと思ったが、彼もまたゾンビに食い殺されて、自分もゾンビになってしまっている。
 工作員なら、そんな危ない所にはいないだろう。
 取りあえず、一民間探偵業者としては、ここまでが仕事のようだ。
 後は公的機関の仕事になる。
 そこから話は変わって……。

 愛原:「あと一月足らずでリサの学校は夏休みですが、沖縄に転校した斉藤絵恋さんが上京したいそうです。まあ、目的はリサとの再会でしょうが……」
 善場:「それは構いませんよ。こちらとしても、斉藤容疑者の娘に聞きたいことがありますので、ちょうど良い機会です」
 高橋:「リサとの再会の前に、姉ちゃん達の尋問か。トボけてるようなら、ビシバシ拷問するわけだな」
 善場:「拷問は日本国憲法で禁止されています」
 高橋:「いざとなったら、女子少年院へゴーか。残念だな」
 愛原:「絵恋さんが直接何かしたわけじゃないだろう?」
 善場:「それと、所長にもお伺いしたいのですが……」
 愛原:「何でしょう?」
 善場:「リサも高校2年生になりまして、そろそろ進路を決める時期だと思うのです。リサはどうしたいか聞いていますか?」
 愛原:「私と結婚したい、と……」
 善場:「それはリサが人間に戻れたらの話だと何度も言っているはずです。恐らく高校在学中は、それは難しいと思いますので、就職か進学かの希望を聞いておいてください」
 愛原:「分かりました」
 高橋:「体型だけなら、相変わらず中学生のまんまなんだけどな」
 善場:「それは仕方ありません。Gウィルスの作用で、成長ホルモンに大きな影響が出てしまうからです。私やアメリカのシェリー・バーキン氏も同じです」

 善場主任の体型は平均的なものである。
 それは、アンブレラに捕まって実験をされた時点で、もう大学生だったからだろう。
 大学の特別講師を隠れ蓑にしていた白井伝三郎に目を付けられたのが運の尽きであった。

 善場:「それでも少しずつ成長はしているはずなので、いずれは大人の体型になれるとは思います」
 愛原:「それは確かに。さすがに、アンブレラの研究所で着せられていたセーラー服はもう着られなくなりましたしね」

 取りあえず、後でリサに今後の進路のことについて話してみよう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする