たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

須賀敦子の著作に出会う「ミラノ 霧の風景」<1>

2011-02-12 10:38:29 | 須賀敦子の著作

昨秋から須賀敦子の作品に惹かれて、
「コルシア書店の仲間たち」「ミラノ 霧の風景」「ヴェネツィアの宿」「トリエステの坂道」と読んできた。

「ミラノ 霧の風景」を2度目を読み終えた。
知の海を哀切な感性で昇華するイタリアの追想。
この作品は須賀が13年間余りイタリアで暮らし、「コルシア書店」で出会ったペッピーノ氏と結婚、
わずか4年で夫と死別、42歳で帰国して20年。平成2年、61歳になって刊行した最初の著作、
女流文学賞、講談社エッセイスト賞を受賞した。



イタリアで暮らして、出会った人たち、歩いた街角、
旅した北伊の町、夫とともに読み、訳した文学作品、詩篇……、その思い出を清冽な文章で綴る。
その1行、1節には恐ろしいほど「知の塊」が詰まっている。
その知性が、数行ごとに女性でなければ絶対に書けない、
透明な感性となって詩のような文が魅了する。



思い出の人たち、街や旅、文学を語るとき、いつも行間には夫への追憶が重なる。
須賀は1行、1節ごとに夫との時間を生き直していた。
その時間を満たすのは、イタリアの北の辺狭の国境の町・トリエステへの想い。
その町に生きた詩人で、夫が好きだったサバの詩篇が何回も引用される。
「あとがき」に引用されているサバの詩です。

「死んでしまったものの、失われた痛みの、
 ひそかなふれあいの、言葉にならぬ
 ため息の、
 灰。」
 (ウンベルト・サバ 《灰》より)

たにしの爺、イタリア映画は幾本が見ているが、
須賀敦子の著作を読んで、初めて知った、イタリアの文学作品、詩人。
英文学、仏文、獨文は耳にするが、伊文・イタリア文学はあまり聞かない。
最近のイタリアのニュースは、永友選手のミラノインテル移籍がすごい。
(未完)