昨秋から須賀敦子の作品に惹かれて、
「コルシア書店の仲間たち」「ミラノ 霧の風景」「ヴェネツィアの宿」「トリエステの坂道」と読んできた。
「ミラノ 霧の風景」を2度目を読み終えた。
知の海を哀切な感性で昇華するイタリアの追想。
この作品は須賀が13年間余りイタリアで暮らし、「コルシア書店」で出会ったペッピーノ氏と結婚、
わずか4年で夫と死別、42歳で帰国して20年。平成2年、61歳になって刊行した最初の著作、
女流文学賞、講談社エッセイスト賞を受賞した。
イタリアで暮らして、出会った人たち、歩いた街角、
旅した北伊の町、夫とともに読み、訳した文学作品、詩篇……、その思い出を清冽な文章で綴る。
その1行、1節には恐ろしいほど「知の塊」が詰まっている。
その知性が、数行ごとに女性でなければ絶対に書けない、
透明な感性となって詩のような文が魅了する。
思い出の人たち、街や旅、文学を語るとき、いつも行間には夫への追憶が重なる。
須賀は1行、1節ごとに夫との時間を生き直していた。
その時間を満たすのは、イタリアの北の辺狭の国境の町・トリエステへの想い。
その町に生きた詩人で、夫が好きだったサバの詩篇が何回も引用される。
「あとがき」に引用されているサバの詩です。
「死んでしまったものの、失われた痛みの、
ひそかなふれあいの、言葉にならぬ
ため息の、
灰。」
(ウンベルト・サバ 《灰》より)
たにしの爺、イタリア映画は幾本が見ているが、
須賀敦子の著作を読んで、初めて知った、イタリアの文学作品、詩人。
英文学、仏文、獨文は耳にするが、伊文・イタリア文学はあまり聞かない。
最近のイタリアのニュースは、永友選手のミラノインテル移籍がすごい。
(未完)