たにしのアブク 風綴り

87歳になります。独り徘徊と追慕の日々は永く切ない。

トルコ映画「蜂蜜」 癒されて、疲れ果てる

2011-08-20 09:54:07 | 劇場映画

幻想的な森の樹間に霧が流れている。
小枝のきしむ音。
梢の葉のそよぎ。
小鳥のさえずり。

落葉や枝を踏みしめる音がする。
蜂の羽音が一段と強まってくる。
ロバを連れた一人の男が現れる。
時の気配がまるで止まっている。
この映画には音楽が付いてない。




銀座テアトルシネマで観ました。
第60回ベルリン国際映画祭で「金熊賞」を獲得した、
トルコ映画「蜂蜜」
監督はトルコのセミフ・カプランオール。



トルコの森に暮らす親子の物語です。
父が蜂蜜を採って生計を立てています。
6歳のユスフ(ボラ・アルタシュ)は、
父・ヤクプ(エルダル・ベシクチオール)と一緒にいる時間が大好きです。
そんな二人を、寡黙な母親・ゼーラ(トゥリン・オゼン)は見守るばかりです。

ある日、森の蜜蜂が一斉にいなくなってしまった。
父が蜂蜜を採りに行ったまま帰ってこない。
話すのが苦手だったユスフは、学校の授業でも口をきかなくなります。



音楽もなく、極端に少ないセリフ、場面展開の唐突さ。
断片的に描かれる人の営み、暗示的なシーン。
森の静寂さを主題に、監督の映像的こだわり。

暗示的なストーリー、時間をつなぐ森の表情。
ユスフが巨木の幹に寄り掛かり、目を閉じる。



暗転するスクリーンに、
音もなくトルコ語のエンドローグが流れる。