たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

《モナ・リザ》と《聖母》がいっぱい。「レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想」東京展

2012-05-03 10:49:21 | 展覧会・美術展

萌える新芽と新緑が眩しい季節になっています。
カラマツ林の裸枝を芽吹きが、青点となって連なっています。
連休が終わるころになると、カラマツ林が繊細な青のカーテンにつつまれます。

痛ましい事故や事件が続いています。
危機管理を置き去りにした格安社会が招いた、人災のような運命の暗転です。

何処にも行かない、たにしの爺は、せめてもの芸術鑑賞にと、
東京は渋谷の東急Bunkamuraのザ・ミュージアムに行ってきました。
イタリア・ルネサンス期の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)と弟子らの作品を集めた美術展。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想」東京展(毎日新聞社など主催)が開かれています。
人類史の科学と美の巨匠ダ・ヴィンチの生の作品に初めて対面してきました。

写真はザ・ミュージアム脇のレストラン「ドゥ マゴ パリ」
パリを代表するカフェの歴史と空気をそのままに、
美術鑑賞の後は、ひとときを「ドゥ マゴ パリ」で……

<展覧会のパンフレット>によりますと―――――
《モナ・リザ》や《最後の晩餐》など世界的な名画を残した巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの「美の系譜」に焦点を当て、ダ・ヴィンチの作品、弟子との共作、弟子やレオナルド派と呼ばれる画家たちによって描かれた約80点もの作品、資料を通じてダ・ヴィンチの創造した「美の理想」の真髄に迫るものです。
十数点しか現存しないといわれているダ・ヴィンチの作品のうち、日本初公開となる円熟期の傑作《ほつれ髪の女》や若き日の習作《衣紋の習作》、プライベート・コレクションのため、あまり目にする機会のないもう一つの《岩窟の聖母》が一堂に、また、ダ・ヴィンチから強く影響を受けた弟子の作品、構成の画家たちによるさまざまな《モナ・リザ》など、出品作品の約9割が日本初公開となる本展は、ダ・ヴィンチの魅力を存分に堪能できるかつてない展覧会です。―――――――――と記されています。

ダ・ヴィンチといえば《モナ・リザ》と《聖母》ですね。
本物の《モナ・リザ》はパリ・ルーブル美術館門外不出の世界の至宝です。
この他にもダ・ヴィンチの作ではないか、といわれている《モナ・リザ》が描かれていることを知りました。
今回それらしき作品と、弟子らが、あるいは同時代の画家たちが制作したいくつもの《モナ・リザ》群が展示されたいました。
裸の《モナ・リザ》も何点もあり、あの謎の微笑をたたえたモナ・リザが乳房をむき出しの裸身で描かれています。
想像してみて下さい。かなりエロチックです。
《聖母》像といえば、《岩窟の聖母》も今回初来日とのことです。
聖母像は、中世西洋絵画の一大テーマで何万点もの、有名無名の数で数え切れないでしょう。

日本初公開となる《ほつれ髪の女》は、厚さ1・1センチの板に描かれたダ・ヴィンチの円熟期の傑作で、イタリアのパルマ国立美術館が所蔵する作品で、今回を含め国外出品されたのは7回目という。
ルネサンス期のイタリア・フィレンツェでは、ダ・ヴィンチを中心にした工房で、衣のひだを素描する訓練が行われ、美しい衣紋を描くことは画家の必須になっていて、美しく描くことが競われていたようです。ダ・ヴィンチは、あたかもそこに人体があるかのように衣紋を描く。その貴重な《衣紋の習作》品も2点紹介されています。

西洋絵画を見るたびに感心する、薄衣を纏う、ひだの美しさには驚かされています。
絵筆で描いたとは、とても思われない細密・精緻な透明感。今にもひらひらとそよぐような感覚に捉われるのは私だけではないでしょう。

展覧会の見所についてはここで詳しく知ることが出来ます。 
先月4月に、元東京大学教授で、国立西洋美術館館長だった西洋中世史、西洋文化史が専門の樺山紘一さんの講演会を拝聴する機会がありました。
樺山さんが美術館と所蔵作品について強調されたことは、世界の一級作品というものは、その美術館に収まるまでには相応の理由があって、その美術館にずーっと在ることに意義がある。そういう作品は世界の有名美術館には必ず在る。そのことが大事なんですと話されました。
それは樺山さんだから言えることでしょうが、そこに行かなくとも見られる、新聞社など企画展は大いに評価されていい。個人では、決して目にすることが出来ない秘宝を鑑賞できるのは、関係新聞社の事業部の交渉力によるものです。署名入り記事など、新聞記者は普段から目立ちますが、こうした催事企画を担う学芸担当記者は、普段は目立ちませんが、普段から培ってきた確かな目がこうした展覧会を成功させるのでしょう。