たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

ジャンヌ・モローが凄い――映画「クロワッサンで朝食を」

2013-09-25 11:16:09 | 劇場映画

「エストニアで母を看取ったばかりのアンヌに、
パリでの家政婦の仕事が舞い込む。
悲しみを振り切るように、憧れのパリへ旅立つアンヌ。
しかし、彼女を待ち受けていたのは、
高級アパルトマンに独りで暮らす、毒舌で気難しい老婦人フリーダだった。
フリーダはおいしいクロワッサンの買い方も知らないアンヌを、冷たく追い返そうとする。
アンヌを雇ったのは、近くでカフェを経営するステファンで、
フリーダは家政婦など求めてはいなかったのだ。
だが、遠い昔エストニアから出てきたフリーダはアンヌに、
かつての自分を重ね、少しずつ心を開いていく。
やがてアンヌは、フリーダの孤独な生活の秘密を知るのだが──。」



孤独で気難しい老女・フリーダを演じるのは、フランス映画界の至宝、85歳のジャンヌ・モロー。
アンヌを演じるのは、エストニアの個性派女優ライネ・マギ。ジャンヌに「彼女は、まさに発見です」と言わしめたという。
オフィシャルサイト「作品紹介」から>
原題「Une Estonienne a Paris」



映画はエストニアの街。暗い雪の夜道から始まります。
そして主舞台はパリの高級アパルトマンに移ります。
そこにはエトルリア出身でありながら、
超気難しい金持ちのパリジェンヌ老女(ジャンヌ・もロー)が住んでいます。



ジャンヌ・モローと言えば、爺にとっては伝説の大女優です。
学生時代、新宿の伊勢丹前にあった「京王名画座」で、
ヌーべル・バーグ全盛期のイタリア映画「道」「ひまわり」、
フランス映画の「現金に手を出すな」「死刑台のエレベーター」
「危険な関係」「雨のしのび逢い」など、
ルイ・マル、トリュフォー監督の「モロー映画」を毎週のように見ていたものです。
いま思えば、爺には映画しかなかった時代でした。



若いジャンヌ・モローは美しい、きつい怖い感じの顔で、
あまり笑顔になることはなかったように思います。
半世紀を超えて85歳になっても主演を張る大女優。
端正な顔貌も年を摂るとこうなるのかという、貫禄と凄みはさすがです。
そのモローがお洒落して、怖い目でにらみ、頑固で暴君のような演技は圧巻です。



その怖いフリーダの許に、
家政婦としてエストニアからやってきたアンヌ(ライネ・マギ)がいいですね。
「家政婦を頼んだ覚えなどない」というフリーダのけんもほろろのあしらいに戸惑い。
スーパーで買ってきたクロワッサンを投げつける。コーヒーカップ打ち付ける。
その度にアンヌは戸惑いの表情で立ち尽くす。
その表情が、なんとまあ(突然淀川調に)いいですね。困った人だという思いと、
その孤独な姿への愛しさと。



アンヌにとっても、
故郷での肉親の喪失と寂寥さが身に染む思いが重なるのでした。
若いころからあこがれていたパリの暮らしでしたが、
しかし日々はほろ苦く孤独に耐え、寂しさを夜のパリ見物で紛らす。
やがて、ブーツとズボンだったアンヌがミニスカートで待ち歩きをするようになります。
さあ、フリーダとアンヌの関係は、どんな事件があったのでしょうか。



映画にはもう一人、重要な登場人物が絡みます。
アンヌをスカウトし空港に迎えに出た、
カフェを経営するステファン(パトリック・ピノー)です。
フリーダを癒してやれるのはこの男です。
ストーリーの大部分はこの三人で終始します。



老境のセックスについてもフリーダから、あからさまに発しられ、
アンヌ「私は愛した人としかしません」。
フリーダには、奔放だったセックスの思い出は、
85歳のいまも重要な要素なのでした。

7月20日から公開された「クロワッサンで 朝食を」、
メディアでもいろいろ紹介され、特に中高年の女性から支持され、
大変な興行成績を上げているという。
この時期になると広い劇場でしたが、さすが満席とはならず、
かなりの空席がありました。



はじめて行ったシネマタウンで映画を見ました。
舞浜の東京ディズニーリゾートのシネマイクスピアリ。
舞浜駅からチケット売り場まで、
爺にはまばゆいおとぎの国のような空間が続いていました。
順路を聞くたびにさすがディズニーの施設らしく、
笑顔で「こんにちは」親切に教えてくれました。