![]() | ゼロの迎撃 (「このミス」大賞シリーズ) |
クリエーター情報なし | |
宝島社 |
【内容紹介】
59万部突破『生存者ゼロ』の『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家が放つ最新作!「いまそこにある危機」を徹底的に活写!国を守るとはどういうことかーー根源的な命題を日本人に問いかける衝撃の傑作エンターテインメント!
【あらすじ】
活発化した梅雨前線の影響で大雨が続く東京を、突如謎のテロ組織が攻撃する。明確な他国からの侵略と断定できないなか、政府は警察権で制圧を図るが、多数の死傷者を出す。首相はついに、自衛隊の出動を決断。しかし、精鋭部隊の第1空挺団が敵の策謀にはまり、壊滅状態にー。緊急事態に、敵の正体を追う自衛隊総合情報部所属の情報官・真下は、敵が核を持ち込んでいる情報もつかみ、奔走するが…。(「BOOK」データベースより)
「生存者ゼロ」に続く安生正の二作目の作品である。これも息をつかせぬ大型エンターテイメント作品となり読みごたえがあった。ただ、面白いというよりも、今そこにある危機とも言っていいような内容だけに、本当にこんな事件(有事)があった時、日本の政府や自衛隊は、日本を守ることが出来るのだろうかという不安が大きくなったのは事実だ。
謎のテロ組織は、実は北朝鮮の特殊部隊であり、台風のさなか中国漁船の中に紛れ日本に侵入してくるというのは、現実にも起きてもおかしくない設定である。訓練され生死をいとわない中規模の舞台が東京都内に潜伏し、サイバー攻撃や爆発事件、人質をとる等、首都東京の機能を壊滅させていく。こんな時、警察や機動隊では、なんら対抗できる手段はない。単なるテロ組織との戦いではなく、戦争状態に入っているといってもいい状態で、自衛隊による集団的自衛権の行使をどう考えるのかという問題を突き付けられる。
北の特殊部隊は、核を持ち込んでいるというくだりもあり、核兵器がいとも簡単にテロ組織に渡ってしまったとき、それが使われるかもしれないという恐ろしさもこみあげてくる。最後には、中国の大船団が尖閣諸島を実効支配しようとする場面がでてきてハッピーエンドの終わりではない。その時、日本人はどう行動したらいいのだろうかという事も大きく考えさせられた。まさに、タイムリーな内容を題材にした作品だけに、面白かったでは終わらない。こういった事が、本当に起こらないように隣国との対応を慎重に見極め友好的な関係を保つような外交手腕を現政府に望みたいと切に思った。