(英語版)
(アラビア語版)
Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(85)
第31章 回転する六角星(1)原子力空母H.S.トルーマン(2/3)

パイロットが再びこちらを向いて指でサインを送ってきた。今度は親指を下に突き出し、こぶしを上下に振った。<下降せよ>との合図らしい。米機は少し速度を上げて前に出ると高度を下げ始めた。
『エリート』もそれに合わせて前のめりの下降姿勢に入った。それまで正面に見えていた水平線がコックピットの斜め上方に持ち上がり、視界が一面コバルトブルーのペルシャ湾の海に覆われた。波も無く穏やかすぎる海面。二つの巨大な球形タンクを抱えたタンカーが音も無く海面を滑って行く。天然ガスを液体のまま運搬するLNGタンカー船だ。
カタールのLNG基地に向かっているのだとすれば、既にペルシャ湾の中ほどを過ぎたようだ。燃料計はほとんどゼロを示している。残された時間は少ない。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)