石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(SF小説) ナクバの東(52)

2024-12-31 | 荒葉一也SF小説

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(49)

第19章 撃ち落された給油機(3)爆発炎上する給油機(1/3)

 
 一方、客人であるイスラエル給油機を取り囲んだサウジアラビア戦闘機は給油機のパイロットに向かって自分たちのテントに立ち寄ること、即ちハフル・アル・バテン基地に着陸するように話しかけた。それは話しかけたと言うより命令したと言った方がいいのかもしれない。それに対して給油機は何も答えず、機体を左右に振っては囲いから逃れようと身をよじった。しかし給油機と戦闘機では運動性能に天と地の差があり、包囲網を脱出することが不可能であることは明らかであった。3羽の鷹に囲まれたのろまなアホウドリはその進退が極まりつつあった。

 次第にハフル・アル・バテン基地が近づいて来る。アホウドリはついに横を並走する鷹に体をぶつけて活路を見出そうとした。さすがの鷹もその時だけは身を横に逸らす他なかった。

(続く)


荒葉一也
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中東とエネルギーのニュース(12月30日)

2024-12-30 | 今日のニュース
(エネルギー関連ニュース)
原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil
(中東関連ニュース)



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現地記事転載:「欧州の天然ガス輸入に迫る二つの難問」(下)

2024-12-30 | 現地紙記事転載
その2:カタール・エネルギー大臣、怒りの発言
(原題) Qatar warns it will halt gas exports to Europe if fined under EU due diligence law
2024/12/23 Ahram Online

 

7月に発効したEUの企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)は、経営陣が人権や環境への悪影響に対処しなかった場合、企業の年間世界売上高の最大5%の罰金を科すことを認めている。

「欧州への供給で売上高の5%を失うなら、欧州への供給はしない」とカタールのアル・カビ・エネルギー大臣は日曜掲載のfinancial Timesのインタビューで語った。同大臣は、「はったりを言っているわけではない」と付け加えた。しかし同大臣は、罰金の対象が世界総売上高ではなく欧州で生み出された収入だけであれば妥協の余地があるかもしれないと示唆している。

「だが、総収入にまで踏み込みたいなら、それはまったく意味をなさない」と同大臣は述べた。アル・カビ大臣は、液化天然ガス(LNG)供給契約を破棄するつもりはないが、多額の罰金を科せられた場合は法的手段を検討すると付け加えた。「罰金を科せられることは受け入れない。その時は欧州へのガス供給を停止する」と同大臣は語っている。

欧州諸国がロシア産ガスからの脱却を模索する中、カタールはドイツ、フランス、イタリア、オランダにLNGを供給する長期契約を締結した。グローバル法律事務所リード・スミスのエネルギー・天然資源グループのパートナー、ジェームズ・ウィルン氏は、「カタールは世界最大のLNG輸出国の一つだ。ロシアからの天然ガス供給が減少したため、EUはカタールのLNGへの依存度を増している。カタールのLNG輸出が中断すれば、特に需要がピークとなる冬季に供給制約が悪化する可能性が高い」と述べている。

アラブ首長国連邦のザ・ナショナル紙は「カタールの対応は、他のエネルギー輸出国がEUのCSDDDに抵抗する前例となる可能性がある。そうなれば、EUは持続可能性の目標と経済およびエネルギー安全保障上の配慮とのバランスを取るよう圧力を受けることになるだろう」と報じた。

CSDDDはEU内外から批判を浴びている。各国は2026年までに新規則を国内法に導入する必要がある。1年後の2027年には、規則が企業に適用され始め、発効後3年から5年の間に段階的に導入される。この指令は、企業の慣行を2050年までにネットゼロ排出量を達成するという目標に合わせるというEUのより広範な戦略の一部である。

欧州委員会は、この指令は国際法に合致しており、この措置の下で何が悪影響を構成するかは世界的に認められた基準によって決定されると強調した。委員会の声明によると、「この指令の下でのデューデリジェンスはリスクに基づくものである。企業に要求しているのは、特定された悪影響に見合った、合理的に利用可能な措置を講じることだけだ」と声明は付け加えている。

ブルームバーグが12月に報じたところによると、ドイツは、欧州連合最大の自国経済が景気後退に苦しむ中、この法律を2年間延期し、中小企業に報告義務を免除するよう求めている。「企業に不必要な負担をかけないように」変更が必要だと欧州委員会は付け加えた。

以上

(筆者追記)
 上記ロシア及びカタールの警告とは別に、米国のトランプ次期大統領は、欧州にエネルギーの輸入促進を迫っている。次期大統領は国内向けには「掘って、掘って、掘りまくれ (Drill, baby, drill)!」とばかり天然ガスの生産増強を促す気配であり、化石燃料による地球温暖化問題には無関心を装っている。欧州としては一時的措置として同盟国の米国から天然ガスを輸入することでエネルギー危機を回避できる。しかしこれは欧州が米国に随従することにつながり、欧州のプライドは傷付くことになろう。欧州にとっては難しい選択を迫られる状況である。

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現地記事転載:「欧州の天然ガス輸入に迫る二つの難問」(上)

2024-12-28 | 現地紙記事転載
(解説)欧州の天然ガス輸入が来年以降激減する恐れがある。一つはウクライナを経由するロシアー欧州間の天然ガスパイプラインの契約が今年末で期限を迎えるが、ウクライナが更新を拒否しており、もしそうなればロシアから欧州向けのパイプラインはトルコ経由のみとなり(3本目のロシア―ドイツの北海ノルドラインは爆発事故で送ガス停止中)、ロシアからの輸入ガスの半量が無くなることになる。

また、ロシア産天然ガスの代替輸入先としてカタールのLNG輸入を拡大しているが、EU側が人権や環境への対策としてデューデリジェンス指令(CSDDD)を制定、対象企業に巨額の罰金を課そうとしており、これに対してカタールが猛反発していることである。

ここではこの二つの問題を取り上げたニュース2件を紹介する。


その1:露ノヴァク副首相(兼エネルギー相)の発言
(原題) Russian pipeline gas and LNG exports to Europe up 18-20% in 2024, Novak says
2024/12/26 Khaleej Times (ロイター電)

 

ロシアのアレクサンダー・ノヴァク副首相(エネルギー相兼任)は水曜日、天然ガスの今年の欧州諸国への総輸出量が昨年より18~20%増加しており、1月から11月までのパイプラインガスと液化天然ガス(LNG)の供給量は500億立方メートルを超えたと述べている。さらに「ガスは環境に優しい製品であるため、あらゆる声明や制裁圧力にもかかわらず需要がある。そして、ロシアのガスは、物流と価格の両面で最もコスト効率が高い」と、国営テレビ局ロシア24で述べた。

因みに、ウクライナ紛争によりロシアと西側諸国の関係が急激に悪化したため、2023年のロシアのパイプラインガスの欧州への供給量は55.6%減少し283億立方メートルであった。ロイター通信が国営ガス大手ガスプロムの1日当たりの輸出量と欧州のガスパイプライン事業者の統計を基に算出したところ、供給量は今年320億立方メートル前後に回復すると見込まれている。

しかし、ロシアのパイプラインによる欧州へのガス輸出は深刻な課題に直面している。ロシア-ウクライナ間の5年間のガス輸送契約が今年末に期限切れとなり、ウクライナは契約を更新しないと表明しているためである。ロシアから欧州へのガスの約半分はウクライナルート経由で流れている。残りは黒海底のトルコストリームパイプラインを通じて供給されている。

ノヴァク副首相は、ロシアは複数のルートで欧州にガスを供給する用意があり、ウクライナと欧州はロシアのガス輸送について合意すべきだと改めて述べた。「欧州諸国はウクライナのガスルートに関心を持っているが、これまでのところ問題は解決していない。しかし、これは主に欧州連合とウクライナの間でそのような供給の可能性について合意するかどうかにかかっている」とノヴァク氏は述べた。一方、ロシが海上輸送するLNGの供給は増加しており、その輸出量の約半分を欧州が引き受けている。

EUはロシア産LNGの購入をすぐに停止する予定はないが、ノルウェー、米国、カタールからの輸入増加を受け、2027年までにロシア産ガスからの離脱を目指すとしている。ノヴァク氏は、ロシアの2024年のLNG輸出量は約3300万トンと、昨年の供給量3290万トンと同程度になるとみている。

(続く)

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(SF小説) ナクバの東(51)

2024-12-28 | 荒葉一也SF小説

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(48)

第18章 撃ち落された給油機(2)引き裂かれる編隊(3/3)

 

イスラエル機のパイロットは言い知れぬ恐怖感と威圧感の中で次第に焦りを覚え始めた。追尾を振り切ろうとアクロバット飛行を繰り返したおかげで燃料を予想以上に使い果たしたようである。給油機と引き離され、砂漠の上空をあてどなく飛び続け、最早帰投のために残された燃料はぎりぎりである。ここはアラビア半島上空の敵地の真っただ中、砂漠に不時着する訳にはいかない。イスラエルの護衛機2機には基地に帰投する選択肢しか残されていなかった。

護衛の2機が踵を返すのを確認したサウジアラビア機のパイロットは基地の作戦本部に作戦終了を報告して帰途についた。
「客人の従者はお帰り願いました。」

(続く)


荒葉一也
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中東とエネルギーのニュース(12月27日)

2024-12-27 | 今日のニュース
(エネルギー関連ニュース)
原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil
(中東関連ニュース)


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現地記事転載:「映画を地で行くイスラエルの諜報活動―ヒズボラに対する自爆型ポケベル攻撃」

2024-12-26 | 現地紙記事転載
(原題) Former Israeli spy agents describe attack using exploding electronic devices against Hezbollah
2024/12/23 Arab News(AP電)

 

ワシントン:最近引退したイスラエルの上級諜報員2人が、3か月前に実行した計画―自爆型ポケベルとトランシーバーによるレバノンとシリアのヒズボラ戦闘員を標的とした秘密作戦―について詳細を明らかにした。諜報員らは、日曜夜に放送されたCBS「60 Minutes」の番組に出演、身元を隠すためマスクを着用し、声を変えて話した。

元諜報員によると、作戦は10年前に始まったもので、ヒズボラはポケベル/トランシーバーを敵国イスラエルから購入していることに気づいていなかった。イスラエル諜報機関モサドはポケベルが爆発した翌日にトランシーバーを爆発させた。

「マイケル」と名乗る元将校は「私たちは架空の世界を作った」と語った。爆弾を仕掛けたポケベルを使った計画は、ヒズボラが台湾の企業からポケベルを購入していたことを知った後、2022年に開始された。

ポケベルは、内部に隠された爆発物を収容するために少し大きくする必要があった。ヒズボラの戦闘員だけを傷つけ、近くにいる他の人には影響を与えない適切な量の爆発物を見つけるために、人形を使って何度もテストされた。モサドはまた、誰かがポケットからポケベルを取り出すほど緊急に聞こえる着信音を見つけるために、数多くの着信音をテストした。

「ガブリエル」という名前の2人目のエージェントは、防塵、防水、長いバッテリー寿命などを提供する機器を宣伝するYouTubeの虚偽広告を使用するなどして、ヒズボラに大型のポケベルに切り替えるよう説得するのに2週間かかったと語った。彼は、ハンガリーに拠点を置くダミー会社を利用して、台湾の企業ゴールド・アポロを騙し、知らないうちにモサドと提携させていたと説明した。ヒズボラもイスラエルと結びついていることに気づいていなかった。

ガブリエル氏はこの策略を、主人公が偽りの世界に生きていることに全く気付かず、彼の家族や友人が幻想を維持するために雇われた俳優であるという1998年の心理映画に例えた。「彼らが私たちから購入しているとき、彼らはそれがモサドから購入していることに全く気付いていませんでした」とガブリエル氏は語った。「私たちは『トゥルーマン・ショー』のように、舞台裏ですべてをコントロールしました。ビジネスマン、マーケティング、エンジニア、ショールームなど、すべてが100%フェイクでした。」

犯行当時、ヒズボラの戦闘員はポケットに5,000台のポケベルを持っていた。イスラエルは9月17日、レバノン全土のポケベルのビープ音を鳴らし攻撃を開始した。その装置は、着信した暗号化されたメッセージを読むためにボタンを押さなくても爆発した。翌日、モサドはトランシーバーを起動し、そのうちのいくつかはポケベル攻撃で死亡した約30人の葬儀で爆発した。

ガブリエル氏は、ヒズボラの戦闘員を実際に殺害することよりも、メッセージを送ることが目的だったと述べている。「死んだだけなら死んだだけだ。しかし負傷しているなら、病院に連れて行って手当をしなければならない。お金と労力を投入する必要がある」と同氏は述べた。「そして、手と目を失った人々は、レバノンを歩き回り『我々に手を出すな』という生きた証拠になった。彼らは中東全域での我々の優位性を示す歩く証拠だ」

攻撃の数日後、イスラエル空軍はレバノン全土の標的を攻撃し、数千人を殺害した。ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララは、イスラエルのバンカー爆弾により暗殺された。11月までに、イスラエルとヒズボラの戦争は停戦で終了した。これは、2023年10月7日にイスラエル南部でハマス過激派が行った致命的な攻撃の副産物である。

「マイケル」と名乗るエージェントは、ポケベル爆発の翌日、レバノンの人々はエアコンも爆発するのではないかと恐れて、エアコンをつけるのを恐れたと語った。それが意図的なものかと尋ねられると、彼は「我々は彼らに無防備だと感じさせたい。実際、彼らはそうしている。我々はすでにそれをしたので、再びポケベルを使うことはできない」と述べた。「私たちはすでに次のことに移っており、彼らは、次に何が起こるかを推測し続けなければならない。」


以上
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(SF小説) ナクバの東(50)

2024-12-26 | 荒葉一也SF小説

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(47)

第18章 撃ち落された給油機(2)引き裂かれる編隊(2/3)
 

3機に取り囲まれたイスラエルの護衛機は時には速度をあげ、時には急上昇、急降下、旋回を繰り返し、敵機を振り切って給油機に合流しようとした。しかしサウジアラビア機はぴったりとそして執拗に寄り添ったままである。両方の戦闘機は全く同じ米国ゼネラル・ダイナミック(現ロッキード・マーティン)社製のF16である。飛行性能が同じであるためイスラエル機が如何にアクロバット技能を駆使しても結局サウジアラビア機を引き離すことはできない。

イスラエルのパイロットはミサイルで相手を攻撃することもできない。当たり前の話だが空対空ミサイルは真っ直ぐ前方にしか飛ばないから真横や真後ろにいる敵機は撃ち落とせない。むしろ後尾につけたサウジアラビア機ならいつでも自機を撃墜できるはずだが、攻撃する気配は見せない。サウジアラビアの3機はただ無言でイスラエル機と編隊飛行を続けるばかりであった。

(続く)


荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
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中東とエネルギーのニュース(12月25日)

2024-12-25 | 今日のニュース
(エネルギー関連ニュース)
原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil
(中東関連ニュース)





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現地記事転載:「勢力バランスの変化で劣勢に追い込まれたシリアのクルド人」

2024-12-25 | 現地紙記事転載
(原題) Syrian Kurdish groups on the back foot as power balance shifts
2024/12/22 Arab News (Reuter電)

 
カミシュリー:シリア北部ではトルコに支援された敵対的なグループがクルド人勢力に対抗して動員され、ダマスカスはトルコに友好的なグループによって統治されているため、シリアの主要クルド人勢力は13年間の戦争で得た政治的利益を守ろうとする中で後手に回っている。

イラク、イラン、トルコ、アルメニア、シリアにまたがる民族グループであるクルド人は、これまでのところシリア紛争の数少ない勝者の1つであり、国土のほぼ4分の1を支配し、イスラム国に対抗する上で重要な米国の同盟国として強力な武装グループを率いてきた。しかし、イスラム主義グループであるハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)が今月ダマスカスに侵入し、バッシャール・アサド大統領を倒して以来、クルド人の勢力バランスは不利に傾いている。

米国の政権交代により、米国がシリアのクルド人主導の勢力をいつまで支援し続けるのかという疑問が生じている。シリアにおける劇的な変化は、トルコの影響力をさらに強めると予想される。トルコにとって、クルド人勢力は国家安全保障上の脅威である。トルコ政府はシリアのクルド人をクルド労働者党(PKK)の延長とみなしている。PKKは1984年以来トルコ政府に対して反乱を起こしており、トルコ、米国、その他の国からはテロ組織とみなされている。

米国のシンクタンク、センチュリー・インターナショナルの研究員アロン・ルンド氏は、「シリアのクルド人グループは非常に深刻な問題を抱えている。シリアでは根本的にトルコが支援し、或いはトルコと連携する勢力に有利にシフトしており、トルコはこれを最大限に利用しようと決意しているようだ。」と語っている。この変化は、北部の支配権をめぐる新たな戦闘に反映されており、トルコが支援する武装集団「シリア国民軍(SNA)」がクルド人主導のシリア民主軍(SDF)に対して軍事的前進を遂げている。

クルド人主導の地域行政の高官ファナル・アルカイト氏はロイター通信に対し、「アラブ民族主義のバース党を率い何十年にもわたりクルド人を抑圧してきたアサド大統領が追放されたことは、分裂した国を再び一つにまとめるチャンスである。政権はトルコとの対話の用意があるが、北部の紛争はトルコが「非常に悪い意図」を持っていることを示している」と述べた。また同氏は「これは間違いなく、この地域を新たな紛争へと向かわせるだろう」と付け加えた。

トルコのエルドアン大統領は金曜日、トルコがSDF同盟の先頭に立つクルド人民兵組織人民防衛隊(YPG)を孤立させようとしている中、アサド政権の打倒後、諸外国がクルド人戦闘員への支援を撤回すると予想していると述べた。

トルコ当局者はロイターの質問に対し、紛争の根本原因は「トルコのこの地域に対する見方ではなく、PKK/YPGがテロ組織であるということだ」とし、「PKK/YPGの分子は武器を捨ててシリアから撤退しなければならない」と述べた。 SDFのマズルム・アブディ司令官は木曜日のロイター通信のインタビューで、シリアにPKK戦闘員がいることを初めて認め、彼らはイスラム国との戦いに協力しており、トルコとの全面停戦が合意されれば帰国すると述べた。彼はPKKとの組織的つながりを否定している。

フェミニズムとイスラム主義
一方、ダマスカスでは、新指導部がトルコ政府に好意的な姿勢を示し、シリア全土を中央政府に復帰させたい意向を示している。これはクルド人が支持する地方分権化への挑戦となる可能性がある。トルコはSNAに直接支援を与えているが、アルカイダとの関わりがあるためHTSをテロ組織とみなしている。

それにもかかわらず、トルコ政府は同組織に対して大きな影響力を持っていると考えられる。西側のある上級外交官は「トルコは明らかに他の誰よりも彼らに影響を与えることができる」と述べた。HTSのリーダー、アハメド・アル・シャラー氏はトルコの新聞に対し、アサド大統領の追放は「シリア国民の勝利であるだけでなく、トルコ国民の勝利でもある」と語っている。トルコ当局者は、HTSはトルコ政府の支配下にあったことはなく、かつてあったこともなかったと述べ、HTSは「状況により連絡を取っていた」組織であり、多くの西側諸国もそうしていると付け加えた。

民主統一党(PYD)と傘下の民兵組織YPGが率いるシリアのクルド人グループは、2011年にアサド大統領に対する蜂起が始まった後、北部の大部分を支配下に置いた。彼らは独自の政権を樹立したが、目的は独立ではなく自治であると主張した。社会主義とフェミニズムを強調する彼らの政治は、HTSのイスラム主義とは大きく異なる。米国主導の部隊がイスラム国に対する作戦でSDFと提携するにつれて、彼らの支配地域は拡大し、アラブ人が多数を占める地域を占領した。

トルコが支援するSNAグループはアサド政権が倒れる中、SDFに対する攻撃を強化し、12月9日にマンビジ市を制圧した。ワシントンは停戦を仲介したが、SDFはトルコとその同盟国が停戦を遵守していないと述べており、トルコ国防省当局者はそのような合意はなかったと述べた。

米国のSDF支援はNATO同盟国トルコとの緊張の要因となっている。ワシントンはSDFをイスラム国に対抗する重要なパートナーとみなしており、ブリンケン国務長官は、イスラム国がシリアでの能力を再構築しようとしていると警告している。また、米国のバーバラ・リーフ国務次官補(近東担当)は、ワシントンはトルコ政府およびシリア民主軍(SDF)と協力し、「シリア国内のその地域におけるSDFの役割に関して、管理された権限の委譲」を見つけようとしていると述べた。バイデン現政権は、米軍はシリアに留まるとしているが、トランプ次期大統領は1月20日の就任時に米軍を撤退させる可能性がある。

トランプ大統領への手紙
トランプ大統領は最初の政権時代にシリアからの撤退を試みたが、国内および米国の同盟国からの圧力に直面した。シリアのクルド人高官イルハム・アハメド氏は、12月17日付のトランプ大統領宛の手紙で、トルコが大統領就任前に北東部への侵攻を準備していると述べた。トルコの計画は「安定確保とテロとの戦いにおける長年の進歩を台無しにする恐れがあるが、あなたにはこの大惨事を防ぐ力があると信じている」と同氏は書いている。

コメントを求められた政権移行担当報道官ブライアン・ヒューズ氏は、「我々はシリア情勢を引き続き監視している。トランプ大統領は中東の平和と安定に対する脅威を軽減し、国内の米国人を守ることに尽力している」と述べた。トランプ次期大統領は12月16日、トルコがシリアで何が起こるかの「鍵を握る」と述べたが、シリア駐留米軍に関する計画は発表していない。

オクラホマ大学のシリア専門家ジョシュア・ランディス氏は、「クルド人は不利な立場にいる。ダマスカスが権力を固めれば、この地域に攻め込むだろう。米国は永遠にそこに留まることはできない」と語っている。

HTSの指導者シャラア氏は英国放送局BBCに対し、クルド人は「我々の国民の一部」であり「シリアを分割すべきではない」と語り、武器は完全に国家の手に委ねられるべきだと付け加えた。シャラア氏はトルコの主な懸念の1つであるシリア国内のクルド人戦闘員の存在を認め、「シリア領土がトルコや他の地域を脅かし不安定化させるなどとは認めない」と述べた。

クルド人当局者のケイト氏は、政権が「民主的なシリア、分権化されたシリア、あらゆる宗派、宗教、民族のシリア人全員を代表するシリア」を望んでいると述べ、これらをレッドラインと表現した。SDFは「来たるシリア軍の中核となる」と同氏は付け加えた。

SDF司令官のアブディ氏はロイター通信のインタビューで、両軍の衝突を避けるためにHTSとの連絡ルートが確立されていることを確認したが、アンカラはダマスカスとクルド人主導の政権の間に亀裂を生じさせようとしている、と述べた。同氏は、SDFがダマスカスの「新しい政治段階」に参加することについて、米国主導の連合を含む国際的関係者から強い支持を得ており、これを「絶好の機会」と呼んだ。また同氏は「我々とトルコおよび関連派閥間の完全停戦の後、我々はこの段階に参加する準備をしている」と述べている。


以上
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