石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ガスOPEC(天然ガス輸出国カルテル)は生まれるのか?(第1回)

2007-03-11 | 今週のエネルギー関連新聞発表

(注)HP「中東と石油」「ガスOPECは生まれるのか?」全文(第1回~第6回)を一括ご覧いただけます。

プロローグ:ロシアとウクライナの紛争が西欧にもたらした悪夢

 ここ一年ほど天然ガス輸出国カルテル、いわゆる「ガス版OPEC」構想に関する報道が頻繁に見られる。昨年1月、ロシアとウクライナが天然ガス価格をめぐり紛糾、西欧向けのガスの供給が危機に瀕したことが、一連の報道の遠因と言えよう。同年3月にロシアのプーチン大統領がアルジェリアを訪問した際、報道されたのを皮切りに、今年1月にはイランの最高指導者ハメネイ師がガス輸出国グループの結成をロシアに呼びかけ、さらに翌月プーチン大統領がカタルを公式訪問したことにより、一気に火がついた。

  ロシアは天然ガスの埋蔵量、生産量、輸出量いずれも世界1位である。そしてイラン、カタルの埋蔵量はそれぞれ世界第2位と第3位であり、これら3カ国だけで世界の埋蔵量の56%を占めている。ペルシャ(アラビア)湾に広がるイランの南パルス・ガス田とカタルの北部ガス田は、実質的につながった世界最大のガス田である。そしてカタルのLNG輸出は近年急激に伸びており、昨年遂にインドネシアを抜いて世界1位となった。アルジェリアも世界第5位のガス生産量を誇っており、同国とロシアがヨーロッパに輸出する天然ガスは、全消費量の3分の1強に達する。

  このようにこれら4カ国が保有し、生産及び輸出する天然ガスは全世界、とりわけ西ヨーロッパにとって死活的に重要な問題と言えよう。「ガス版OPEC」のニュースが常に西側メディアから流れるのは、天然ガスがヨーロッパ諸国のエネルギー安全保障の「アキレス腱」になっていることの裏返しであろう。

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