石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ガスOPEC(天然ガス輸出国カルテル)は生まれるのか?(第2回)

2007-03-19 | OPECの動向

(注)HP「中東と石油」「ガスOPECは生まれるのか?」全文(第1回~第6回)を一括ご覧いただけます。

世界の天然ガスを独占する三つの国:ロシア、イラン、カタル

 BPが毎年発表している世界のエネルギー資源データ集「BP Statistical Review of World Energy」の最新版によれば、2005年末の世界の天然ガスの可採埋蔵量は180兆立方米である。これは石油に換算すると1.13兆バレルとなる。因みに石油の可採埋蔵量は1.2兆バレルであり、地球上の石油と天然ガスはほぼ同量と言える。

  この埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値を「可採年数(R/P)」と言う。これは石油又は天然ガスを今のまま生産し続ければ、あと何年で枯渇するかを示しており、石油のR/Pは41年、天然ガスのR/Pは65年である。天然ガスは石油より20年以上も長い寿命があり、65年と言えばさほど危機感を持つ必要が無いようにも見える。

  このR/Pという数値は「現在確認されている埋蔵量を、現在の生産量で割ったもの」であり、従って資源の探査が進歩し埋蔵量が増えればR/Pは増え、一方、生産量(即ち消費量)が増えればR/Pは低くなる。実は石油及び天然ガスのR/Pは最近20年近く共に殆ど変動していない。この間、生産量(=消費量)はほぼ一貫して増加しているが、増加に見合う新たな石油や天然ガスが発見されているからである。

  しかし中国やインドの経済発展により世界のエネルギー消費は今後も右肩上がりで増加する反面、地球上の石油や天然ガス資源は有限である。この厳然たる事実を前にしてエネルギーの生産国及び消費国の双方に、将来需給が逼迫することは間違いない、と言う共通の認識が生まれている。そのような認識の中から、供給サイド即ち石油・天然ガスの生産国が価格を自由にコントロールする「生産者カルテル」の構図が生まれる。生産国にとってカルテルを結成することに強い誘惑を覚え、かたや需要家にとっては悪夢を呼び覚ます。

  可採年数が65年、即ち石油の1.5倍もある天然ガスについて、何故いま生産者カルテルである「ガス版OPEC」が話題になるのであろうか。それは天然ガスが石油以上に一部の国、極端に言えばわずか3カ国―ロシア、イラン、カタルの3カ国―に偏在しているという事実にある。BPの統計では、世界最大の天然ガス埋蔵量を誇るのはロシアであり、全世界の4分の1強、つまり27%を占めている。そして第2位のイラン及び第3位のカタルもそれぞれ15%と14%の埋蔵量がある。この3カ国だけで世界全体の56%に達する。因みに石油の場合は、上位3カ国(サウジアラビア、イラン、イラク)のシェア合計は43%であり、天然ガス資源の偏在の度合いは石油よりもかなり大きい。(詳細は「石油文化ホームページ」掲載の拙稿BPデータ分析レポート「BP統計に見るエネルギー資源の埋蔵量・生産量・消費量―その2天然ガス篇」参照) 

  このような事実が天然ガス生産国カルテル、いわゆる「ガス版OPEC」が結成された場合のマグニチュードの大きさを予感させ、消費国、特にロシア産天然ガスに大きく依存している西ヨーロッパ諸国に、カルテル恐怖症を引き起こしているのである。

(これまでの内容)

 (第1回)プロローグ:ロシアとウクライナの紛争が西欧にもたらした悪夢

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