(一部のOPEC加盟国は埋蔵量を政治的思惑に利用している!)
(3)8カ国の国別石油埋蔵量の推移(1980-2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G03.pdf参照)
ここではOPEC加盟のベネズエラ、サウジアラビア、イラン、イラク及びUAEの5カ国に加え、米国、ブラジル、インドネシアの計8カ国について1980年から2011年までの過去30年間にわたる埋蔵量の推移を追ってみる。
埋蔵量世界一のベネズエラは過去30年間に数値を著しく引き上げていることが特徴である。即ち1980年末の同国の埋蔵量195億バレルは8カ国中6番目であり、トップのサウジアラビア(1,680億バレル)の9分の1に過ぎなかった。しかし同国は10年後の1990年末には埋蔵量を3倍以上に増加させ(601億バレル)、2008年末にはさらにその3倍の1,723億バレルとし、イラン、イラクを抜き去りサウジアラビア、カナダに次ぐ世界第3位に駆け昇っている。そして2010年にはついにサウジアラビアも追い越し埋蔵量2,965億バレルで世界一となっている。1980年から2011年までの31年間でベネズエラの石油埋蔵量は15倍強に伸びたのである。同国オリノコベルトの超重質原油の商業生産が技術的に可能になったことがその要因とされている。
しかし世界の石油関係者たちの中にはベネズエラの発表数値に疑問を持つ者が少なくないのも事実である。特に同国大統領にチャベスが就任して以来埋蔵量の上方修正が顕著であることから、大統領が国威発揚を狙って数値を意図的に水増ししている可能性が否定できないのである。埋蔵量が多いことは将来の増産余力があることを示しているため、OPEC強硬派と言われるチャベス大統領がサウジアラビアなどのOPEC穏健派諸国に対抗し、さらには世界最大の石油消費国米国を牽制する意図もうかがわれるのである。
実はベネズエラのように国威発揚のため埋蔵量値を引き挙げていると考えられるOPEC産油国が他にもある。それはイランとイラクである。両国の場合は互いの対抗心から埋蔵量を競い合っている。1980年末の両国の埋蔵量はそれぞれイラン583億バレル、イラク300億バレルでありイランがイラクを上回っていた。しかし1990年末にはイランの埋蔵量928億バレルに対してイラクは1,000億バレルと発表し両者の順位は逆転した。ところがイランは2000年代に入ると再び埋蔵量を上方修正し、2007年末には1,382億バレルとしてイラクを再度追い抜き、2010年末にはさらに1,512億バレルに引き上げた。これに対してイラクは2011年に数値を20%増加し同年末の埋蔵量を1,431億バレルに修正しイランとの差を縮めている 。1980年末と2011年末の埋蔵量を比較するとイランは2.6倍であり、イラクに至っては4.8倍である。この間イラク及びイランはいずれも国際社会から経済制裁を受け石油開発は殆ど進展していなかったにも関わらず、このように埋蔵量が大幅に上方修正された理由は、両国がお互いのライバル意識で順位を競い合ったからとしか説明がつかないのである。このように一部のOPEC加盟国の埋蔵量数値には信ぴょう性に疑わしいものがある。
これに対して同じOPEC加盟国でもサウジアラビアやUAEの公表値は1990年以降全く変化していない。サウジアラビアの1980年末の埋蔵量は1,680億バレルで1990年末には2,600億バレルに修正されたがその後は昨年末まで全く変化していない。UAEも同様に1980年末埋蔵量304億バレルを1990年末には981億バレルとした後、現在まで横這い状況である。横這いと言う意味は毎年、生産量を補う埋蔵量の増加があったことを意味している。例えばサウジアラビアの場合は1990年から2011年までの生産量は900~1,000万B/Dであり、年率に換算すると33~37億バレルであるから、これと同量の埋蔵量が追加されてきたことになる。これは毎年超大型油田を発見しているのと同じことなのである。これはUAEについても言えることである。サウジアラビアもUAEも探鉱開発では古い歴史があり国内には石油のフロンティアと呼べる場所は殆ど見当たらない。にもかかわらず両国が埋蔵量を維持できた理由は、一つは既開発油田からの回収率をアップしたことであり、もう一つは既存油田の下の深部地層に新たな油田を発見したためである。
上記OPEC4カ国以外に本項では非OPECの米国、ブラジル、インドネシアを取り上げた。これら3カ国の埋蔵量は対照的な推移を示している。米国は1980年末の埋蔵量365億バレルで当時はUAE、イラクよりも多かったがその後徐々に減少し2008年末には300億バレルを下回った。しかし2009年以降同国の埋蔵量は309億バレルに回復している。これは2000年代前半の石油価格の上昇により老朽化した油田(マージナル油田)が再び採算性を取り戻したこと、及び国内の石油開発が活発になったためである。
一方インドネシアは1980年末に116億バレルあった埋蔵量が1990年には半減し、その後も減少を続け2011年末には40億バレルとなっている(同国の場合、石油の生産も減少を続け2000年代初めには石油の輸入国に転落、2008年にOPECを脱退したことはよく知られている)。これに対し深海油田の開発に成功したブラジルは1980年末にはわずか13億バレルに過ぎなかった埋蔵量が2011年末には151億バレルに大幅にアップしているのである。
(続く)
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