(生産量が4倍でも売上高はシェルより少ないという怪!)
3.売上高(Sales / Revenue) (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-6-33.pdf 参照)
2019年のアラムコの売上高は3,298億ドルであったが、これに対してIOC5社で最大の売上を誇るShellはアラムコを上回る3,521億ドルを売り上げている。Shellに続くのはBP 2,784億ドル、ExxonMobil 2,649億ドル、Total 2,003億ドル、Chevron 1,465億ドルであった。
なお「売上高」の金額は各社の決算資料の下記項目である。
Saudi Aramco: Revenue and other income related to sales
Shell: Total revenue and other income
BP: Sales and other operating revenues
ExxonMobil: Total revenues and other income
Total: Sales
Chevron: Sales and other operating revenues
アラムコとIOC5社の売上高を比べると大きな差は無く、むしろShellよりも少ないことは注目に値する。原油・ガス生産量(第1項参照)ではアラムコはExxonMobil、Shellの4倍弱、BPの5倍強である。また原油生産のみに限れば、アラムコはExxonMobilの4倍、Shellの5倍である。アラムコとIOCは共に原油の販売が主力事業であり、原油生産量が売上高に比例すると見るのが普通であろう(原油価格も売上高を大きく左右するが、これはアラムコ、IOC双方共影響はほぼ同じ)。
このような現象を解明するにはアラムコの売上高の詳細な分析が必要である。同社の決算報告書の製品別売上高 によれば、製品別売上高は原油6,675億リアル、石油精製・化学品3,695億リアル、天然ガス・NGL594億リアルである。これを原油・ガスの生産量と比較すると、原油の生産量がガスの3倍であるのに対し、売上高は原油がガスの10倍以上という大きな差がある。
この理由としては以下のような点を挙げることが出来よう。まずアラムコの場合天然ガスは自家消費の他、水・電気ユーティリティ企業(SWCC、SEC)向け燃料或はSABIC(基礎産業公社)向け石油化学原料として国内市場で全量消費されている。しかも販売価格は市場価格を大幅に下回る低価格(75セント/立法フィート)である。これによってアラムコの売上高に占める天然ガスの比率の小さいことがわかる。
一方、原油については生産量990万B/Dのうち輸出量は700万B/D程度と言われる。この輸出向け原油はBrent原油、WTI原油と連動した市場価格で販売されており、アラムコ売上高の大きな部分を占めている。
これに対してIOC各社は天然ガス販売に加え、石油精製販売及び連結決算の石油化学部門の売上がかなりの金額に達すると思われ、それらの点を加味するとアラムコとIOC各社の売上格差が少ないことの説明になる。
(続く)
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