石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

SF小説:「ナクバの東」(44)

2022-10-20 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

Part II:「エスニック・クレンザー(民族浄化剤)

 

44. パーティーにて(5)

 

そのやりとりを見ながら、ヘレンは男の話しぶりに感心した。話し方は訥々としていたが説得力があった。そして何よりも感心したのは彼の話は決して芯がぶれなかったことであった。普段の周囲の男性たちの会話は目の前の相手を楽しませることばかり考え話に全く芯が無い。それに比べ目の前の男には意思の強さが感じられた。

 

ヘレンはそのことを彼に伝えたくてついに我慢できなくなり言葉を発した。

「あなたって本当につつましいシャイなお方ね。それでいて信念はロック(石)のように堅いわ。さしずめ『シャイ・ロック』と言ったところかしら。」

 

場の空気が一瞬凍りついた。

 

彼女も自分の発した言葉の意味にハッと気がついて、手で口をおおった。イスラエルの、そして生粋のユダヤ人である武官に投げかけた『シャイ・ロック』と言う言葉。それがどのような意味を持つのか、彼女もその程度の常識はわきまえていたのだが、一度口に出したことは翻せない。ヘレンは蒼くなりあわてて次の言葉を頭の中で考えた。

その時、輪の中心にいた上司の夫人が、男とヘレンを交互に見ながら言った。

 

「まあ、面白いことを言うわね。本当にこの方はつつましくて、それでいて堅いお方よね。『シャイ・ロック』とは面白い呼び名ですこと。」

「私、今後あなたさまのことをそうお呼びすることにしましょう。」

 

輪の女性たちはポカンとした顔になった。上司の妻は不思議な顔をした。そのことで皆は彼女がかの有名な英国の戯曲を知らなかった、或いは気付かなかったことを理解した。こうなれば彼女に合わせることが他の夫人たちの処世術である。彼女たちは一斉に声を揃えた。

 

「そうね。そうしましょう。そうしましょう。今後この方のことは『シャイ・ロック』と呼ぶことにしましょう。」

 

この出来事は瞬く間にワシントンの社交界に広まり、彼は以後『シャイ・ロック』と呼ばれるようになった。

 

(続く)

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

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IMF世界経済見通し:一年間で4度も下方修正されたGDP成長率 (4)

2022-10-20 | その他

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0569ImfOct2022.pdf

 

4. 2020年~2024年のGDP成長率

(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-11.pdf 参照)

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-05.pdf 参照)

 

 今年を挟む2020年から2024年までの前後5年間の主要経済圏と国のGDP成長率の推移を見ると、2020年は全世界の成長率は▲3.0%のマイナスであり、EU及びASEAN5か国の経済圏もそれぞれ▲5.6%、▲3.4%であった。国別では米国(▲3.4%)、日本(▲4.6%)、ドイツ(▲3.7%)、サウジアラビア(▲4.1%)など大半の国がマイナス成長であり、中国(2.2%)、エジプト(3.5%)など一部の国だけがプラス成長を記録した。

 

 コロナ禍が下火となった2021年は、前年の反動もありほぼすべての国でプラス成長であった。そして今年(2022年)はウクライナ紛争とエネルギー価格の高騰により産油国のサウジアラビア等一部の国を除き、大半の国では前年を下回る成長率を余儀なくされている。2023年及び2024年の成長率は経済の先行きに不透明感が濃いため、多くの国で成長率が横ばいになると予測されている。

 

 主な地域、国の5年間の成長率推移は以下のとおりである。

                            2020年(実績)  2021年(実績) 2022年(見込) 2023年(予測) 2024年(予測)

全世界                 ▲3.0%                6.0%         3.2%             2.7%              3.2%

EU圏                  ▲5.6%                5.4%           3.2%               0.7%                2.1%

ASEAN5カ国  ▲3.4%                3.4%         5.3%             4.9%              5.3%

米国                     ▲3.4%                5.7%         1.6%             1.0%              1.2%

日本                     ▲4.6%                1.7%         1.7%             1.6%              1.3%

中国                      2.2%                 8.1%         3.2%             4.4%              4.5%

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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