石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

IMF世界経済見通し(2024年4月):低成長続く先進国、高成長続くインド(4)

2024-04-25 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0600ImfWeoApr2024.pdf

 

(低迷続く日本を追い抜くドイツ、インド!)

4.五大国(米中独印日)のGDP推移(2010~2029年)

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-06.pdf参照) 

2024年のドル建て名目GDPが世界上位5カ国(米、中、独、印、日)について2010年以降2029年までの推移を見ると、2010年の米国のGDPは15兆ドルであり、2位は中国6.0兆ドル、日本は3位の5.8兆ドルであった。因みに中国が日本を追い抜き世界2位になったのはこの年のことである。ドイツ及びインドのGDPはそれぞれ3.4兆ドル、1.7兆ドルであり、ドイツは日本の6割、インドは日本の3分の1にとどまっていた。

 

その後2029年までの20年間の推移を見ると、特徴的なことは日本を除く4カ国はGDP総額が増加している一方、日本のみは年々名目GDPが低下しており、2029年に至るも2010年を下回っている(4.9兆ドル)ことである。因みに2010年を100とした場合2024年の各国GDPは、米国191、中国307、ドイツ135、インド235に対して日本は71にとどまっている。中国が2010年当時より3倍以上拡大し、インドと米国も2倍前後、ドイツは1.4倍に拡大したにもかかわらず日本のみは2010年の7割に縮小している。これは対ドル為替レートの変動に一因があると考えられるが、それにしても日本の経済力の低下は著しい。この結果、2023年に日本はドイツに追い抜かれて世界4位になり、さらにIMFの予測では来年(2025年)にはインドにも追い越され、日本は世界5位に転落する見込みである。

 

 各国間の格差について米国を100とした場合のその他4カ国をその指数で見ると、2010年には中国が40、日本は38であり、両国は米国の4割程度の規模で並んでいる。これに対してドイツは米国の2割強、インドは1割強にとどまっている。その後中国のGDPの伸びが米国を上回り2021年には米国の4分の3の規模に拡大している。その後は若干足踏み状態であるが、2029年には米国の7割強と見込まれている。

 

 インドは2010年時点では米国の経済規模の一割にとどまっていたが、その後はGDPが大きく拡大し、2029年には米国の二割弱の規模になる見込みである。ドイツと日本の経済規模も共に拡大する見込みであるが、米国との比較ではドイツが23(2010年)→15(2029年見込)に8ポイント下がるのに比べ、日本は同一期間中に38から14へと大幅に下がると試算されている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(146)

2024-04-25 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第6章:現代イスラームテロの系譜(1

 

146イスラームテロの萌芽(1/4)

イスラームテロの問題に入る前にまずテロリズム(以下テロと略す)の定義について考えてみる。広辞苑によれば「テロリズム」とは「政治目的のために、暴力或いはその脅威に訴える傾向。また、その行為。暴力主義。」とある。テロの動機としては民族の対立、宗教の対立、イデオロギーの対立の三つに分けることができよう。これまで度々触れてきたように民族の対立は「血」の問題であり現代風に言えば「DNA」の対立ということになろう。そしてイデオロギーの対立は「智」の問題、宗教の対立は「心」の問題ということになる。

 

中東における民族の対立を起因とするテロとしてはクルド民族独立運動に絡むテロ活動があげられる。民族テロ事件は世界各地で絶えない。血=DNAが根本にあるだけに多分将来も無くならないであろう。しかし第二次大戦後に国際社会が国民国家を基本とするようになり、民族紛争は小規模で地域限定的なものになりつつある。

 

イデオロギーの対立を起因とするテロは戦後の米ソ冷戦構造のなか世界各地で頻発した。アルゼンチンに生まれたチェ・ゲバラがキューバでカストロ兄弟と共に行ったテロ活動は独裁政権に対する社会主義イデオロギーのテロであった。イデオロギーという思想のテロは智の産物であるだけに民族テロ或いは宗教テロに比べ、世界各地の思わぬ場所に飛び火する性質がある。しかしこの種のテロは1990年のソ連の崩壊により、自由主義・資本主義が社会主義・共産主義を超克して以降、急速に下火になった。フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」はまさにそのことを言い当てている。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする