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(目次)
第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(31)
145二つの予言:「歴史の終わり」と「文明の衝突」(5/5)
1981年のレーガン大統領から1993年のブッシュ(父)大統領まで続いた共和党政権は、米国が自国の正しさを確認し、自分たちが神に選ばれ世界平和の使命を与えられたと確信した時代であった。米国はアフガニスタンからソ連を撤退させ、東西ドイツ統一を推進し、イラン・イラク戦争で世俗政権のイラクを支援した。そして経済の分野では自由貿易による単一市場化(グローバリゼーション)を押し付け、世界経済における米国の力を不動のものにしたのである。
このシナリオはまさにフクヤマの「歴史の終わり」そのものである。フクヤマは決して歴史が終わると言っているのではない。彼は冷戦が終わった後の世界は民主主義と市場経済が唯一のイデオロギーへと収れんする歴史の最終章の始まりだ、と説いたのである。20世紀末にこのような一種の歴史終末論を主張したことが「歴史の終わり」をベストセラーたらしめたのである。
米国は独裁者フセインを湾岸戦争で力づくで封じ込めてアラブ・イスラム諸国の為政者たちを震え上がらせ、フクヤマの「歴史の終わり」を中東に実現させて21世紀を迎えるつもりであった。しかしフクヤマの思想に異議を唱えたのがハンチントンの「文明の衝突」であった。不幸にして21世紀はハンチントンの予言を裏付けるような9.11同時多発テロ事件で幕を開けたのであった。
(続く)
荒葉 一也
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