石油と中東

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SF小説:「ナクバの東」(76)

2023-03-23 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

2023年3月

 

Part III:キメラ(Chimera)

 

76. ネオ・ギャラクシーの地球上陸(2)

 数週間後、宇宙飛行士モシェは所定の任務を終え、数人の飛行士仲間と共に地球に帰還した。そしてネオ・ギャラクシーも地球に上陸したのであった。

 祖国イスラエルでは帰国したモシェのために盛大な歓迎パーティーが催された。空軍では最高位の勲章授与式が行われ、授与式には大御所の退役将軍シャイ・ロックも出席していた。モシェが勲章を胸にシャイ・ロックに挨拶をした時、将軍は隣に立っている一人の男を紹介した。

 

 「知っていることとは思うが、君と同じ空軍に所属する義理の息子だ。」

 

 「将軍、もちろん知っていますとも。私の先輩ですから。」

 『エリート』はモシェと握手を交わした。

 

 「おめでとう、モシェ。俺は大気中でしか飛んだことはないが、宇宙はどうだった。君は今やイスラエル空軍、いやイスラエル、そしてユダヤ人の英雄だ。」

 

 「そう言うあなたこそ宿敵イランの原子炉を爆撃した祖国の救世主じゃないですか。」

 

そのあとにモシェは一言付け加えることを忘れなかった。

「もちろんこのことは空軍以外ではオフレコの話ですが-------」

 

 エリートは苦い笑みを浮かべて軽くうなずくだけであった。

 モシェはその時、エリートに生気が無く、言葉遣いに覇気がないことに気が付いた。そう言えば宇宙ステーションから元の職場に戻った時、仲間のパイロットから聞かされた噂話を思い出した。

 

 <シャイロックの義理の息子がノイローゼだってさ。最近では戦闘機にも乗せてもらえないそうだ。>

 

――――――― 

 

(続く)

 

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 


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