続き
山上の楽園・鬼怒沼湿原
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池塘の前にベンチが置かれ数人の登山者が休んでいた。私達も先ずは此処で腰を落ち着ける事にしよう。 満々と水を湛える水面には空の青さと葉草をそのまま映し、その姿はビクともしない。その奥に見えるのは手白山だろうか。ドッシリと大きかった。
隣りに座っていた人達は女夫淵温泉方面から入山したそうだ。「きつかった」と言っていたが大清水起点に比べたらはるかに楽なはずである。その内の一人が温泉からのコピーを「宜しかったらどうぞ」と下さったが此処へもう一度来る事も無いだろうが有り難く戴く事にした。
やだ!雄さん 裸になってしまった。 汗でビッショリ濡れた衣類が気持ちが悪いからと登山者が去り誰も居なくなると、さっそく脱ぎ捨て木の枝で乾かす算段だ。
雲の流れに微妙に変化する草原、標高2000mの柔らかな風。 たおやかに至福の時が流れる。
この楽園に大満足して私達はそう広くない湿原を一周。周囲にトドマツを配しその中にハクサンシャクナゲも見られる。再び湿原の目を向ければ綿毛に変わったチングルマ、小さなヒメシャクナゲ、ウラジロヨウラク、オトギリソウetc・・・が新たに加わり花数がどんどん増えていく。
いよいよ湿原を去るときガスが湿原を舐めるようにユックリ動きだし幻想的な風景をつくり出した。青空の下の湿原もいい、だが こんな湿原もまた素晴らしい。
十数人が雨宿り出来そうな避難小屋
下り道、後方に物見山が姿を現した
林道で見かけた珍しい蝶。危険を感じると色が変わる様だ(アルバムの写真はもっと鮮明なのですが、それを写しましたので呆けてしまいました)
これはオオウバユリ
苦しめられた みちのりを再び苦しんで下り大清水へ帰り着いた時、あの山上の楽園が幻の様に思え私は何だか浦島太郎の境地だった。 雄さんは来し方を振り返り「いい山だったが又、行く気にはなれない」とボソリと言った。