やさしくて解りやすい言葉で話そう:
先ほどから小池都知事の記者会見の録画を聞いていると「フェーズ」だの「ロードマップ」などという言葉が飛び出してくる。坂上忍は「今度はロードマップだって」と言ったのは、皮肉かと思ったほどだった。私が常々不思議に思っていることはと言えば、我が国の権威者乃至は専門家と呼ばれる方々は何かと言えば「英語の言葉」を使って語られる点なのだ。尾身茂副座長の“overshoot”も小池都知事の“phase”も“roadmap”もそうだが、私に言わせて貰えば「文語」乃至は我々が言う“big word”であって、日常的に使われるような口語的な表現ではないと思う。
我が国の科学としての英語を学ばれて、非実用的な単語まで覚えられたのは尊敬する。だが、そうだからと言って万人が聞いているような記者会見のような場で引用されるのは、正直に言って感心しない。私は尾身氏の「オーバーシュート」は瞬間的に何を言われたいのかを想像は出来たが、浅学非才にして“overshoot”という言葉は知らなかった。小池都知事の「ロードマップ」にしても似たようなもので、在職中にそういう言葉があるとは承知していたが、聞いたことも使った記憶もない「堅苦しい言葉」であって会話体の言葉ではない専門語の類いだ。
閑話休題。簡単な日常的に使える表現集に話を戻そう。嘗て個人指導した商社の若手の精鋭に「なんでそんなに難しいことを、簡単な言葉ばかり使って言えるんですか」と言われたことがあった。話し言葉とはそういう性質であるし、普通には社内の報告書でも堅苦しい文語(big wordの類い)は使わないものなのだ。だからこそ、私は「コラボレーション」という言葉をテレビ局だったか専門家だったかが使い出した時には驚かされたものだった。お恥ずかしながら、そういう言葉があると承知していた程度で、日常的には使わないのだから。
“Make it two.”
解説)前後の関係が解らないと意味が取れない表現だ。これはレストランなどで注文するときにウエイターかウエイトレスに「前の人と同じものを頼む」という意味で使う。3人目の人は“Make it three.”と言えば良いことになる。日本から来られたお客様たちがメニューと格闘されているときに、私が先頭を切って何か注文すると、ほとんど全員が私に「同じものを頼んでください」となってしまったことが屡々あった。それで、ある時商社の若手に「せめて“Make it two, please.”くらい言いなさい」と教えた表現。因みに、メニューを誰かが見ている限り、注文を取りには来ないのだ。
“He is gone for the day.”
解説)ICT化の時代になったのだから、最早必要がない表現かも知れない。電話をしてみたら「彼は本日はもう帰りました(帰宅しました)」と言われてしまった。「折角電話をしたのに不在か」と嘆かせられたので覚えた言い方。「早退」は“early leave”と言われた記憶がある。“He took an early leave, today.”辺りかな。
“Let me leave the matter up to you.”
解説)「この件は貴方にお任せします。」という意味。もう少し丁寧に言いたければ、“May I leave the matter up to your capable hands?”などと気取った表現もある。確認して置くが、難しい単語を一つも使わずに言えている点が特徴だ。こういう表現は繰り返し音読して覚えてしまう以外に、自分で使えるようにする方法はないと思っている。
“It’s up to you.”
解説)これは「貴方次第です。お任せします」という意味で使う。換言すれば「貴方が決めて下さい」と下駄を預けてしまうことだ。日本語から考えると極めて難しい英訳になってしまう。だからこそ、私は音読・暗記・暗唱を強力に推薦してきたのだ。
“You are the last person whom I expected to meet here, this afternoon.”
解説)ここでは“last”の使い方が要点である。「今日の午後に、まさか貴方にここで会うとは予想していなかった」と訳すので良いかと思う。英語と日本語の発想の違いが非常に良く現れている。“it was the very last thing I wanted to happen to me.“のように言えば「そんなことが私の身に降りかかってくれとは絶対に近く予期していなかった」という意味になるか。
“Let’s have a bite to eat.”
解説)何のことかと思わせるが「食事に行こうぜ」という表現で、極めて口語的というか身内で言うざっくばらんな語りかけ方。“Let’s have a bite.“だけでも十分に通じる。言うまでもないが“bite”は「噛む」という意味だが、名詞では「軽い食事」とジーニアス英和に出ている。
“Make two checks, please.”
解説)これは2人で食事に行って「割り勘」にするときに、ウエイターに予め告げておく表現。即ち、「勘定書きは別々にしてください」という意味。黙っていると伝票は1枚になってしまうのだ。“Make separate checks.”でも意味を為すと思う。念の為に確認しておくと、伝票を持って会計係に支払いに行く習慣は、アメリカにはないのだ。