実用性がある英語を考えて見よう:
始めに:
我が国ではごく当たり前のように「学校で教えられた英語は海外で通じなかった。全く実用性がない」という類いの恨み言を言う人が多い。中にはご自身の英語力にも問題がある事を忘れて如何にも教え方が悪かったかのように他人のせいにされている人もいる。
そこで、今回は英語だけでしか意思を表せない世界で20年以上も過ごした経験に基づいて「実用性がある英語の表現」を思いつく限り採り上げてみようと思う。言うなれば「簡単で活躍に立つ英会話」という辺りになるだろうか。
“I will buy you a drink.”
解説)これは忘れもしない1972年8月に生まれて初めてアメリカに「トレーニング」という目的で出張した際に、乗り継ぎ便待ちでサンフランシスコ空港内を彷徨っていたときに同じ機内で隣に座ったアメリカ人に再会し、こう言って誘われたのだった。実は、何を言っているのか知らなかったが、訳も解らず“Thank you.”と言って付いていくとバーに入っていった。そして、これまた何だか知らない“Bloody Mary”をおごってくれたのだった。ここで解ったことが“I’ll buy you a drink.”は「一杯おごるぜ」だったのだ。
我が国の「科学としての英語」では如何なる文章になるかを考えて見るのも一興だろう。これが、私がアメリカ本土上陸第1日目で覚えた実用性がある英語だった。この表現の良いところは“drink”を“lunch”にすれば「昼飯をおごるよ」になることだ。会話用の英語はこうやって流れに中で覚えると効果的だ。
“Are you with Mead?”
解説)これがアメリカで学んだ二つ目の実用性がある英語の表現。降り立ったアトランタ空港から会社で予約されたホテルについて front desk(reception となっている場合もある)カタカナ語で言う「フロント」で係員に“I am so and so. I believe I have a reservation.”
と我が国で教える定番の表現を言ってみると、返ってきたのが“Are you with Mead?”だった。「貴方はミードに付いているのか」と聞かれて、“with“の使い方に当惑した。だが「ミードの社員か」と確認されたと解釈して“Yes I am.”で正解だった。初日から実用的な英語の勉強が始まった次第だった。
“Are you with me?”
解説)これは何と「貴方は私の話が解っていますか」という意味なのだ。要点は“with”という簡単なように思える単語には「これほど広い意味で使える、使われている」ということなのだ。勿論、“Are you following my speech?”という言い方はある。
“short stack”
解説)アメリカの食べ物の量は我々には多過ぎる。朝食のパンケーキもその例外ではない。初めて経験した私が躊躇っていると、上司が「次からはショート・スタック(=“short stack)と言えば良いのだ」と教えてくれた。次の機会には“I’d like to have pancakes. Short stack.”と注文してみると、およそ半分と思える量のものが出で来た。
ここで本題から離れてカタカナ語の批判をしておく。近頃テレビに出てくる者どもが「ボリューミー」(強いてアルファベットを充ててみると“volumy”とでもするしかないが、こんな英語はない)などと言うのだ。困った現象だ。
「クレデイット・カードを採りますか」:
解説)これは和文英訳である。アメリカのホテルでは先ずクレデイット・カードを提示してカードの番号を記録させないとチェックイン出来なくなる。これは「性悪説」を信奉する国ならではの習慣で「泊まり逃げ防止」または宿泊料金の回収の手段を確保する目的なのだ。アメリカではクレデイット・カードを持っていない人、あるいは提示を拒否する人は、銀行やカード会社が「経済的に信用がない人物」と見做すのである。なお、カードを提示しないお客様からは宿泊料金を超えるような額の“deposit”(=保証金)を取り立てる。
日本語で言う「クレデイット・カードを採りますか」を“Do you take credit card?”とは言わない方が良い。これでは、冗談好きの係員には“Yes.“と言って取られてしまうこともあるのだ。正しくはというか実用的な英語の表現は、“Do you honor credit card?” である。
もう一つ覚えておくと必ず役に立つ表現を採り上げておこう。それは、ホテルの食堂や売店で「この勘定を部屋付けに出来るか」と訊く時には “Can I charge it to my room account?” と言えば良いのだという使い方がある事。
「スクランブルエッグにする」:
解説)これも和文英訳だが、カタカナ語の問題点である。これを“I’ll have scramble egg.”のように注文しない方が良い。勿論、これでも通じるだろうが、文法的には不正確で無教養だと思わせる危険性がある。即ち、これでは「卵をかき回す」だけでしかないのだ。
実際には「黄身も白身も一緒にしてかき回された卵料理なのだから、“scrambled”のように過去分詞形でなければならないのが英語だ。しかも、英語では“eggs”と複数にして表示されている。カタカナ表記では過去分詞も複数の”s”も省略されてしまった。この辺りが英語の世界の特徴であることを忘れてはならない。
「~はありますか」
解説)「~」のところは商品か商品名を意味していると思って頂きたい。これは買い物に行って在庫の有無乃至は取り扱っているかを尋ねている表現だ。この場合に日本の教育で育ってきた方々は、“Do you have a pair of Nike shoes?” のように “have” を使う。だが、私はアメリカ語では “Do you carry a pair of Nike shoes? ”のように “carry”を使うのが一般的だと思って使ってきた。
“I am John Henry.”
解説)これは「私はジョン・ヘンリーと申します」との自己紹介の決まり文句だ。と信じているが、何故か我が国では“My name is Taro Yamada.”のように教えるのが一般的のようだ。だが、普通に日本人同士で話し合うときに「私の名前は山田太郎と申します」と自己紹介して挨拶はしないと思う。私には不可解だ。だが、外国人でも“My name is ~.”という人がいる。何れでも実用性はあるだろうと思って諦めている。
簡単な言葉で難しい内容を表現しよう:
次は一寸趣向を変えて、所謂易しい言葉だけで何処まで難しくて複雑なことを表現できるかの例を挙げていこう。
「この辺りの地理に明るく(強く)ないので」:
解説)「地理」を和英辞典で見ると“geography”と出てくるし、誰でもが知っていそうな言葉。ここではこれを素直に使って“I am not so good at the geography in this area.”で良いようだ。難しく考えてしまうとなかなか簡単に表現できないが、英語とはこんなもの。
「英語が上手ではないので」または「上手く話せないので」:
解説)これは私が常に問題にしてきた表現だ。これを英語にする場合に大多数の方は“I cannot speak English very well.”と言って謙られるのだ。だが、現実には英語を話しているのだ。私はこの言い方は良くないと断じる。そう言われたければ “I am not so good at speaking English.”の方が事態を正確に表していると思う。だから、その後に「通訳の方に助けて貰います」と日本語で言えば良いのではないか。
「ご冗談を」か「からかわないで下さい」:
解説)色々な言い方があり、私はその場で口から出てきた表現を使っていた。それらを羅列してみよう。“Don’t tell me.”、“You are telling me.”、“You are kidding me.”、“No kidding.”、“Please don’t kid yourself.等々だ。一つだけ“please”を付けたが、最初に挙げたものにも付ければ丁寧になるだろう。勿論、“You are joking.”とも言えるが、この“joke”の使い方には余り出会わなかった気がする。
「一寸これ持っててよ」:
解説)打ち解けた間柄の相手ならば簡単には、“Hold this for me a minute.”とでも言えば十分に通じる。この前に“Will you please”を言えば丁寧になって良いのは当然。会話の中では、一呼吸置いてから“Will you? Thanks.”と言えば、格好が付くだろう。ここには英語独特の日本語にはない考え方があり、必ず“for me”を言っておかないと「誰」の為に持つのかが不明になるので要注意。例えば、“Please say hello to Mrs. Abe.”と言っただけでは不十分で「誰がそう言っているのかを明確にしておく堅苦しさというか理屈っぽさが英語の特徴なのだ。
始めに:
我が国ではごく当たり前のように「学校で教えられた英語は海外で通じなかった。全く実用性がない」という類いの恨み言を言う人が多い。中にはご自身の英語力にも問題がある事を忘れて如何にも教え方が悪かったかのように他人のせいにされている人もいる。
そこで、今回は英語だけでしか意思を表せない世界で20年以上も過ごした経験に基づいて「実用性がある英語の表現」を思いつく限り採り上げてみようと思う。言うなれば「簡単で活躍に立つ英会話」という辺りになるだろうか。
“I will buy you a drink.”
解説)これは忘れもしない1972年8月に生まれて初めてアメリカに「トレーニング」という目的で出張した際に、乗り継ぎ便待ちでサンフランシスコ空港内を彷徨っていたときに同じ機内で隣に座ったアメリカ人に再会し、こう言って誘われたのだった。実は、何を言っているのか知らなかったが、訳も解らず“Thank you.”と言って付いていくとバーに入っていった。そして、これまた何だか知らない“Bloody Mary”をおごってくれたのだった。ここで解ったことが“I’ll buy you a drink.”は「一杯おごるぜ」だったのだ。
我が国の「科学としての英語」では如何なる文章になるかを考えて見るのも一興だろう。これが、私がアメリカ本土上陸第1日目で覚えた実用性がある英語だった。この表現の良いところは“drink”を“lunch”にすれば「昼飯をおごるよ」になることだ。会話用の英語はこうやって流れに中で覚えると効果的だ。
“Are you with Mead?”
解説)これがアメリカで学んだ二つ目の実用性がある英語の表現。降り立ったアトランタ空港から会社で予約されたホテルについて front desk(reception となっている場合もある)カタカナ語で言う「フロント」で係員に“I am so and so. I believe I have a reservation.”
と我が国で教える定番の表現を言ってみると、返ってきたのが“Are you with Mead?”だった。「貴方はミードに付いているのか」と聞かれて、“with“の使い方に当惑した。だが「ミードの社員か」と確認されたと解釈して“Yes I am.”で正解だった。初日から実用的な英語の勉強が始まった次第だった。
“Are you with me?”
解説)これは何と「貴方は私の話が解っていますか」という意味なのだ。要点は“with”という簡単なように思える単語には「これほど広い意味で使える、使われている」ということなのだ。勿論、“Are you following my speech?”という言い方はある。
“short stack”
解説)アメリカの食べ物の量は我々には多過ぎる。朝食のパンケーキもその例外ではない。初めて経験した私が躊躇っていると、上司が「次からはショート・スタック(=“short stack)と言えば良いのだ」と教えてくれた。次の機会には“I’d like to have pancakes. Short stack.”と注文してみると、およそ半分と思える量のものが出で来た。
ここで本題から離れてカタカナ語の批判をしておく。近頃テレビに出てくる者どもが「ボリューミー」(強いてアルファベットを充ててみると“volumy”とでもするしかないが、こんな英語はない)などと言うのだ。困った現象だ。
「クレデイット・カードを採りますか」:
解説)これは和文英訳である。アメリカのホテルでは先ずクレデイット・カードを提示してカードの番号を記録させないとチェックイン出来なくなる。これは「性悪説」を信奉する国ならではの習慣で「泊まり逃げ防止」または宿泊料金の回収の手段を確保する目的なのだ。アメリカではクレデイット・カードを持っていない人、あるいは提示を拒否する人は、銀行やカード会社が「経済的に信用がない人物」と見做すのである。なお、カードを提示しないお客様からは宿泊料金を超えるような額の“deposit”(=保証金)を取り立てる。
日本語で言う「クレデイット・カードを採りますか」を“Do you take credit card?”とは言わない方が良い。これでは、冗談好きの係員には“Yes.“と言って取られてしまうこともあるのだ。正しくはというか実用的な英語の表現は、“Do you honor credit card?” である。
もう一つ覚えておくと必ず役に立つ表現を採り上げておこう。それは、ホテルの食堂や売店で「この勘定を部屋付けに出来るか」と訊く時には “Can I charge it to my room account?” と言えば良いのだという使い方がある事。
「スクランブルエッグにする」:
解説)これも和文英訳だが、カタカナ語の問題点である。これを“I’ll have scramble egg.”のように注文しない方が良い。勿論、これでも通じるだろうが、文法的には不正確で無教養だと思わせる危険性がある。即ち、これでは「卵をかき回す」だけでしかないのだ。
実際には「黄身も白身も一緒にしてかき回された卵料理なのだから、“scrambled”のように過去分詞形でなければならないのが英語だ。しかも、英語では“eggs”と複数にして表示されている。カタカナ表記では過去分詞も複数の”s”も省略されてしまった。この辺りが英語の世界の特徴であることを忘れてはならない。
「~はありますか」
解説)「~」のところは商品か商品名を意味していると思って頂きたい。これは買い物に行って在庫の有無乃至は取り扱っているかを尋ねている表現だ。この場合に日本の教育で育ってきた方々は、“Do you have a pair of Nike shoes?” のように “have” を使う。だが、私はアメリカ語では “Do you carry a pair of Nike shoes? ”のように “carry”を使うのが一般的だと思って使ってきた。
“I am John Henry.”
解説)これは「私はジョン・ヘンリーと申します」との自己紹介の決まり文句だ。と信じているが、何故か我が国では“My name is Taro Yamada.”のように教えるのが一般的のようだ。だが、普通に日本人同士で話し合うときに「私の名前は山田太郎と申します」と自己紹介して挨拶はしないと思う。私には不可解だ。だが、外国人でも“My name is ~.”という人がいる。何れでも実用性はあるだろうと思って諦めている。
簡単な言葉で難しい内容を表現しよう:
次は一寸趣向を変えて、所謂易しい言葉だけで何処まで難しくて複雑なことを表現できるかの例を挙げていこう。
「この辺りの地理に明るく(強く)ないので」:
解説)「地理」を和英辞典で見ると“geography”と出てくるし、誰でもが知っていそうな言葉。ここではこれを素直に使って“I am not so good at the geography in this area.”で良いようだ。難しく考えてしまうとなかなか簡単に表現できないが、英語とはこんなもの。
「英語が上手ではないので」または「上手く話せないので」:
解説)これは私が常に問題にしてきた表現だ。これを英語にする場合に大多数の方は“I cannot speak English very well.”と言って謙られるのだ。だが、現実には英語を話しているのだ。私はこの言い方は良くないと断じる。そう言われたければ “I am not so good at speaking English.”の方が事態を正確に表していると思う。だから、その後に「通訳の方に助けて貰います」と日本語で言えば良いのではないか。
「ご冗談を」か「からかわないで下さい」:
解説)色々な言い方があり、私はその場で口から出てきた表現を使っていた。それらを羅列してみよう。“Don’t tell me.”、“You are telling me.”、“You are kidding me.”、“No kidding.”、“Please don’t kid yourself.等々だ。一つだけ“please”を付けたが、最初に挙げたものにも付ければ丁寧になるだろう。勿論、“You are joking.”とも言えるが、この“joke”の使い方には余り出会わなかった気がする。
「一寸これ持っててよ」:
解説)打ち解けた間柄の相手ならば簡単には、“Hold this for me a minute.”とでも言えば十分に通じる。この前に“Will you please”を言えば丁寧になって良いのは当然。会話の中では、一呼吸置いてから“Will you? Thanks.”と言えば、格好が付くだろう。ここには英語独特の日本語にはない考え方があり、必ず“for me”を言っておかないと「誰」の為に持つのかが不明になるので要注意。例えば、“Please say hello to Mrs. Abe.”と言っただけでは不十分で「誰がそう言っているのかを明確にしておく堅苦しさというか理屈っぽさが英語の特徴なのだ。