アメリカは中国が係争地域である、スカボロー礁における対立に軍備を強化しつつあることを口実に、フィリピン南部のミンダナオ島に数百名の兵士の配置換えを行った。一方で中国外務省は、この声明を否定している。
アメリカは東南アジアにおける、自国の軍事アピアレンスを拡大する理由について、フィリピン軍にテロ対策の手法を教えるためとして、その必要性を挙げている。
しかし事実上これは、アメリカ・フィリピンの軍事同盟を創設する第一歩に他ならない。同盟創設に当たっては双方に異なる国益が存在する。
アメリカは中国を自国の海軍基地に取り囲みながら、アジア帰還戦略を実現化している。フィリピンにはまだそうした基地はない。アメリカ国防総省はむこう20年間、アメリカ軍基地のインフラ使用を提供することで、フィリピン政府の同意を取り付けたい意向だ。
この問題に関する交渉の新たなラウンドは来週にもワシントンで始まる。
フィリピンもまた、アメリカの軍事アピアレンスが自国の国益に応えるものであることを隠そうとはしていない。米軍兵がいることで中国を常に牽制できるという公算がある。そうでもしなければ中国は優勢な軍事力を行使することで、南シナ海の島々の権益を主張するフィリピンには何のチャンスも残らない危険性があるからだ。
この地域は世界の貨物量の3分の1が通過する場所でもある。また石油、天然ガスの埋蔵量も多く、中国はその採掘を開始する意向を隠そうともしていない。
ロシア科学アカデミー・東洋学研究所の専門家、ドミトリー・モシャコフ氏は、アメリカが何とかしてこの地域に帰還しようとしているのは理解できるとして、次のように語っている。
「南シナ海は近い将来、新たな紛争地域に成りうる。なぜならフィリピンの背後にも、またひょっとするとベトナムの背後にも、近くアメリカが出現しうるからだ。フィリピンもベトナムも中国の威力に対抗するには、それに劣らぬ強い連合国が必要とされる」
専門家のコメントだ。
フィリピンが南シナ海で武器を片手に国益を守る構えであり、現在、南沙群島、スカボロー礁を支配下におく中国が、この領域をほんのわずかでも渡そうとはしていない以上、こうした予測が現実のものとなる可能性は十分にある。
9月5日放送 ロシアの声・ラジオジャーナル