Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『レイディ・イン・ザ・レイク』

2013-10-30 03:52:34 | 読書。
読書。
『レイディ・イン・ザ・レイク』 レイモンド・チャンドラー 小林宏明・他訳
を読んだ。

早川書房から出ているミステリ作家チャンドラー短編全集の3冊目にあたる本で、
5本の中短編(各100ページ前後)が収録されています。

どれも簡潔な文章でありながら読ませる力を持っています。
ストーリーで引っ張るところが大きいのですが、
注意深く読むと、センテンス間の繋がり方、というか、
文章とそれが含む意味との、各文章間での飛び方のバランスだとか、
あとは会話の面白さだとかで引っ張っているところもあるなぁと
思えてきました。
チャンドラーは三冊目で、まだ長編は読んでいませんが、
どんどん面白く感じるようになってきました。

こういう昔の(20世紀半ばの)探偵小説では、個人的に苦手で嫌いな「殺し」をも
すんなり読めてしまうところがあります。
酒、タバコ、金、女、などの要素がふんだんに盛り込まれていても
男臭いがゆえの入り込みにくさ(没入しにくさ)って無いですね。

これが東野圭吾とかの推理小説にある殺しって、
陰湿というか陰惨というか、僕の場合そんな感じがして嫌悪の情が生じるんですよねぇ。
レイモンド・チャンドラーの小説の殺しって、乾いた感じなのかなぁと思います。
それでも、学生の時なんかは陰惨な『バトル・ロワイアル』っていう中学生同士が
殺し合う、バイオレンス小説を面白がって読んで、映画化されればみんなで
観に行ったりもしたんですが。
どんどんそういうのがダメになっていく中で、虚構としての、エンタテイメントとしての「殺人」を
楽しめてしまうようになってきました。

前に、アメリカの大学の映画の講義をNHKでやっていたのを観たのですが、
そこの教授が、「観客は、暴力とSEXが大好きだ!」と言っていましたね。
そういうものなんですね、人っていうものは。

それはそれとして、本書に収録されている5本の短編はどれも粒ぞろいでした。
どれを読んでも面白かったので、お薦めできますね。
最初は文体だとか世界観に慣れるのに時間がかかるかもしれませんが、
一話目の「赤い風」を読んでしまえば、あとはすらーっと読める人が多いでしょう。

チャンドラーはまだ長編を読んだことが無いので、
まず短編集を読み終えてから読もうと考えていますが、
もう本当に楽しみだったりします。



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