Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『メディア・コントロール』

2015-05-29 00:42:40 | 読書。
読書。
『メディア・コントロール』 ノーム・チョムスキー 鈴木主税 訳
を読んだ。

優れた言語学者として著名で、
反戦論者としても有名なノーム・チョムスキーの著作と講演、
インタビューからなる本。

アメリカが、いかに知識や権力を有する特別階級に支配された
民主主義であるかを暴いた論説。
しかしながら、そのアメリカ的な民主主義は、
日本の民主主義にも符合するものであることがわかります。

___________

民主主義社会に関する一つの概念は、
一般の人びとが自分たちの問題を自分たちで考え、
その決定にそれなりの影響をおよぼせる手段をもっていて、
情報へのアクセスが開かれている環境にある社会ということである。
 (中略)
そして民主主義のもう一つの概念は、
一般の人びとを彼ら自身の問題に決してかかわらせてはならず、
情報へのアクセスは一部の人間のあいだだけで厳重に管理して
おかなければならないとするものだ。
__________

そして、チョムスキーは後者こそが今現在の民主主義においては
優勢であるとしている、そんな民主主義があるかと思ったとしても。
それは日本の読者も自国を鑑みてうなずくところだと思う。

そういったところから、
アメリカがおこなってきた悪事ともいえる、対外テロ行為、テロ支援行為、
自分たちの利害のための軍事行動を告発していきます。
そこには耳触りのいい、オブラートに包まれた歴史観はありません。
ベールをはがされた生身の、損得利害による虐殺や侵略やテロなどの
アメリカ政府の所業が並べ立てらています。

ぼくらはなぜ、アメリカや日本が支援するインドネシアの東ティモールの
軍による虐殺を知らない、あるいは忘れてしまったのか?
トルコにおける民族浄化運動によるクルド人が虐げれた現実、
そしてそれを支援したアメリカの立場を知らないのか?
イラクのサダム・フセインをアメリカやイギリスが支援して、
彼の化学兵器による虐殺などを黙認していたことを知らないのか?
国連からもルール違反を指摘されているにもかかわらず、それを無視し、
レバノンの一部を占領してパレスチナ人を虐殺しているイスラエルに、
アメリカが軍事支援をしていることを知らないのか?

覇権争い、そしてそれに関連するお金というものに、
人間は喰われてしまっているから、こんな歪んだ世界のままなのかもしれない。

そして、今の日本では、憲法を改正しようとしたり、
日米の関係を強化して以上に上げたようなアメリカの対外行為に加担できる体制を
作ろうとしています。

どんなもんかねえ、って思いますよね。

本書は『メディア・コントロール』という題名ですが、
そうやって一般人は騙されていくのだということですかねえ。
個人個人がバラバラであるよりも、何かの組織、
わかりやすい例だと労働組合ですけど、
そういった集まりで抗議なり異議申し立てなり、
発言したり意見を発信したりしていくことが、
最初に書いたような、特権階級が牛耳るタイプの民主主義から
脱却する手立てだと、チョムスキーは言っています。
連帯の力でしょうか。

いろいろな、真の現実を知っておくためにも、
ちょっとかじっておいたほうが良いような本でした。


Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする