Fish On The Boat

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『ひきこもれ』

2015-03-06 12:13:23 | 読書。
読書。
『ひきこもれ』 吉本隆明
を読んだ。

ひとりの時間をもつということは実は大事なことなんだ、
と吉本隆明さんが平易な言葉で語ってくれた本。

ひきこもっていることを悪いことだとみなして、
そういった人を表に無理にひっぱりだそうとする行いを、
たとえば吉本さんはテレビで見たといいます。
それは、スーパーの店長がひきこもり傾向の人々を集めて、
その気質を矯正しようとする行いでした。
そして番組では、それを善いことだ、とする文脈で語っていたそうで。
著者はそれは違うよ、と丁寧に、中学生でもわかるような言葉で語ってくれます。
「分断されない、まとまったひとりの時間をもたないと、人は何者にもなれない」
というところから始まって、
不登校について、いじめについて、死について、自分の引きこもり気質について、
世間の風潮についてまで、おしゃべりの感覚で語ってくれています
(本書は口述を録音編集してテキスト化したものか口述執筆だったようです)。

また、生まれてから1年くらいまでの間の経験、
それは母親が健康で安定しているかどうかで、
そのひとがいじめっ子になったりいじめられっ子になったりする理由となる
心の傷を持つかが決まってくるという持論を述べておられます。
なんとなく理屈もわかって、なるほど、そうなのかな、と思って読みましたが、
そういった傷のせいで、最悪の場合には自殺してしまうことにもなるそうです。
親の心が不安定なせいで、それに暗に影響を受けて、親の代理死という意味で
自殺してしまうということでした。
著者は、そこで、三島由紀夫や太宰治を例に挙げていました。

ひきこもりの気質であっても、社会とかかわりを持たないで隔絶されたまま
ずっと生きていこうなどとは言っていません。
そういった気質であっても、社会とはかかわれると説明しています。

右ならえの価値観というか、
一つの方向性の一つの見方しか認めないというような
気持ちの持ち方をしている人って多いなと思うのです。
ともすれば、僕だってそうならないためにいろいろ考えたりもしているのですが、
盲点だったりするものもあって、なかなかうまく解きほぐして考えられなかったりもする。
そこに異を唱えてくれる吉本さんの発するような言葉はありがたいなと思います。

吉本さんは亡くなられても残された言葉たちが今も生き生きとしています。
また、彼の他の本も読んでみたいですね。


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