僕の家にはもう一艘の船があった。
この船は父親がワカメやカニを採るために所有していたものだが、デッキを張っていないため父親が亡くなった年の秋、豪雨にあって沈没してしまっていた。直後に何とか引き上げたがそのときにエンジンも水没してしまい、以後はブラックバス用のボートに使っていたエンジンで2回ほどワカメ採りに出たがそれ以来まったく使っていなかった。
長く放置したままだったので船底の一部が破れ、半分水没した状態になっていた。
係留場所も違法な場所だったために早いうちになんとかしなければと考えていたがやっと処分をすることに決めた。
FRPの船というのは厄介な産業廃棄物で、処分には多額の費用がかかる。いつも船の修理を依頼するところでもかなりの金額を言われ、おまけに引き取りに来てもらうと出張費までも数万円かかるとのこと。どこかもっと安く依頼できるところがないかと探していると、捨てる神あれば拾う神あり?で港のほんの少しそばのところでお願いできるところがあった。おまけに自分で持ってくると1万円安くしてくれるとのこと。
今日は年末の出勤の代休をもらって搬送を決行した。
すでにエンジンのマウントも壊れてしまい人力で運ぶしか術がなく、親戚のおじさんの家の裏山で竹を切り出してパドル代わりに使って約2キロの行程を運んだ。
最初のうちはわりと浅いところを移動するので竹ざおを海底に押し付けて移動しようとするがこれがなかなかうまくいかない。山水画なんかで船頭が竹ざおを持っている絵があるが、あんなに優雅なものではない。なんと言っても竹には節があるから相当な浮力がある。どんなに力を入れてもすぐに浮いてくるのだ。それに舷側から竹ざおを入れるからまっすぐに進まない。それでもなんとか1時間かけて目的の場所まで移動することができた。
今日は風がなくて何とかなったものの、少しでも風があったらどうなっていたかと思うと、ゾッとした。少々の風があっても何とかなるだろうとタカをくくっていたが大間違いだ。
自然を甘く見ていた。
これで父親の持っていた船をすべて手放してしまったことになる。
一介のサラリーマンでは船を持つことはおろか、ましてや2艘も維持できるわけがなく、やむないことということで父親には許してもらいたい。
父親も僕と同じ一介のサラリーマンに過ぎなかったが、よくやっていたものだ。本物の漁師だった祖父をみて育った人だからいろいろなことを自分でこなすことができたのだろうが、それでもやっぱりサラリーマンとしては仕事を取るより遊びを取ってしまったのだろう。
僕もその血を十分に引き継いでいるからサラリーマンとしては失格だ。
なんとか会社の寄生虫で終わりたいと思うので宿主の会社にはこのご時世、なんとか持ちこたえてもらいたいと切に願うのみだ。
今日の天気予報では北の風が少し強いはずだが移動中は東からの風がわずかに吹いていただけだったので父親も、「仕方がなかろう。」と許してくれていたのかもしれない。
なんとか船を目的地に着けて陸に上がった時には本当にホッとした。
この船は父親がワカメやカニを採るために所有していたものだが、デッキを張っていないため父親が亡くなった年の秋、豪雨にあって沈没してしまっていた。直後に何とか引き上げたがそのときにエンジンも水没してしまい、以後はブラックバス用のボートに使っていたエンジンで2回ほどワカメ採りに出たがそれ以来まったく使っていなかった。
長く放置したままだったので船底の一部が破れ、半分水没した状態になっていた。
係留場所も違法な場所だったために早いうちになんとかしなければと考えていたがやっと処分をすることに決めた。
FRPの船というのは厄介な産業廃棄物で、処分には多額の費用がかかる。いつも船の修理を依頼するところでもかなりの金額を言われ、おまけに引き取りに来てもらうと出張費までも数万円かかるとのこと。どこかもっと安く依頼できるところがないかと探していると、捨てる神あれば拾う神あり?で港のほんの少しそばのところでお願いできるところがあった。おまけに自分で持ってくると1万円安くしてくれるとのこと。
今日は年末の出勤の代休をもらって搬送を決行した。
すでにエンジンのマウントも壊れてしまい人力で運ぶしか術がなく、親戚のおじさんの家の裏山で竹を切り出してパドル代わりに使って約2キロの行程を運んだ。
最初のうちはわりと浅いところを移動するので竹ざおを海底に押し付けて移動しようとするがこれがなかなかうまくいかない。山水画なんかで船頭が竹ざおを持っている絵があるが、あんなに優雅なものではない。なんと言っても竹には節があるから相当な浮力がある。どんなに力を入れてもすぐに浮いてくるのだ。それに舷側から竹ざおを入れるからまっすぐに進まない。それでもなんとか1時間かけて目的の場所まで移動することができた。
今日は風がなくて何とかなったものの、少しでも風があったらどうなっていたかと思うと、ゾッとした。少々の風があっても何とかなるだろうとタカをくくっていたが大間違いだ。
自然を甘く見ていた。
これで父親の持っていた船をすべて手放してしまったことになる。
一介のサラリーマンでは船を持つことはおろか、ましてや2艘も維持できるわけがなく、やむないことということで父親には許してもらいたい。
父親も僕と同じ一介のサラリーマンに過ぎなかったが、よくやっていたものだ。本物の漁師だった祖父をみて育った人だからいろいろなことを自分でこなすことができたのだろうが、それでもやっぱりサラリーマンとしては仕事を取るより遊びを取ってしまったのだろう。
僕もその血を十分に引き継いでいるからサラリーマンとしては失格だ。
なんとか会社の寄生虫で終わりたいと思うので宿主の会社にはこのご時世、なんとか持ちこたえてもらいたいと切に願うのみだ。
今日の天気予報では北の風が少し強いはずだが移動中は東からの風がわずかに吹いていただけだったので父親も、「仕方がなかろう。」と許してくれていたのかもしれない。
なんとか船を目的地に着けて陸に上がった時には本当にホッとした。