窪美澄 「夜に星を放つ」読了
去年の上期の直木賞受賞作だ。貸し出し予約をしたものの、予約待ちが相当あったので借りることができる時期はもっと遅いだろうと思っていたが意外と早く回ってきた。その理由はかなり読みやすい本であったということだ。僕は1日半で読み終えてしまった。
5編の短編集だが、それぞれはまったく関連性がなく独立した物語となっている。共通点はすべてのストーリーに“星”が絡んでいるということである。しかし、それはストーリーにとって重要なファクターとなっているものでもないというのもある意味面白い設定だ。
それぞれの物語のあらすじを簡単に書いておく。
「真夜中のアボガド」
婚活の相手に妻子がいたことを知った主人公は、亡き双子の妹の彼氏にそれはいけないことだと思いながらもひと時の癒しを求めてしまう。妹のことを早く忘れて新たな人生を進んでもらいたいと思いながらも傷ついた自分の心も癒してほしいと思うのだが、それを妹の彼氏に諫められてしまう。しかし、彼氏も主人公とのそういった出来事に動かされ新たな道を歩もうとする。
そして主人公もまた、水栽培で芽を出したアボガドの種に力をもらって力強く生きてゆこうと決意を新たにする。
登場する星はふたご座のカストルとポルックス。
「銀色のアンタレス」
美しく成長した幼なじみの好意に答えることができない高校生の主人公は、自分よりもはるかに年上の女性に惹かれてしまう。
結局、年上の女性は夫の元に戻り、幼なじみとは心が離れていってしまう。
思春期の少年の揺れ動く心というものだろうか。
「タッチ」を思い出してしまった。
アンタレスは赤い星だが、年上の女性はアンタレスと銀色のアルタイルを間違える。
「真珠星スピカ」
生まれ育った町に戻ってきた主人公の少女は中学校でいじめに遭っている。原因のひとつは隣に住む担任の先生だ。先生は女子中学生の間では人気者で、主人公が幼かったころからの知り合いであったことから嫉妬の目で見られていた。
クラスでは孤立し、保健室への通学を強いられる。そんな不安な心を支えてくれたのは交通事故で亡くなった母の幽霊だった。
霊感があると自分で言っているいじめのリーダーが主人公に無理やりこっくりさんをさせると、「い、し、め、た、ら、の、ろ、う、」というメッセージが現れる。
それがきっかけとなりいじめは治まったがそれ以来母の幽霊が見えなくなった。
妻との思い出を捨てきれない父親は妻の納骨が近くなっても踏ん切りがつかない。妻の荷物も処分できず、夏の日に虫干しをする。そんな光景の中に、隣の担任と保健室の先生の恋を見つける。
その日、コロッケを作った主人公だが、どうしたことか箸でふたつに割ったコロッケの中から真珠のピアスが出てきた。
それは若い頃の父が母に贈ったものであった。それを見た主人公は自分の知らない両親の若い頃を思い、自分も大人になったらこのピアスを着けようと考える。
おとめ座のスピカは「真珠星」とも呼ばれるそうだ。ユーミンの「真珠のピアス」の歌詞と重ね合わせて父親が思い出を語る。
この歌詞、けっこうおどろおどろしい内容だが、父親は、自分はそうではないと逆説的に言いたかったのだろうか・・。
「湿りの海」
離婚を機に引っ越しをしてきたシングルマザー。自分も離婚をしたばかりだったので気になる女性となった。シングルマザーの子供には別れて海外に行ってしまった子供を重ね合わせる。生きづらさからか、子供とはうまくいかず、虐待を思わせるところも見える。それを救ってあげたいと思いながらも何もすることができなかった。しばらくして元の夫のもとに帰ったということを知り、すべてのことから自分だけが取り残されてしまったという思いに苛まれる。
「湿りの海」というのは、月の表側の南東にある平原の名前である。
「星の随に」
父が再婚し、新しい母と暮らすことになった小学生が主人公。大人の勝手な取り決めで実の母親に自由に会えない。育児疲れの義母にも甘えることができず自分の気持ちを打ち明けることができないというさまざまな葛藤。レストランを経営している父親はコロナショックで経営がうまくいっておらず、そういった悩みを打ち明けられるような状態ではない。
そんな主人公を助けてくれたのは同じマンションに住む老婆だった。老婆はもうすぐ老人ホームに移る予定だ。それまでに自分が体験した東京大空襲の様子を絵画に収めようとしている。主人公はその横で夏の星座の図鑑を眺めている。
家族間の分かり合えない様を描いている。
登場人物たちの現状は順風満帆ではけっしてない。人生の中で何かにつまづき、よろけそうになりながらもなんとか踏ん張ろうとする。そういう人たちの切なさや健気さに読者は共感するのか、今を悩んでいるのは自分だけではないのだということに安心するのか・・。
ストーリーは特に奇をてらったところもなく、プロットはなんだかふた昔前の小説やマンガを思い出させる。文学としては大したものではないようにも感じるが、そういった素直なストーリー展開やなんとなく懐かしさを感じる部分が支持されるのかもしれない。
しかし、一度だけ読むと普通の小説という感じだが、感想文を書くためにところどころを読み返してみるとやはりいろいろ考えさせられる部分が出てくる。また、作家の考えていることはこの短編集で繰り返し使われている他者の都合で置かれることになった自分の立場との対峙、例えば、亡くなった人、別れた人から影響を受け続ける自分とどう折り合いをつければよいのかというようなことだとおもうのだが、そこは自分の現在の悩みともオーバーラップする。
アドラーは、「人間の悩みのすべては人間関係の悩みである。」と言っているのだが、そのど真ん中が描かれているようにも思えるのである。
今回もあらすじの作成をAIに頼ってみようと思ったのだが、出てきた答えはなかなのものだ。
AIが作ってくれたあらすじは以下の内容だ。何度かAIとやり取りをしてゆくとそれなりの形になってきた。
「夜に星を放つ」は、窪美澄さんの短編集で、第167回直木賞を受賞した作品です。星をモチーフにした5つの物語が収録されています。それぞれのあらすじは以下の通りです。
「真夜中のアボカド」:婚活アプリで出会った恋人とコロナ禍で遠距離恋愛をしている女性が、30歳の誕生日に双子の妹の彼氏と再会する話。
「真珠星スピカ」:母親が亡くなり、父親とその再婚相手と暮らすことになった中学生の女の子が、母親の幽霊と奇妙な同居生活を送る話。
「銀紙色のアンタレス」:祖母の家で夏休みを過ごす高校生の男の子が、海辺で出会った少女とほろ苦い恋をする話。
「湿りの海」:離婚して子どもと離ればなれになった男性が、隣室に越してきた母娘と交流し、別れを迎える話。
「星の随に」:父親の再婚相手と仲良くなれない小学生の男の子が、東京大空襲を絵に描く高齢女性と心を通わせる話。
これらの物語は、大切な人やものを失った人たちが、新しい人生への一歩を踏み出す様子を描いています。星座や伝説に関する知識も盛り込まれており、読者に感動や希望を与える作品です。
もう、僕の感想文は必要がないのかもしれない・・。
去年の上期の直木賞受賞作だ。貸し出し予約をしたものの、予約待ちが相当あったので借りることができる時期はもっと遅いだろうと思っていたが意外と早く回ってきた。その理由はかなり読みやすい本であったということだ。僕は1日半で読み終えてしまった。
5編の短編集だが、それぞれはまったく関連性がなく独立した物語となっている。共通点はすべてのストーリーに“星”が絡んでいるということである。しかし、それはストーリーにとって重要なファクターとなっているものでもないというのもある意味面白い設定だ。
それぞれの物語のあらすじを簡単に書いておく。
「真夜中のアボガド」
婚活の相手に妻子がいたことを知った主人公は、亡き双子の妹の彼氏にそれはいけないことだと思いながらもひと時の癒しを求めてしまう。妹のことを早く忘れて新たな人生を進んでもらいたいと思いながらも傷ついた自分の心も癒してほしいと思うのだが、それを妹の彼氏に諫められてしまう。しかし、彼氏も主人公とのそういった出来事に動かされ新たな道を歩もうとする。
そして主人公もまた、水栽培で芽を出したアボガドの種に力をもらって力強く生きてゆこうと決意を新たにする。
登場する星はふたご座のカストルとポルックス。
「銀色のアンタレス」
美しく成長した幼なじみの好意に答えることができない高校生の主人公は、自分よりもはるかに年上の女性に惹かれてしまう。
結局、年上の女性は夫の元に戻り、幼なじみとは心が離れていってしまう。
思春期の少年の揺れ動く心というものだろうか。
「タッチ」を思い出してしまった。
アンタレスは赤い星だが、年上の女性はアンタレスと銀色のアルタイルを間違える。
「真珠星スピカ」
生まれ育った町に戻ってきた主人公の少女は中学校でいじめに遭っている。原因のひとつは隣に住む担任の先生だ。先生は女子中学生の間では人気者で、主人公が幼かったころからの知り合いであったことから嫉妬の目で見られていた。
クラスでは孤立し、保健室への通学を強いられる。そんな不安な心を支えてくれたのは交通事故で亡くなった母の幽霊だった。
霊感があると自分で言っているいじめのリーダーが主人公に無理やりこっくりさんをさせると、「い、し、め、た、ら、の、ろ、う、」というメッセージが現れる。
それがきっかけとなりいじめは治まったがそれ以来母の幽霊が見えなくなった。
妻との思い出を捨てきれない父親は妻の納骨が近くなっても踏ん切りがつかない。妻の荷物も処分できず、夏の日に虫干しをする。そんな光景の中に、隣の担任と保健室の先生の恋を見つける。
その日、コロッケを作った主人公だが、どうしたことか箸でふたつに割ったコロッケの中から真珠のピアスが出てきた。
それは若い頃の父が母に贈ったものであった。それを見た主人公は自分の知らない両親の若い頃を思い、自分も大人になったらこのピアスを着けようと考える。
おとめ座のスピカは「真珠星」とも呼ばれるそうだ。ユーミンの「真珠のピアス」の歌詞と重ね合わせて父親が思い出を語る。
この歌詞、けっこうおどろおどろしい内容だが、父親は、自分はそうではないと逆説的に言いたかったのだろうか・・。
「湿りの海」
離婚を機に引っ越しをしてきたシングルマザー。自分も離婚をしたばかりだったので気になる女性となった。シングルマザーの子供には別れて海外に行ってしまった子供を重ね合わせる。生きづらさからか、子供とはうまくいかず、虐待を思わせるところも見える。それを救ってあげたいと思いながらも何もすることができなかった。しばらくして元の夫のもとに帰ったということを知り、すべてのことから自分だけが取り残されてしまったという思いに苛まれる。
「湿りの海」というのは、月の表側の南東にある平原の名前である。
「星の随に」
父が再婚し、新しい母と暮らすことになった小学生が主人公。大人の勝手な取り決めで実の母親に自由に会えない。育児疲れの義母にも甘えることができず自分の気持ちを打ち明けることができないというさまざまな葛藤。レストランを経営している父親はコロナショックで経営がうまくいっておらず、そういった悩みを打ち明けられるような状態ではない。
そんな主人公を助けてくれたのは同じマンションに住む老婆だった。老婆はもうすぐ老人ホームに移る予定だ。それまでに自分が体験した東京大空襲の様子を絵画に収めようとしている。主人公はその横で夏の星座の図鑑を眺めている。
家族間の分かり合えない様を描いている。
登場人物たちの現状は順風満帆ではけっしてない。人生の中で何かにつまづき、よろけそうになりながらもなんとか踏ん張ろうとする。そういう人たちの切なさや健気さに読者は共感するのか、今を悩んでいるのは自分だけではないのだということに安心するのか・・。
ストーリーは特に奇をてらったところもなく、プロットはなんだかふた昔前の小説やマンガを思い出させる。文学としては大したものではないようにも感じるが、そういった素直なストーリー展開やなんとなく懐かしさを感じる部分が支持されるのかもしれない。
しかし、一度だけ読むと普通の小説という感じだが、感想文を書くためにところどころを読み返してみるとやはりいろいろ考えさせられる部分が出てくる。また、作家の考えていることはこの短編集で繰り返し使われている他者の都合で置かれることになった自分の立場との対峙、例えば、亡くなった人、別れた人から影響を受け続ける自分とどう折り合いをつければよいのかというようなことだとおもうのだが、そこは自分の現在の悩みともオーバーラップする。
アドラーは、「人間の悩みのすべては人間関係の悩みである。」と言っているのだが、そのど真ん中が描かれているようにも思えるのである。
今回もあらすじの作成をAIに頼ってみようと思ったのだが、出てきた答えはなかなのものだ。
AIが作ってくれたあらすじは以下の内容だ。何度かAIとやり取りをしてゆくとそれなりの形になってきた。
「夜に星を放つ」は、窪美澄さんの短編集で、第167回直木賞を受賞した作品です。星をモチーフにした5つの物語が収録されています。それぞれのあらすじは以下の通りです。
「真夜中のアボカド」:婚活アプリで出会った恋人とコロナ禍で遠距離恋愛をしている女性が、30歳の誕生日に双子の妹の彼氏と再会する話。
「真珠星スピカ」:母親が亡くなり、父親とその再婚相手と暮らすことになった中学生の女の子が、母親の幽霊と奇妙な同居生活を送る話。
「銀紙色のアンタレス」:祖母の家で夏休みを過ごす高校生の男の子が、海辺で出会った少女とほろ苦い恋をする話。
「湿りの海」:離婚して子どもと離ればなれになった男性が、隣室に越してきた母娘と交流し、別れを迎える話。
「星の随に」:父親の再婚相手と仲良くなれない小学生の男の子が、東京大空襲を絵に描く高齢女性と心を通わせる話。
これらの物語は、大切な人やものを失った人たちが、新しい人生への一歩を踏み出す様子を描いています。星座や伝説に関する知識も盛り込まれており、読者に感動や希望を与える作品です。
もう、僕の感想文は必要がないのかもしれない・・。