イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「地獄の思想」読了

2015年08月02日 | 読書
梅原 猛 「地獄の思想」読了

地獄の思想と聞くと、「悪いことをしたら死んだ後、地獄に堕ちて、エンマ様に舌を抜かれるのだ。」という子供の頃に聞いた話を思い浮かべるが、天台宗の基本の考え方ではそれは心のおりなす世界のひとつであるという。天台宗第三の祖智(ちぎ)によればその世界は地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界の十在るという。その中のひとつが地獄というものだ。要は死後の世界ではなくて現実世界のなかで感じたり置かれたりする状態である。
日本の仏教宗派の開祖のほとんどは延暦寺で学んだ僧侶であるから、この十界をどう解釈するかで、「悪いことをすると地獄に堕ちる。」という考え方が生まれ、子供や学のない大人に道徳みたいなものを教えるのに好都合だからこうなったと考えるべきだろう。

もともと、釈迦が教えた仏教の思想は、生きるということは苦しむことだ、そしてその原因となるものは欲望である。そこから逃れるためにはその欲望を捨て去るしかない。そのために修行をしなさい。というのがおおまかな内容で、死後の世界についての言及はなかったそうだ。
ただ、その内容がネガティブというか楽しそうではなかったことが、地獄というものを生み、因果や輪廻という考え方と相まってだんだんと僕達が子供の頃に聞いたかたちになってきた。

人の心の中にある世界。確かに苦境に立たされれば地獄を見たと感じ、人をうらやみ、また恨むと自分が畜生になった気持ちになる。なるほど、そういう気持ちを行ったりきたりするのが人生なのかもしれない。
そして著者はその思想が日本人の心にどのように影響したかを分析している。
“生の暗さを凝視する”ことを愛することになったという。それが古来から存在した命を賛美する自然信仰、初期仏教の唯識論と相まって深く豊かな精神論を育んだという。
後半は源氏物語、平家物語、能、太宰などを例にとりながら日本人の心に受け継がれてきたこの精神の流れを立証しようとしている。

多分、クールジャパンというものもこの流れを汲んでいるから外国人からものすごく魅力的に見えてしまうのだろう。アメリカンコミックにはない、底の底のほうに何かが隠れているのかもしれないストーリーはやはり日本人にしか思いつくことができない物語のような気がする。
仮面ライダーは修羅の世界。カラフルな戦隊ヒーローは人の心の裏と表を浮き彫りにする太極の世界に見えなくもない。輪廻の世界を描いたストーリーもあったりする。

この本は宗教の本ではないので、それを知ることによって人はどう生きるべきかということは書かれてはいない。少しだけわかるのは自分が悲観主義者だと思うのは自分がペシミストなのではなく、この国自体がそうなっているのだからもう少し気楽に物事を考えればいいのではないかということだ。
どうすればいいのかはやっぱりわからないままなのではあるのだが・・・。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする