「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)5月1日(日曜日)
通巻第7317号
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<<読書特集>>より
リベラルとは『共産主義の変異株』だ
われわれは左翼の妄想と策動から国を守る必要がある
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落合道夫『誰も書かなかったリベラルの正体』(ハート出版)
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米国のインテリ、とくに共和党関係者とはなしていると、リベラルとは馬鹿という意味で使われていることに気がついたのはレーガン保守革命の絶頂期、40年以上前である。「リベラル・ピンキー・フール」というフレーズも仲間内では使われていた。
その後、リベラル派の活動家たちもさすがに、そのことを認識し、最近は「リベラル」に替えて自らを「プログレッシブ」というようになった。この発展版がLGBT、BLMに変異して疫病のように世界に広がった。リベラルの変形ウィルスだ。
「平和」、「平等」、「友好」の綺麗事は、世界一の『オレオレ詐欺』だと著者は言う。ずばり、その通りだろう。
すなわち、リベラルとは『共産主義の変異株』である。
歴史のはじまりの段階で、リベラルに反対する保守の思想家がプラトンだった。
「プラトンが生きた時代のアテネは衰退期に入っており、紀元前404年、彼が二十四歳のときにはペロポネソス戦争で隣国スパルタに敗戦した。このためプラトンは政府の統治能力の重要性を痛感し、ソフィストの放埒な自由リベラル主義に対して、道徳的、知的に優れ、内部統一性のある強力な政府を望んだ。そしてそのために指導者の教育の重要性を強く主張したのである。そして理想国の支配者は生まれや財力ではなく能力によって選ばれるべきとし、精神も肉体も教育も他者に優れた人であることを要件とした」(35p)。
著者の落合氏はソ連の研究家でもある。本書ではギリシア時代からローマ、キリスト教の猛威とフランス革命というギロチンで殺し合う悲壮な悲劇を経て、レーニンが共産主義社会をスローガンにユートピアを独裁の看板としてつかった。
人を殺すことにためらいがないスターリンは未曾有の悪らつぶりを発揮して、独裁革命を、巧妙に人々をだまして実現した。そのやり方をパノラマのような展望で語りつつ、現代の病理へと繋げる。
項目ごとに簡潔に要領よくまとまっているので、本書は高校生でも読める内容となっている。
現代に比喩すれば、EU政治を操るのはリベラリズムである。そしてプーチンはリベラリストではなく民族主義的帝国主義者である。
評者(宮崎)から見れば、バイデン政権は偽善を絵に書いたようなリベラルである。だからリベラルが帝国主義をたたきつぶそうとしているのがウクライナ戦争の本質であるように思える。
つまりウクライナ戦争とは『巨悪』と『悪』の戦いであって、私たちは本質がどこにあるのかを常に見極める必要がある。
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《現代に比喩すれば、EU政治を操るのはリベラリズムである。そしてプーチンはリベラリストではなく民族主義的帝国主義者である。》
早い話、EU・アメリカこそが共産主義であり、プーチンは(ロシア全体、ではなく)民族主義者だ、と。
論理的に見れば、「社会の変革を目指す」というのは穏やかそうに見える「革命」。実際には「変革」ではなく「社会全体を変える(=革命)」ことを目指しているわけですから。
前段階としてある「社会の否定」が敢えてあいまいにされて「いつの間にか」という「手段」を専らとします。
対して、プーチンのやり方(というよりやらせ方)には「社会全体を否定する」という考え方が全く見られません。
ただ、敵を同じ人間として捉えない、「物」としてのみ対処するというやり方は、いかにも共産主義らしく見えるのですが、EU・アメリカもまた敵を物として対処しています。
そして敵を物として対処するやり方は奴隷制のあった国には昔からあった普通の考え方です。
言うまでもなく「巨悪」はEU・アメリカ等の「平和」、「平等」、「友好」を唱えるリベラル派。そして「悪」は帝国主義者です。