これはただの〜千原こはぎ
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大好きな歌人、千原こはぎさんの、最初の歌集。
せつない恋の歌、それも受け身で、揺れ動く心の機微を詠う。
実際、ご本人さんに会って、思い通りの方でますます歌がしみてくる。
ことばは平坦だが、リズムがあって、せつなさ溢れる歌には憧れる。
気になった歌を・・・・・・
外は雪 きみを素足で待つことを少し叱ってくれたっていい
すきすぎてきらいになるとかありますかそれはやっぱりすきなのですか
会わないでいれば会わずに過ぎてゆく日常にすらなりえぬひとは
食パンにマーマレードのジャムを塗る春を確信するためだけに
おしまいはいつも「じゃあね」と言うきみに「またね」と返す祈りのように
また今日もサンドイッチの具を落とすきみの油断を愛してしまう
しあわせな半分が過ぎてもう半分しあわせになろういつもの部屋で
カフェラテは冷めてしまってくちびるに固いカップをぼんやりあてる
どうですか長いデートを今終えて嫌いなわたしを見つけましたか
「あいたい」の代りに今日も「おやすみ」をちいさく夜に貼り付けておく
小雨降る寒い春です改札の外にあなたを見つけるまでは