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我、短歌を見る目ありますなと自画自賛。BOOKOFFで20冊ある中から、パラパラと立ち見して好みに合った二冊持ち帰ったうちの一冊。この本、昨年の第18回日本詩歌句随筆評論大賞の短歌部門の大賞に輝いた歌集でした。
各歌は、こんな日常の些細なことが歌に詠めるなんて、目からうろこみたいな歌が続く。気どることもなく、難しい言葉を使うのでもなく、淡々とその場の瞬間を切り取る。このスマホででの写真のような歌・・見習いたい歌ばかりです。
・ひんやりと部屋のかたすみホーローの白い小鍋でいちじくを煮て
・出発をしらせる合図駅員が秋の線路を指でなぞった
・ほしいもの紙にいろいろ書きだせばほしさがすこしうすまっていく
・居酒屋にかわってしまうくらいなら本屋で雑貨売るはやむなし
・ぷちぷちとジップロックに包まれていかなごくぎ煮封書でとどく
・さむくっておなかがすいてさみしくて羊かんたべたそれから泣いた
・まむかいの補助シートにおさな子がふたりならびてうすく口あく
・春野菜天ぷらそばを注文しやがてきにけり若竹うどん
・コンビニのおにぎりだけどみそ汁をつくれば人の感じがもどる
・休職の人の机のひきだしをあけてときどき消しごむ借りる
・土壁のゆるいカーブをのりこえてざくろが実る夏のおわりに
・サンプルのてんぷらなどを眺めつつお笑いライブの開場をまつ
・カルディのただのコーヒーのみながらいつかいかない国をおもった
・窓のそとつめたい雨がふっていて読み返したい本がある朝
・マヨネーズシャンプーしょうゆつぎつぎに足りなくなって四月はじまる
・動脈のように朱色のイヤホンのコードが耳と音とをつなぐ
・傘さしてもう一本を手に持って男は橋を渡りつつあり
・フジカラーの角を曲がればだしぬけに縦にあらわる浄智寺山門
・「飲み会ってなあに」ときいた七歳に「しごとだよ」と弟がいう
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