ブルガリア人はみんなとてもフレンドリーで、チョッと友達になると「ごはん食べに来い!遊びにおいで!」とうるさく(?)誘われます。私の友人の中で最もうるさく(!?)誘ってくれるのがターニャおばさん。会う度に「いつ泊まりに来てくれるの?」と何度も聞かれます。「いつ?」と具体的に聞かれると断りにくく、また、本気で招待したいんだと分かります。そういうわけで彼女の住むリューリン1丁目まで出かけました。
家は、旧社会主義全とした典型的なソフィアの「アパルタメント」(分譲なので家賃はゼロ)、大きな部屋とキッチン、バス+トイレ。ターニャはそこに一人ですんでいます。
「1ヶ月の年金69レバ(=約4800円!)だけで生活しているのよ」
ええ~っ!!? 寒い冬にそんなお金だけでどうやって生活しているの?家賃を払わなくてもいいといっても、暖房費なんかはどうしてるの?薪ストーブ(ペチカ)は高層アパートには設置できないのでその代わり「テッツ」という給湯システムを通してパルナ(パネルヒーター)を使うのが一般的。でも、この「テッツ」、ものすごく高くて、チョッと使っただけで1ヶ月100レバ(=7000円)吹っ飛んでしまうんです。それじゃ彼女の年金では生活できないじゃない。ところが、ターニャは
「うちはテッツを入れていないのよ。」
なんと、パルナに来るお湯だけでなく、(まあ、確かに高層住宅になると上下左右からの暖かさで、日当たりがよければうちのペルニックのアパートより暖かいのです。) 炊事やシャワー用のお湯も使っていません。お湯が出る蛇口を全部はずして使えなくしているのです。ええ~っ、どうするの?
「こうするのよ。」と出してきた秘密兵器!! コンセントから直接つないでバケツの中につっこむ電熱線!! よく道端で電線の巻かれた糸巻きのようなものが売っていたけど、こうやって使うんだ(感心)。これを使うとバケツいっぱいの水が5分で体を洗うのにちょうどよい温度になります。でも、ターニャから何度も「コンセントをつないでいる間はバケツの水に触っちゃダメよ、死ぬから。」と言われます。(そりゃそうだろう、何せ220ボルト直結だから)
そして、調理器具がまたすごい! 大きなフォルナ(オーブン)を使わなくてもバーニッツアを温めることの出来る一見お鍋のようなもの・・・なんだか宇宙船の窓のような、それとも潜水服の頭のような・・・ なんと、「40年」ものだそうです。(私より年寄り!)
こんな少ない年金でどうやってやりくりしてるんだろう、と不思議に思ってもう少し詳しく聞いて見ました。
「季節がよくなったら、田舎にあるもうひとつの家や(ブルガリア人の半数は2軒家を持っている!!)、近くの山まで行って、ビルコフ(ハーブ)やマリナ(木いちご)などを採ってきてたくさん保存するの。全部タダですもんね。」 ん~、すごすぎます。そのようにして採ってきたフルーツでつくったジュースをいただきました。鮮烈な香りとほどよい酸味。寒い冬でもとっても美味しかったです。ちなみにヨーグルトも手作り。市販のものとはぜんぜんちがう味わいです。
お金がなくてもこうしてゲストを招待するのが大好きなんだそうで、シュカフ(棚)にはたくさんの来客用タオル、シーツがきちんとアイロンをかけた状態で整理されていました。それ以外はたくさんため込んでいるものもなく、古いものを大切に使っているようで買い換える必要がないんだとか。すご~い! 拍手~!! (パチパチ) 体の調子が決していい人ではないのにこのもてなしの精神! 創意工夫! そして節約の精神と年金の少なさから来るストレスに負けないポジティブな見方!! たくさんのことを学んで彼女の家を後にしました。
その後も会う度に「ねえ、今度はいつ来れる??」と聞かれます。うれしいなあ~。本当に熱心に誘ってくれてうれしいけど、こんなに貧しい中でがんばっているのが分かっているので今度は私のほうが彼女に何かしてあげたいと思うのでした。