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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

森林・里山保全は戦いだ!(妻女山里山通信)

2009-09-18 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 すっかり秋めいてきて、妻女山にも再び観光客や歴史マニアが訪れるようになりました。まだ山は緑ですが、山桜は紅葉し始めました。妻女山展望台までは車で行けますが、途中の森を見てこの里山が非常に病んでいると気付く人が何人いるでしょうか。

 葛つるが樹木を覆い尽くしていても、アレチウリが斜面一面に繁茂し、木々の上まで這い上がっていても、「緑がきれいね。」ぐらいにしか思わないのではないでしょうか。自然に対するリテラシー、読解力がなければそうでしょう。C.W.ニコルさんは、それを「自然音痴」と言っていました。

 葛、山藤、三葉通草、野茨、荒地瓜、豚草、洋種山牛蒡は、放置しておくと大問題を引き起こす妻女山近辺の困った植物です。帰化植物はともかく、葛、山藤、三葉通草は、在来種なので問題ないのではと思われるでしょうが、これが大問題なのです。

 これらのつる植物は、里山が頻繁に利用されていた時には、薪などを束ねるときに利用されて伐採されました。籠を編んだり工芸品などにも利用されました。つまり適度に駆除されていたわけです。それが、全く利用されなくなり、手つかずになって温暖化の影響もあってか異常繁茂すると、とんでもないことになったのです。また、野茨(ノイバラ)は、森の周囲に繁茂すると、中に入ることができなくなってしまいます。

 この野茨は、刺があるため鋸では切れず鉈鎌という長い柄の付いた大きな鎌で刈るのですが、その衝撃はすさまじく柄を4本も折ったほど。そして手と腕も壊れてしまいました。カイロプラクティックに通いましたが、現在も手の痺れと痛みは消えていません。朝は指が招き猫の状態から曲がらない状態です。

 つる植物は、クヌギやコナラなど自然林や、落葉松や杉、檜などの植林樹にからみつき、樹木の葉を覆い枯死させてしまいます。山藤などは木々を絞め殺してしまいます。全国各地には葛山と化してしまった里山がたくさんあります。葛に覆われると森に風がまったく通らなくなります。猪や熊の隠れ家になるため、人家近くに平気で出没するようになります。

 というわけで、半年前から除伐を始めたわけですが、盛夏の葛や荒地瓜の繁殖力はすざまじいもので、切っても切ってもすぐに出てきます。なるべく除草剤などは使いたくないので、鎌で切るようにしていますが、これはもう戦いです。葛の場合は、太い根塊を掘り出してしまえばいいのですが、石混じりの山をいくつも掘り起こすのは無理というものです。なるべく深い位置で切断して土を厚く被せてしまえばいいのですが、それも大変です。荒地瓜は結実する前に駆除するのがコツですが、これも何度もやらないといけません。

 写真は、ほぼ除伐が終了した状態です。赤松と自然林、落葉松と自然林の森ですが、除伐の対象となる木は、山桜、山漆、白膠木(ヌルデ)、檀香梅(ダンコウバイ)、鹿子木楓(カラコギカエデ)、欅(ケヤキ)、木楢(コナラ)、櫟(クヌギ)、莢迷(ガマズミ)、榎、山栗、鶯神楽(ウグイスカグラ)、野茨(ノイバラ)などです。もちろん、それら全てを切るのではなく、選別して除伐するのです。他に数が少ないものでは、杏(原種に近いもの)、合歓の木、夏茱萸(ナツグミ)、柏、山椒、槐(エンジュ)、樫、針桐、空木(ウツギ)、山葡萄、山萩などがあります。

 戦う相手は、植物だけでなく蜂や虻、藪蚊、黒目纏(クロメマトイ)、毒蛇などもいます。実際は戦うわけではありませんが、無紋細足長蜂(ムモンホソアシナガバチ)には4回刺され、大雀蜂(オオスズメバチ)には3回追いかけられました。いずれも逃げ切りましたが…。蝮(マムシ)はいないのですが、希に赤楝蛇(ヤマカガシ)がいます。青大将は招魂社にいます。藪蚊には刺されまくりです。

 森林・里山保全は、壮絶な戦いなのです。

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。キノコ、粘菌、秋の花、昆虫、樹木、蝶などを更新しました。トレッキング・フォトルポにない写真も掲載してあります。

●妻女山駐車場の奥、斎場山・天城山・鞍骨城跡・倉科へのあんずの里ハイキングコースの林道入口に「杖」を置きました。返却不要です。ハイキングにお使いください。

●いたずらメール対策で、コメントを承認制にしています。チェックしているつもりですが、もれて未読のままになっていたり、誤って消去してしまったものがあるようです。お心当たりの方にはお詫び申し上げます。

★妻女山については、本当の妻女山について研究した私の特集ページ「妻女山の位置と名称について」をご覧ください。
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