妻女山の低木の根元に直径3ミリぐらいのオレンジ色から茶色の小さな粒がたくさんありました。そういえば、長男が小学三年生の時に神奈川県藤野町(現相模原市)の佐野峠から御霊へ下ったときに、クヌギかコナラの根元に同じものを見たことを思い出しました。なにかの糞か、菌類かと思って調べたのですが分からずじまいでそのままになっていました。まあ、単に忘れていたということなのですが…。
今回久しぶりに見つけて、あああの時のと思い出したわけです。あの時は、確か湿っていて一部がどろどろになっており、とても触る気にはならなかったのですが、今回は乾いていたので手にとって匂いを嗅いでつぶしてみました。それが三番目のカットですが、単なる木くずにしか見えません。匂いも特にありません。強いていえば木の匂いでしょうか。
これは何か昆虫の食べかすか糞だろうとあたりをつけて調べると、分かりました。ボクトウガの幼虫の糞でした。漢字では木蠹蛾と書きますが、「蠹」という難解な漢字は、訓読みで「きくいむし」といいます。まさにそのまんまなのですが、この虫は果樹園の害虫として農家からは嫌われ者なのです。しかし、実に興味深い生態を持っているのです。子供達が大好きなカブトムシと深~い関係があるのです。
カブトムシやクワガタ、オオムラサキやオオスズメバチ、カナブンなどは、クヌギやコナラなどの樹液をなめに集まります。よく「昆虫酒場」なんていわれる光景です。この樹液は、ボクトウガやコウモリガの幼虫が木に穿孔して傷をつけるため染み出てきたものが、天然の酵母と太陽の力で発酵して、ある種の高タンパクのお酒に変化したものです。
妻女山でも、昆虫酒場にいっぱいやりに来たオオスズメバチがカナブンを押しのけたり、クワガタとバトルを繰り広げたり、オオムラサキがみんなをまとめて押しのけてしまったりというような光景が夏から秋にかけて日毎繰り広げられています。その樹液の底にボクトウガの幼虫が隠れているのです。
ボクトウガの幼虫は、その樹液に集まった小さな昆虫を食べるのです。カブトムシやクワガタは、その恩恵にあずかっているわけです。この仲間の最大のオオボクトウは、なんと幼虫が10センチ。成虫は翅を開くと8センチで、蛾によく見られるように口器が退化して食物をとりません。
この紫紅色の幼虫は昆虫食の対象になっていてオーストラリアの先住民の好物とか。生でよし、焼いてよしだとか。昆虫食は食糧危機を救うといわれています。信州は日本の昆虫食のメッカですから、蜂の子、イナゴ、ザザムシについでボクトウガの幼虫レシピの開発もいいかもです。また、メキシコのテキーラの中には、リュウゼツラン(竜舌蘭)を食べるボクトウガの幼虫(グサーノ)が一匹入っているものがあります。なんていうか、大変お酒と縁の深い虫なのでした。
しかし、この幼虫もネオニコチノイド系農薬の空中散布や果樹の農薬散布、水田のカメムシ殺虫に使われると、中枢神経をやられて死んでしまいます。すると、樹液が出る場所が減り、カブトムシやスズメバチ、オオムラサキを始め、樹液酒場に集まる虫たちが減ります。もちろん彼らもネオニコチノイド系農薬で死にます。特に松枯れ病などの空中散布は、里山全体を死の山にしてしまいます。人間も昆虫と同じく中枢神経をやられるので、例外ではありません。
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