モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

うけらが花の 色に出なゆめ(妻女山里山通信)

2009-09-23 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 ふたつ前の記事でも書いたオケラの花ですが、非常に珍しい桃色のオケラを見つけました。花は直径1センチぐらいとオケラの中でも小さめ。初めは色も違うのでオケラとは思いませんでしたが、魚の骨を並べたような苞葉があることでオケラと分かりました。普通は白で、色が入っても白に青い部分や桃色の部分がある程度の非常に地味な花なんですが、このように全体が桃色のものは、本当に珍しく希少価値が高いと思います。

 前記したように古語ではウケラ。転訛してオケラになったもので、昆虫の螻蛄(オケラ)とは無関係です。目立たない地味な花ですが、万葉の昔から愛され、忍ぶ恋や秘めた愛の比喩として詠われてきました。
「恋しけば 袖も振らむを 武蔵野の うけらが花の 色に出なゆめ」と万葉集に詠われていますが、それほどに武蔵野でもありふれた花だったのでしょうか。おそらく今では植物園へ行かないと見られないと思います。妻女山山塊でも群生地はなく、咲く場所を知らないと見ることはできません。
「私が恋しいのなら袖も振りましょうが、武蔵野のオケラの花の色のように、 私への想いを決して顔色にださないでください。」というような意味ですが、そうするとこのオケラの花は白でしょう。

 二番目のアズマヤマアザミですが、アザミは種類が多く同定が困難な花のひとつです。アザミという花はなく、必ずなんとかアザミとつくのですが、このアズマヤマアザミは、信濃の里山の秋を彩る代表的なアザミです。大ぶりで鮮やかな赤紫が多いアザミの中で、細身で色も渋いこのアザミは私が最も好きなアザミです。

 そのアズマヤマアザミの周囲に群生しているのがシソ科のヤマハッカ。ハッカといいますが、同じシソ科のハッカ(薄荷)に似ているというだけで、ハッカの香りがあるわけではないのです。小さく地味な花ですが、こうやってアップにしてみるとなかなか愛らしい花です。

 この季節、妻女山に咲く野菊は、ユウガギクやノコンギクが主です。ノコンギクは、淡いラベンダーの色味を帯びていますが、当地のユウガギクは白です。柚子に似た香りがあるということで柚香菊と書きますが、微妙です。総苞がノコンギクよりも短いのが特徴。と書いて、改めてマクロ写真を見ると花に冠毛が見えず、葉にも微毛がありません。ということは、これはヨメナ(嫁菜)ですね。野菊の同定は難しい。

 ハナニガナは、ニガナの変種でニガナよりも派手で目立ちます。里山から高山までよく見られます。花苦菜と書くように苦いのですが、山菜や薬草としても使われる花です。

 最後のヤマトリカブトは、猛毒。若葉は同じキンポウゲ科の山菜のニリンソウとよく似ていて、しかも隣り合わせに群生していたりするので要注意の植物です。ヨモギやモミジガサの若葉とも似ています。とにかく最強の毒草で、根や葉はもちろん、花から花粉まで全草が猛毒です。ということで、山で見かけても決して触ってはいけません。こんな危険な花ですが、日本全国どこの山地にも見られる花なのです。舞楽のときにかぶる 鳳凰の頭をかたどった兜に似ているからでしょうか、紫の花と相まって、その高い毒性とは裏腹に高貴な雰囲気を周囲に漂わせています。

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。キノコ、粘菌、秋の花、昆虫、樹木、蝶などを更新しました。トレッキング・フォトルポにない写真も掲載してあります。
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