世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

星の王子さま

2009-01-02 09:43:33 | わたしの本棚
星の王子さま
サン=テグジュペリ、内藤濯訳、1962年、岩波書店

見ても、とても古い本ということがわかります。カバーの裏をみても、バーコードも税込だとか税抜きだとかいうことばも見つかりません。奥付を見ると、1980年第35刷発行とありました。およそ30年前に印刷された本ということになるわけですか。

要するに、20年はわたしの手元にある本というわけですね。

入院中の気持ちを慰めてくれるようなやさしい本が読みたくて、夫に頼んでもってきてもらったのですが、物語の最後のほうの、王子さまが去っていくところあたりから、主人公に感情移入しすぎて読めなくなってしまい、読むのをやめてしまいました。

でも、あとで少し興味をもって、一時帰宅の折に池澤夏樹の新訳本をもってきて読み比べたりもしてみましたけれど。今の気分としては、新訳本の本が少し気持ちにあっているように感じました。なぜかしら、見てもいないのに、映画「崖の上のポニョ」が思い浮かんだりもしました。感性的な何かに共通点があるのか。それとも似たような悲哀を、両者に私が感じているのか。

古い内藤訳の本には、あとがきに、これはある種の逃避の文学だという言葉があって、それが少し悲しかったのかもしれない。これは逃避ではなくて、何かをささえるために、この世にいなければならない、点灯夫のような存在みたいなものなんだ。この本が存在しないと、とても困ることがあるんだ。

多くの図書館の、それこそ星の数ほどの本の中に、この一冊があると考えるだけで、どこかに安心感があるような。いつでもよめる、たったいっさつの、短い本。

たいせつなことは、目に見えないんだよ。愛することはね、こうするんだよ。いっしょにあそんで、いっしょに時間をすごして、けんかしたり、なかなおりしたり、ずっとあいてのことをおもっていたり、いろいろなことをして、ともに時間を過ごすんだ。そういう、ほんとうにかんたんで、でもひつようなことをいってくれる本。誰かが誰かを深く愛しているから、この世界はすべて美しい。

でも人間は、そんなことはすべていま、みうしなっていて、おかねやめいせいやけんりょくばかりもとめている。

だれかとだれかがあいしあっている。それだけでこのせかいは、あふれるほどにうつくしい。おうじさまとばらのように、うつくしくおもいあっている。それだけでなにもかもがこうふくだ。

そういってくれる本は、必要なのです。この世界に一冊は、絶対に必要なのです。

ちょっと疲れました。今日はこの辺で。




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