世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

シグナルとシグナレス

2009-01-05 12:33:29 | わたしの本棚
シグナルとシグナレス
宮澤賢治絵童話集⑧ 天沢退二郎・萩原昌好・監修
絵・荒井良二・藤川秀之 1993年 くもん出版

小休止といったその口でこれですから。なんてことはない。実は今日でめでたく退院となりまして、病院から家に帰って一仕事して、なんとなくまたパソコンに向かって書いているだけです。

疲労は見えないクラゲみたいにひらひら私の足にひっついているんですが、何かやってないと落ち着かないもので。さてと、それにしても、今日の写真はひどいですね。せっかくの美しい本が台無しだ。

荒井良二の絵は、最近の絵本の絵はどちらかというと私はあまり好きではないのですが、これは10年以上も前のものらしく、とてもきれいに見えました。賢治となると、何か見えないものが宿るのでしょうか、なんだかやさしく、美しく読めました。

本線のシグナルと、軽便鉄道のシグナレスの甘くはかないロマンス。「ぼくはあなたがすきです。僕を愛して下さい」とまっすぐに言ってしまう魂の恋。賢治の童話にもこんなかわいらしいロマンスがあるとは知りませんでした。

純真にお互いに好きでも、結ばれるはずのない恋。周りの電柱たちは本線と軽便鉄道の各違いを理由に反対するばかり。シグナルはシグナレスへの思いに、胸がはつらつとして、ついおしゃべりになってしまう。シグナレスは、どうすればいいかわからない。

恋が生まれると、不思議な温かい霧のような渦が生まれる。

病室の憂さを晴らすためにずっと読んでいた本ですが、これが一番助けてくれたかなあ。冷たい青い純粋に澄んだ何かを頭の中にそそいでくれたような。

周り中の反対の中で、ただひとり倉庫の屋根だけが、あんまりかわいそうだ、まとめてやれよ、といってくれる。

恋は幸せだな。すきあうっていうのはほんとうにしあわせなことなのに。なんとかしてあげなよって、いってくれる人がひとりだけでもいたから、シグナルとシグナレスはひとときでも、永遠に近い思い出を手に入れることができる…。

ほかに、「北守将軍と三人兄弟の医者」「雁の童子」の2編も載っています。

よろしければ、賢治の、切なく空気の氷のように純真なロマンスなど、いかがですか。








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