世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

主婦業

2015-08-27 04:55:14 | ちこりの花束

 先日、「主婦業って何?」というテーマで議論するテレビ番組がありました。ちらっとしか観ませんでしたが、すました顔の若い男性が、「主婦業を育児労働として評価云々」なんて言ってるのを見て、「ケッ」と思い、すぐにチャンネルを変えてしまいました。
 何事も金銭に変換して評価するのが最近の流儀ですが、主婦という役割には金銭では評価しきれないものがあると思うのです。
 私自身の考えを言えば、主婦とは「生と死、そして魂と肉体の問題をひっくるめた、家庭という小宇宙の主宰者」だと思っています。少し大仰な表現ではありますがこれは私のお姑さんの毎日の働きぶりを見て、いつも思うことなのです。
 毎朝仏壇にご飯を祀って死者の世話をし、家族の健康と幸せを祈り、食事を作り、家を掃除し、洗濯して、生者の世話をし、雨が降れば窓を閉め、晴れたら傘を干し、時間があればお寺や神社にいき、深く高い心の平安の勉強をしに行く…。
 家庭の中に無条件の愛と安らぎを生み出す主婦という役割を、時にはつまずいたり迷ったりしながらも、このように一人の人間(女性)がちゃんとやろうと努力しているからこそ、たくさんの子供や大人達が立派にこの現世で生きて行けるのではないでしょうか。
 今「癒し」ということが大きな問題になっているのは、本来の「主婦」という役割の意味が失われているからではないかとも思うのです。男性社会の中では女性的役割というのは二次的な価値しか与えられてきませんでしたから、それならと、戦後女性はみな男性化してきました。男の方が偉いなら私だって男になるわ、と。そして家庭から、無条件で子供たちの幸せを祈る、「おかあちゃん」を奪っていったのです。
 主婦という仕事は人間の魂にかかわる重大な仕事です。そしてそれに必要なもっとも重大な才能は、家事能力よりもむしろ人を愛する能力です。愛は、数値化することのひどく難しい価値です。それを無理に数値化しようとするのは、海に網を投げて海を捕まえようとするのと同じでしょう。
 無条件の愛と生きることの幸福を表現できる、太陽のようなおかあさんが増えたら、きっと世の中は今の2倍くらいは明るくなるし、少子化問題も解決すると思うのですが……。




(2001年7月ちこり22号編集後記)








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