リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

メサイア

2008年06月12日 15時31分10秒 | ローカルネタ
ちょっと日が過ぎてしまいましたが、先週の土曜日と日曜日に桑名市民ホール小でヘンデルのメサイアのコンサートが開かれました。桑名在住のオペラ歌手Hさんが音楽監督、指揮をつとめたコンサートで、オケは愛知県立芸大出身の方を中心に、合唱は地元のコーラスグループでした。

古楽器奏者の耳からすると、楽器が全てモダン楽器ということもあるんでしょうが、演奏の仕方(特にレチタティーヴォ)にもう少し古い様式を踏まえることが必要だと思いましたし、ソリストもまるでオペラのように歌うメサイアではありました。でも、そういった専門的なことを全て吹っ飛ばしてもいいくらいのいいアンサンブルを聴かせてくれ、桑名でもしっかりしたクラシック音楽文化が広がりつつあると感じとても嬉しく思いました。

昨年の10月に新築オープンの市民ホール小は、400席あまりのホールで音楽演奏を意識した造りのホールです。ただクラシック音楽のホールとして見ると、今ひとつのホールです。デザインはいかにもクラシック音楽ホールって感じなんですが、天井や左右の壁上部、後方の壁は吸音するような造りで、音はデッドな方です。もう少し方向性を持った設計にしたらよかったのに、惜しいですね。ま、こういう公のホールによくあるパターンではあります。

以前愛知県のあるホールで少し演奏した際、またコンサートを企画してほしい旨をお願いしたら、「うちは、テレビに出ている人しか呼ばない」というようなことを言われたことがありました。バブルの頃、地方の美術館がゴッホのナントカという言う絵をン億円で購入!とかいうのと同じ発想ですね。でもこういう発想ではなかなかしっかりした文化は根付きません。

地元にゆかりのある芸術家を支援するという姿勢が、行政にも市民にも地元財界にも必要です。バーゼル市にホルバインやピカソのコレクションがありますが、これらは決して財力に証して買いそろえたものではありません。

桑名市にもいくつか地道にクラシック音楽の活動を続けている団体があり、市民にも支持されています。こういう活動には財政上の裏付けが必ず必要になりますが、行政や地元財界からもう少しバックアップがあるといいなと感じてます。

ともあれクラシック音楽不毛の地に見えていた我が桑名市にも明るい光がさしてきたことは事実です。私も、古楽の分野で多少なりとも貢献すべくがんばらんと。(笑)