リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バッハの無伴奏チェロ組曲第6番の編曲(6)

2015年04月09日 18時05分15秒 | 音楽系
もうひとつの忘れ去られた♯は、サラバンドの終わりから2小節目の冒頭のバス、「ソ」に付く♯です。この「ソ」も「ソ♯」にするとなかなかすてきです。このバスはヨハネ受難曲の最終曲のエンディングでも出てくる使い方です。もちろん時代的にも、そしてバッハ的にも充分ありです。

私のアレンジでは、以上の2カ所の♯を取り入れることにしました。ちなみに、一つ目のガヴォットの♯が付く部分は、アンナ・マグダレーナによる写本以外は全て「ミ・レ・ミ・休み」となっています。

それにもかかわらず、旧バッハ全集では、「ミ(ナチュラル)・休み・ミ(ナチュラル)・休み」になっています。(新バッハ全集ではどうなっているかは、楽譜をもっていないのでわかりません)

ナクソス・ライブラリーでチェリストの演奏を聴いていますと、ヴィーラント・クイケン以外は皆「ミ(ナチュラル)・休み・ミ(ナチュラル)・休み」です。クイケンは「ミ・レ・ミ・休み」で弾いているので、オリジナルソースにあたっていることは明白ですが、他のチェリストは皆、旧バッハ全集に右へ倣えです。なんということでしょうねぇ、これって。まさに間違いだらけのチェロ組曲ですね。

あと自分で見つけたところでは、アルマンドの後半4小節目3拍目のリズムです。ケルナーの写本では音価が32分音符分抜けています。他の3つの写本では共通していて、この拍の一番最後の音符は16分音符になっています。多分ケルナーが間違っているのだと思いますが、この部分の旧バッハ全集では、最初の音に付点をつけて残りは全て32分音符にしています。このパターンはどの写本にもないパターンで、何か適当にやった感じがします。新バッハ全集ではこの部分は訂正されています。