リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガット弦に張り替え(1)

2016年06月15日 15時45分35秒 | ローカルネタ
アメリカのガムート社からガット弦が届きましたので、ぼちぼちとガット弦に張り替えています。ガムート社には3コースから13コースまでの分です。1コースと2コースを頼んだウニヴェルザーレ社からはまだ届いていません。同社の方からは、先週の今頃、2,3日出かけるので弦をひねるのは帰ってからだ、という旨のメイルが届きました。出来たら連絡するとのことでしたが、まだ出来てないみたいですね。さすがイタリアン・・・。



13コースと12コースを取りあえず張り替えてみましたが、なかなかいいです。13コースを張るときに、まだ交換していない12コース(フロロカーボン=鮪用の釣り糸)と音を比べてみましたが、少し音は柔らかい感じで、余計な倍音が入らないのと、ゲージが精確な点はガット(ピストイ)が優れています。フロロカーボンのバス弦はピストイガットと音の感じは近似していますので、合成樹脂弦による代替弦としては一押しでしょう。


左4本(13,12コースがピストイガット。他はマグロ弦)

13コースを張るときに、直径が1.92ミリもあるので、棒振動して使い物にならないのではと危惧しましたが、実際に張ってみると全く問題はありませんでした。フロロカーボンだと直径が1.66ミリですが、ピストイはとてもしなやかなので問題がないのだと思います。これが、同じガット系の弦でも同社のギンプ弦だとずっと固いのでうまく行きません。(ギンプ弦に関しては後日少し書きます)直径1.92ミリのピストイガットは私の楽器だと張力が大体2.5キロです。3.0キロ近くあった方がいいかも知れませんが、私の楽器にはこのくらいがベストです。2.0キロに近づくとちょっと低すぎて音がならないでしょう。

13コースをブリッジとペグに通すには、穴を少し広げる必要がありましたので、2ミリのドリルで穴を広げました。写真のような、長さ15cm直径2ミリのロングドリルを模型用のチャックにはさんで手で回します。ご自分でガット弦用に穴を太くしようとされる方は、間違っても電動ドリルを使わないようにしましょう。もちろん錐もだめですよ。錐はテーパーがついています(円柱形になっている)から。ちなみにこのロングドリルやチャックは特殊な工具ではなくその辺のDIYの店で売っているものです。



バス弦としてのピストイとカーボンの特徴をまとめてみました。

カーボン
1本あたりのお値段が圧倒的に安い。ただし購入するときは25メートルとか30メートルという単位で買わなければならないので、ピストイほどではないが結果的には高くつく。協同購入するか持っている人にひと張り分だけ譲ってもらうと安い。
とても固いのでブリッジにしばりにくい。
湿度の影響はゼロ。温度変化にも比較的強い。
精度に問題がある。2,3本張って1本選ぶという感じ。

ピストイ
お値段がとても高い。数年は使えると思うのでそれを考えると多少は納得できるが、それにしても髙いです。
とてもしなやかなので、ブリッジにしばるときやペグに巻くときは扱い安い。
湿度の影響はあるが、温度変化には強い。
精度は抜群。もっともお高いものですから、よくなければ困ります。


両素材ともギターのような巻き弦よりはバロック音楽の楽器としてよりふさわしいと思います。でも初心者にとっては、音程を聞き取るのが両素材とも結構難しく調弦が大変なので、その点では巻き弦を使った方がいいと思います。初心者?と思われる方がガット弦を張った楽器で演奏しているビデオクリップYouTubeなんかにアップされていますが、ほとんど全ての人の調弦はきちんとできていません。