リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

桑名のクラシック音楽展望

2019年08月14日 19時54分22秒 | 音楽系
クラシック音楽のコンサートは大都市であっても入場者が減っているとよく一地方都市である桑名市ではどんな状況なのでしょうか。2018年に発行された、桑名市における各公共ホールのイベント案内を元に調べて見ました。

桑名市でクラシック音楽のコンサートが開催できる会場は次の通りです。

(1)NTNシティーホール大
(2)同 小
(3)コミュニティ・プラザ
(4)六華苑
(5)時のホール(メディアライヴ1F多目的ホール)

(1)のNTNシティーホール大は1967年にオープンしたホールで、元は桑名市民ホールという名前でしたが、ネーミングライトを桑名発祥のNTNが買って命名したものです。City Hallというと市役所のことを言うと思うんですけど、まぁいいか。

プロのコンサートとアマチュアのコンサートとわけて数えてみますと:
(教室の発表会、自由参加形式のコンサートは除く、学校の部活のコンサートは含む)
クラシック音楽の大ざっぱな定義ですが、古楽、古典、ロマン派、近代、現代あたりと、これにポップスの要素が入った音楽(ジョン・ウィリアムスの映画音楽とか)なんかも入れておきましょう。

プロの部
(1)吹奏楽1回
(2)オペラ1回、ギターとヴァイオリン1回、ピアノ1回、リコーダー1回、マリンバ1回
(3)ピアノトリオ1回
(4)声楽1回、古楽1回、ギター1回、ギターデュオ1回
(5)古楽4回

アマの部
(1)吹奏楽4回※、コーラス2回
(2)吹奏楽1回、コーラス1回、ピアノとフルート1回、フルートオケ1回、声楽1回、ピアノ1回
(3)吹奏楽2回、ピアノ1回
(4)コーラス1回
(5)なし
※部活発表会という性格上、ポップスもかなりあります。

こんだけ~!って感じですねぇ。(笑)プロの部の(4)(5)の内7回は私がプロデュースしたコンサートです。この調査結果から読み取れるのは:

吹奏楽だけ特別に盛んだが、他のジャンルにへの広がりは見られず、全体としては全く低調と言えます。スイスのバーゼル市で開催されるクラシック音楽のコンサートは年間1000回に達すると言われていますが、ほぼ同じ人口の桑名市とは雲泥の差です。

自分のプロデュースしたコンサートのことをいうのもナンですが、結構コアな古楽曲が中心のプログラムであるにも関わらず、聴きたいとおっしゃる方がいらっしゃいます。もう少しジャンルの幅を広げればもっといらっしゃるのではないでしょうか。要はいかに市民のみなさんに周知させるかということと、企画の立て方次第だと思います。

三重県内では、多分一定の予算が組まれている津市とか財政的に余裕がある(ありそう?)な四日市ではそこそこオーケストラや室内楽の公演があります。これらのコンサートの運営状況はよくわかりません。入場者が少ないので、県議会や市議会で削減すべきだという意見が議員から出ているかも知れませんし、実は大人気であるのかも知れません。確実に言えそうなのは、どの市町村でも一定のクラシック系の音楽愛好者は確実にいるということです。

愛知県の扶桑町ではもう20年以上に、音楽専門の学芸員が企画した「ロビー・コンサート」が現在も継続中です。私も2,3回出演させていただきましたが、学芸員のHさんは、その道のプロでした。演奏家ときちんとコンタクトを取ることができましたし、運営の仕方にも精通していました。その後Hさんは転勤され、別の方が後を継いでいますが、そのノウハウはきちんと伝えられています。

お金を一杯出して、有名どころばかり呼んで、でも全然人が入らず何年かしたらお取り潰しというような例はよく聞きますが、扶桑町の例は参考になるのではないでしょうか。何もテレビに出たりマスコミに知られている人ばかりがクラシック音楽の担い手ではありません。誰がとは言えませんが、中には全然大したことがない人もいるみたいです。地道な草の根的な取り組みが必要だと思います。草の根的というと、行政はタダでアマチュアの演奏家を呼びがちですが、ちゃんとしかるべきギャラを払いプロを呼ばなくてはいけません。何事もタダではできません。お金を使う以上は目が利く人にまかせ自律的に育つようにしていくべきだと思います。