衛生学の講義で、消毒について1コマ教えています。
消毒について学ぶには、微生物学の知識が必要です。
どんな消毒液が効果があるのかというのは
対象によって変わるからです。
今回社会問題になっているコロナウイルスには
エタノールが効きます。
これはこのウイルスがエンベロープとよばれる
外側の層を持っているからです。
通常、何か物体があって、その外側を覆う物質があるとしたら
なんとなく「ないやつよりは強そう」と思われがちですが
ウイルスに関しては、このエンベロープを持つものの方が
持たないものより制御しやすいのです。
今回はエンベロープを持つウイルスだったので
エタノールが効きます。
ノロウイルスにはエタノールは効かないといわれますよね。
ノロウイルスはエンベロープを持ちません。
では何が効くかというと次亜塩素酸ナトリウム、
家庭では「キッチンハイター」などがその例ですが、それが効きます。
しかし次亜塩素酸ナトリウムには欠点があって
金属の腐食性があるということと
手指や粘膜に使用するには刺激が強すぎて不適切。
ですから吐しゃ物があるようなトイレなどを
消毒するにはいいですが、日常の手指消毒には向きません。
このように、消毒薬には向き不向きや効果のあるなしがあって
なんでもいいというわけにはいかないのです。
学生には細菌・ウイルス・真菌・寄生虫の特徴を教え、
それに合わせて消毒薬を選ぶということを知ってもらいます。
ウイルスは目に見えませんし、生き物でもありませんので
性状について理解するのはなかなか難しいです。
でもそれを知らずに対策はできません。
今日はフランスで「これはウイルスとの戦争だ」との発言があったそうですが
戦争に勝つには相手を知らなけばなりません。
食産業学群で学ぶ学生は食品や食資源について学ぶ中で
微生物についても学び、病気から身を守るにはどうしたらいいか
ということも学びます。
せっかく学んだ知識を社会のために役立ててほしいと思って
教えています。消毒について、ウイルスについて
講義で教えたことを覚えていて、正しい知識で正しく怖がり
適切な対処ができていたらいいなと思います。
これから入学してくる人にも教えます。
ぜひ動物衛生学を履修してください。