3月に被災時の食についてのセミナーを依頼されており、大阪でお話しします。それで、自身の体験を振り返るだけでなく、被災時の食について勉強しようとしているのですが、先週の土曜日に東北大で農芸化学会のシンポジウムが開かれ、そのテーマがまさに被災食・非常食であったので、参加してきました。その内容や、私自身のこれまでの考えもまとめておきたいと思ったので、このブログに数回に分けて書いていきたいと思います。
まず、大前提として、被災時の食を考えるにはシチュエーション別に分けて考える必要があるということを言っておきたいと思います。この間の東北大でのシンポでは、その辺は明確にされておらず、ちょっと残念に思いました。分けて考えるべきなのは、1)時期、2)被災の度合い、3)家族の構成、少なくともこのくらいは別々に論じるべきです。
というわけで、今日はまずは災害にあったその日、について書いてみたいと思います。
1)自宅が無事である場合
私の場合はこれに当てはまります。
震災が起こってから職場が混乱し、帰宅しようとしたときにはすでに暗くなっていました。阪神大震災を経験した私は、玄関わきのリュックに必要なものはすべて納めており、懐中電灯などはすぐに取り出せました。電気、ガスがとまっていましたが、なぜか水は出ました(ただしこの後すぐでなくなりました。高層住宅なので、タンクにあった水がなくなるまでは出たのでしょう)。私がこの日食べたのは、お湯を入れるだけ、というごはんです。
これは助かりました。
ただ、お湯を沸かすのにカセットコンロを使いましたが、私が用意していたものはアウトドア用の簡易なもので(軽いから外に逃げるときにはこの大きさでないと、もって行けなかったとは思いますが)、真っ暗な中でカセットをつないで、火をつけるのにかなり勇気がいりました。(今は、カセットをつないだ状態でそのまま台所においてます。)
かんぱんとかクラッカーとか、乾いたものは喉を通りにくいです。
それに、「ごはん」が食べられる、ということは精神的に元気が出ます。ですから、備蓄に絶対に加えてもらいたい食品のひとつです。
この日はこのサタケのシリーズの中の五目御飯、を食べた記憶があります。そしてこの日、うちは私一人でした。こども達が帰ってこれなかったからです。ですから、最初の日はこの一食で済みました。
わたしの周りでも、最初の日は、カップラーメンなどお湯を入れるだけ、という形で食べられるものや、パンなどを食べた人が多かったようです。水が出ませんから、食器を使うことには躊躇がありました。
2)避難した場合
今回の震災では、避難所では備蓄の食品がまったく足りませんでした。自宅から持ち出せた人は少なかったと思いますが、リュックなどにまとめておけば、それをもって出ることも、できたかも、しれません。わたしは津波のことはまったく想像もしておらず、建物がくずれて避難、と考えてましたから、リュックをもって出るつもりにしていましたが、今回の場合、沿岸部で逃げることができた人たちが、なにか持って行くということは難しかったでしょう。避難所となる場所で、がっちり備蓄しておかなくてはならない、と思います。この場合、最初の日は長期保存できるパン、かんぱんなどにならざるを得ないと思いますが、自治体や学校が責任をもって用意しておかなくてはならないでしょう。非常食というのは使わなければ無駄になるものです。だから購入する際につい「コスト」を考えてしまいがちです。でも、無駄になってもかまわない、というスタンスで考えない限り、十分な備蓄はできません。
そして、この被災当日、わたしたちみんなが考えたことは、「この状態はいつまで続くだろうか?」ということでした。もし3日でライフラインが回復するなら、今もっている非常食をどんどん食べてもよい。でも、もしそうじゃなかったら?
この日、私たちは誰もこの答えをもちえませんでした。
だからコンビニに長蛇の列ができました。
普通の家庭であれば、きっと数日生き延びるくらいの食品はあるんですが、もしかしたら?と誰もが思ったと思います。
備蓄を考えるとき、3日生き延びるには、と考えて用意しろ、というのが阪神の教訓でした。でも今回は、残念ながらそれには当てはまりませんでした。地区によっては、もっともっと備蓄が必要でした。ライフライン。19年前、大阪はほとんど被害を受けず、大阪に住んでいた私は神戸に自転車で入ることができました。多くの人が食品や水を運びました。でも、今回は、寸断された地域の距離は、自転車や徒歩で運べる距離ではありませんでした。
これから被災食を考える人は、自分がどこに住んでいるのか。ライフラインがとだえたとき、どれだけの食を用意しておくべきか。マニュアル通りではなく、自分の生活を考えて用意すべきです。
3)家族構成
その日、わたしは一人でしたからなんとでもなりましたが、もし乳幼児がいたら。高齢者がいたら。食事制限のある病人がいたら。ペットを飼っていたら。それは全然違う話になります。言うまでもなく、それぞれに必要な食を用意しておく必要があります。
続きはまたあした。