私は資格試験を受けなきゃならない学部に進学したので、6年間ものすごく勉強しました。よく「大学の講義で聞いたことなんか、卒業したらほとんど役に立たない」などといいますが、私が学んだ分野に関しては全くあてはまりません。大学で学んだ知識は教科書でいうと30冊以上らしくて、その全てが試験範囲だったので、ものすごい量を覚えた記憶があります。それでも、やっとスタート地点に立てただけで、知識量としては全く足りず、卒業後も今日までずうっと勉強し通しの30年でした。しかしスタート地点に立てたことは間違いなくて、あの6年間に勉強したことは自分のベース、骨肉、軸になっています。
しかし、勉強したこと以上に自分の糧になったのは、一緒に学んだ同級生、先輩後輩の存在です。あの頃あんまり意識してなかったですが、四六時中一緒にいて、日々議論し、助けられたり助けたり、時には喧嘩もしながら、とにかくものすごく密な関係で毎日を過ごしたのでした。その先輩後輩同級生に、卒業してから本当に助けられています。同じ業界に進んだとはいえ、臨床もいるし研究職もいるし、相手にする動物もさまざま。ヒトの公衆衛生に進んだ人もいますしね。だからこそお互いが力になるのかなと思います。私が直接アクセスできない人に、紹介してくれたり。試料を送ってくれたり。研究のディスカッションが深まったり。新しい視点が与えられたり。そしてメールにしても電話にしても、一瞬で学生時代の密な関係に戻れる。何年も会ってなくても、関係性が変わらないですね。これはやっぱり学生時代のあのめちゃくちゃウェットな関係があったればこそだと思います。
だからね、今ちょっと本当に残念なんです。
学生が講義で学ぶ以外の目に見えないつながりを作る機会が奪われているのが。1-2年不自由するだけじゃない。これから何十年も生かされたはずの関係性が失われるとしたらその損失はものすごく大きいんじゃないかと思います。もしそれが杞憂で、学生たちは私の知らないところでしっかりつながりがもてているのならいいのですが。
だいたい、大学なんて講義を聞くだけならこれだけオンラインで海外のいい講義が聞ける時代にわざわざローカルな大学に通う意義ってどこにあるかというと、人とのつながり・地域とのつながりだと思うんですよね。それが失われたら、もはや地方の大学の存在意義ってどうなるんだと本当に心配になります。
つながりを深くするには、時には面倒なことや嫌なこともあるけど、今は平時よりもっと強く意識してつながっていかなくてはいけないのではないか、と思います。