この間新聞を読んでいたら、ある大学生が高校時代に文系を選び、現在も文系の学部に所属しているけれど、今頃になって理系の学問に興味がわいてきた。だけど大学のシステムのせいで聴講もできないし、転学部も難しい。高校の時に文理の選択をするのは早すぎないか、というような内容が載っていて(記憶のまま書いてますので多少間違ってる部分もあるかもれません)、なるほどなあと思いました。
わたしは、「高校の選択としては理系も文系も、はっきり言ってどっちでもいい。大学に入って新たな興味が出てきたら、大学のコースに関わらず自分でどんどん勉強したらいい。学部で学ぶことは「専門」の科目と思っている人が多いかもしれないけど、学部4年間で覚えた「知識」はすぐ古くなるし、すぐ役に立たなくなる。むしろ学部では学問体系というものを知り、学術的な勉強をする「方法」を身に着けるのだと考えてほしい。その方法さえ修得していれば、関わったことのない分野でもどうやって勉強をしていったらいいのかがわかるので、取り組めるようになる。」と考えています。大学を卒業して社会人になったら勉強終わり、じゃありません。我々は一生学んでいけるのです。
しかし、その前提として非常に重要な基礎的知識を、高校卒業までに身に着けるということが、ちょっとおろそかになっていると思います。かなり極端かもしれませんが、わたしは、高校では理系科目が苦手だなという人が理系で学び、文系科目が苦手な人が文系で学んでもいいくらいではないかと考えるくらいです。わたし自身は理系にいるわけですが、高校までの自然科学の知識がきちんと頭に入ってるかどうか、というのはむしろ文系の人にこそ重要、まれには生死を分けるくらいのことにもなるのではないかと思っています。
昔、共通一次という評判の悪い入試がありましたが、あの制度で非常によかったことは、文系だろうが理系だろうがどっちの科目もきちんと2つずつそろえないといけなかったこと。受験生には負担でした。一つの分野に抜きんでていた人にはうまく選抜機能が働かなかったかもしれません、でも、やはりある一定ラインはすべての高校生が修得すべきではないのかと思います。
そこができていれば、大学以降の学部がどこであれ、後で違う分野の勉強を始めるときの心理的なハードルがかなり下がると思います。社会人になって、大学までの知識で十分というシチュエーションで生きていける人はまれでしょう。新しい知識やスキルがどんどん必要になります。そのためのベースになるのは、高校までの学修だろうと私は思います。高校で極端な文理を隔てるカリキュラムの中で勉強し、文系の生徒が生物も化学もほとんどやらないで大学に来れば、さすがにいきなり「遺伝子やりたいな」と思ってもできないでしょう。だけど、一応一般的な高校では基礎レベルの理科はどの生徒もやることになっています。高校で習うことは昔よりずっとずっと多くなっていて、子供達には負担でしょう。だけど教科書レベルは絶対に身に着けてほしい。そしたら後の人生に応用がききます。
新聞記事に出ていた大学生は、これからは自分で好きなことを勉強していってほしいです。そのために足りない基礎知識は、本を読むことで得られます。もしも高校で理科の科目を十分学んでいなかったな、と感じるのならば、最初に手に取るのは高校の教科書がいいでしょう。そのあとは、どんな学問にも初学者用の教科書的な本がありますので、それを通してよむ。わかるところをつまみ食いではなくて、全部読んでください。その学問の概要をつかむことが大事です。その先は、その本にもっと詳しいことはここに載っていますよという情報があるはずですから、それを引いていくといいです。わからなくて進めない時は、わかる人を探して聞くといいでしょう。母校の先生方はきっと別の分野の人でも教えてくれるでしょうし、もっと身近にもきっといろんな分野の人がいて、教えてくれると思います。勉強しようという意志と、勉強の方法がわかっていれば、卒後もきっと新しいことを身に着けられるでしょう。