院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

漬け物の名人

2012-11-10 06:32:13 | コンピュータ
 私の曾祖母が作る漬け物(糠漬け)は、近所で一番おいしいと評判だったらしい。漬け物の名人といわれていた。(むろん私が生まれたころには曾祖母は他界していた。)

 曾祖母はその日の気温や湿度に合わせて、漬け物を糠みそから取り出すタイミングが分ったらしい。それはほとんど分単位だったという。長年の勘がそれを可能たらしめたのだろう。

 発酵食品にはすべて同じことが言える。現在の酒蔵は、小規模なところはまだ杜氏の勘にたよっているけれども、大手酒造メーカーだとコンピュータ制御である。さまざまな実験を重ねて、最適な温度、最適な時間が分っているから、おいしい酒がコンピュータで造れるようになった。勘にたよる必要がない。

 20年ほど前、知人が蕎麦屋のチェーン店を作った。各店舗には蕎麦の職人は一人もいなかった。そのかわりに、蕎麦の量、茹で時間と温度、ダシの調合比率、汁の温度などすべてがマニュアル化されていて、アルバイト従業員でもおいしい蕎麦を出すことができた。

 この蕎麦屋チェーンは一時大もうけしたけれども、やがて斜陽になった。マニュアルではなくて、釜や鍋の温度や時間をコンピュータ制御することが可能となり、もっと少ない人数で一軒の蕎麦屋が経営できるようになって、駆逐されたのだ。

 マニュアル化できる作業は、すべてコンピュータで代替可能である。

 コンピュータの発達によって、ホワイトカラーはその仕事の多くを失った。帳簿付けなぞは、もはやコンピュータの仕事となった。

 現在の失業率の高さは、いろんな仕事をコンピュータがやってしまうところから出てきたのではなかろうか?商売や経済に疎い私としては、そうとしか考えられない。まだ他の要因があるのだろうか?