院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

日本人のマスク

2012-11-21 06:57:10 | ファッション
 私は風邪をひいていても診察中にマスクをしない。精神科の問診はサービス業だと考えているからだ。受付嬢やウエイターがマスクを着けないのと同じ理屈である。

 この10年間で日本人は随分マスクをするようになった。金額ベースで3倍である。

 マスクの流行は昔からだったが、10年前からの流行は大病院から始まった。まず、医療者がマスクを着けるようになり、次いで感染予防の名目で来院患者にマスクを強要した。大病院はマスクの自動販売機を据え付けた。

 (マスクが本当に感染予防になるかは、だいぶ昔にこの欄で取り扱ったので、今回は省略する。)

 大病院での医療者のマスクの使用法を見ると、(私の勤務医時代は)後輩の若い医師や看護師にとってマスクはまずもってファッションだった。医療者がマスクを着けているとカッコイイから着けていた。

 (聴診器を肩に乗せるのも10年前からの流行だ。私が若いころはポケットに入れていた。)

 もう一つのマスクの使用法は「童顔隠し」である。研修医にとっては相手から若造と見られることがとてもつらい。だから、いくらか経験を積んでも童顔の際立った医者は、依然としてマスクを多用していた。要するに今回の流行は感染予防からではなく、おシャレから出発したのである。

 こうして、わが国は街中がマスクだらけになった。なんとなく皆が顔を隠している。その光景が私には異様に映るのだが、アメリカ人は違う感想をもつ。いや、むしろ感動する。あるアメリカ人いわく「日本人は清潔で感心する。誰もが手術室に入るような恰好をしている」だと。

 マスクなぞ取るに足りないことだけれど、右に倣えみたいなのは私には苦になる。もっとも、私がマスクを着けないことに拘るのも、本質的にはマスクを好むのと等価かもしれないが。