院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

轢かれたほうが損害賠償する?

2013-10-10 06:52:50 | マスコミ
 先日、認知症の老人が徘徊していて列車にはねられ死亡した。気の毒なことである。

 その件に関する裁判が行われて、裁判所は「監督不行き届き」として遺族に750万円の損害賠償を鉄道会社に支払うように命じた。この判決に「えーっ?」と思われたかたが多いのではないか。私も思った。判決の理由は、ダイヤが乱れて鉄道会社が損害を受けたというものである。

 老人は一瞬のスキに外出したという。轢死したのに損害賠償を要求されるとは、もう認知症老人は室内に閉じ込めておくしかないではないか。そのためには、家族の誰かが家に24時間張り付かねばならない。

 むかしのことを思い出した。若いころ勤めていた病院の患者さんが鉄道自殺をした。そのときの鉄道会社の対応はどうだったか?「当方も損害を受けたが、不幸な出来事なので、この件は不問にしましょう」ということで片付いた。鉄道会社にとって人身事故は珍しいことではなく、一定の対応マニュアルがあるのだろう。

 いまの鉄道会社はむかしほど鷹揚ではないのかもしれない。だが、私は次のことを想像した。これはあくまでも私の妄想のようなものであり、まったくの見当違いである可能性が高いことをお断りしておく。

 まず死亡した認知症老人の遺族のほうが先に、鉄道会社に損害賠償を要求したのではないか?はじめは穏便に済ませようと思っていた鉄道会社は、怒って逆告訴した。その結果、鉄道会社が勝って、裁判所は遺族に損害賠償を命じたのではないか?

 そうした事情でもなければ、「遺族は750万円を支払え」という判決は不当と言うべきであり、世論は黙ってはいないだろう。

 道路での車による交通事故の際は、子どもがいくら急に飛び出したからと言っても、轢いた方の責任になる。そうした秩序を前提として、道路交通体系も賠償システムも作られている。轢かれたほうの責任が問われるとは、従来の道路交通秩序からは考えにくいことである。鉄道の場合は別なのだろうか?

 マスコミはいつも本質を言わないから、私のように邪推する者が出てくるのだ。

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