院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

医師国家試験の不明朗な部分

2014-10-05 00:02:38 | 医療
 医師国家試験の合格最低点はあらかじめ発表されません。(合格発表後に提示されます。)医師国家試験は資格試験ですから、合格最低点は採点側が(常識の範囲内で)自由に決めることができます。

 30年ほど前だったでしょうか、例年に比べて国家試験の合格率が低かった年がありました。当時は、模範解答も合格最低点も秘密にされていました。マスコミが厚労省の担当者に「なぜ低かったのか?」と尋ねたところ、担当者は「今年の受験生のレベルが低かったのでしょう」と答えました。

 模範回答も合格最低点もブラインドにしておいて「レベルが低かった」もなにもないでしょう?その年だけ、合格最低点に厚労省が例年と違う操作を加えたということも、「レベルが低かった」という主張と同等の重みで主張できるのです。

 私たちの時代にはなかった「地雷問題」(禁忌肢)というのが今はあります。その設問を間違えると、ほかがいくらできていても不合格になるという設問です。この「地雷問題」がどれだったのかは発表されません。ですから、自己採点で十分に合格点なのに落ちた学生は、自分のどこが悪かったのかが分かりません。そのため、落とされた受験生は浪人中になにを重点的に勉強すればよいのかさえ分からず、悶々とした一年を過ごすことになります。

 合格最低点があいまいにしか示されないので、試験をする側(厚労省)はある程度、恣意的に合格者数を増減させることが可能です。(たとえば日本の医師数が足りないと厚労省が思えば、ちょっとずつ合格ラインを下げていくこともできます。その逆もです。)

 今回、医師国家試験について述べたのは、きのう述べた専門医制度と関係があります。各学会が自分たちが納得がいくように作った制度と難易度なのに、厚労省が噛んでくると厚労省によって専門医数の調節が行われかねないということです。

 すなわち、例えばいま外科系に入る医師が足りず内科系が多いので、外科系の専門医試験を通りやすくして、内科系を通りにくくするなどの人為的な操作が加えられる恐れがあるということです。

 専門医の科目分布は人為的な操作によってではなく、医者個々人の自由な志向性と自然な経済原理に任せるべきだと私は考えています。

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